日米の中央銀行の政策会合経過後も方向感は見えず
先週の米国市場は、前半はISM製造業景況指数(3日)の悪化や雇用動態調査(4日)における求人件数の減少などを受けて米長期金利は4.2%台にまで低下しましたが、景気の先行きへの不安もあり、ダウ平均の上昇は限定的でした。他方で、AI需要の期待等からナスダック総合指数は最高値を更新しました。
週末(7日)発表の5月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比27.2万人と大幅に増加(市場予想は18~19万人増)、平均時給は前年同月比+4.1%(4月+3.9%)と伸び率が再加速しました。他方で失業率は4.0%(4月3.9%)に悪化するなどちぐはぐな内容でしたが、雇用統計を受けて、早期利下げ期待が後退し、米長期金利は再び4.4%台に上昇しました。
日本株は、前週初めに明らかとなった自動車5社の型式指定の不正問題や、米国景気への懸念や円高によって停滞が続いておりましたが、米雇用統計を受けて米国景気への不安が薄らいだことや円安進行により週明けの10日は反発、日経平均株価は3万9000円台を(5月23日以来)奪還しました。
今週は、5月の米消費者物価指数(12日)、米FOMC(11-12日)、日銀金融政策決定会合(13-14日)が注目されています。特にFOMCにおいては3カ月毎の政策金利見通しが発表されます。前回(3月)において、24年末の予想は4.6%と示され、0.25%幅で3回の利下げが想定されていました。市場では利下げ回数は2回に修正されるとの見方が中心になっているようです。仮に2回になったとしても織り込みが進んでいると考えられることから大きなネガティブサプライズとはならないと考えます。
日銀会合に関しては、追加利上げの可能性は低いものの、国債買入れの減額が決定されると市場は見込んでおり、こちらもサプライズはないものと考えます。
日米ともに景況感が斑模様にあり、中央銀行も政策の方向を示せない状況が続いています。株式市場も方向感の見えない展開がまだ続きそうです。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。