米中貿易戦争、日本の漁夫の利が鮮明に

2018/09/06

【ストラテジーブレティン(207号)】

(1) 米中離反と日中雪解けのコントラスト

与野党、メディア、アカデミズム一丸となった米国の対中批判
米中覇権戦争の様相が鮮明になった。賽は投げられ、不可逆の動きが始まったとみるべきであろう。米国では与野党・メディア・アカデミズム一丸となった中国拒否感の高まりがみられる。
中国の対米輸出額500億ドルに対する課税、2000億ドルに対する追加課税などトランプ政権の対中制裁は矢継ぎ早だが、中国の譲歩で一旦休戦しても再度攻めてくる可能性は大きい。北朝鮮に対する制裁違反、イラン制裁違反など、トランプ氏がさらに中国へ圧力をかける口実はいくらでもある。対中貿易戦争の目的は、今や中国の不正の是正はもとより、地政学的要請、つまり中国の覇権的台頭の阻止にある。そのためには中国の国際分業上の地位を押し下げることが必須であり、手段を選ばないだろう。

中国台頭阻止に妥協なし、日米半導体交渉で示された米国の問答無用
ひとたび安全保障上の危機感に火が付いた場合の米国の対応は、1980~1990年代の日米貿易摩擦が先例として参考になる。米国の産業基盤を脅かす日本を抑え込むために、米国はあらゆる手段を動員した。日本自動車の米国でのシェア急伸を抑えるために、VRA(対米自動車輸出自主規制)を設けた。米国は数量規制はしていないが、日本が自主的に輸出数量を年間168万台以内に抑えると言うもの、非を相手に擦り付け自らの汚名を回避する手法である。日米半導体摩擦は、より問答無用の強引なものであった。まず半導体ダンピングという容疑により、半導体とは無関係の3品目(パソコン、電動工具、TV)に報復関税をかけた。しかしそれにとどまらず、日米半導体協定(平成3年改訂)では外国製半導体について「日本市場のシェアを20%以上」とすることが明文化された。日本における米国半導体シェアをそれまでの2~3%から20%に引き上げるという横暴な半導体協定締結を日本に押し付けた。また対NECなど日本企業に対する知的所有権盗用訴訟等々により、日本の半導体メーカーの戦意喪失を狙い、それを実現させた。その結果、瀕死の米国半導体産業は蘇生し、急激な円高もあり、日本半導体メーカーは壊滅的衰弱へと陥れられた。中国に対する米国の危機感の高さが、当時の対日の比ではないとすれば、米国は熾烈な手段を繰り出し続けるだろう。
中国側としても圧倒的顧客である米国と決定的に対決することはできず、抑制的態度を維持しつつも、対米反感は高揚せざるを得ないだろう。

 

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