米経済減速は、グロース株復活の兆候か?

2024/06/04

 

5月31日発表の4月の米個人消費支出(PCE)物価指数は、前月比+0.3%と市場予想と一致した水準でした。市場予想の範囲であったことから米国株市場はポジティブに受け止めましたが、前月比+0.3%という水準は決して低くはなく、インフレが鎮静化していると言える水準にはありません。食品やエネルギーを除くコア指数では前年同月比+2.8%という水準がこの3カ月続いており、下がっていません。
一方で、6月3日発表の米ISM製造業景況感指数(5月)は、前月の49.2から48.7と減少しました(市場予想は49.6)。インフレ鎮静化が緩慢である中で、経済減速の兆候が強まっているようです。今週は、5日:ADP雇用リポート、ISM非製造業景況指数、6日米雇用統計(いずれも5月分)と主要指標の発表が続きますが、景気減速を示すデータが増えれば米国株式市場はネガティブに揺れる可能性もあるでしょう。

FRBは、「金利水準を据え置くのが望ましい」との見解が、現状は主流です。しかし、足元で経済減速を示すデータが増えていることによって、6月11-12日のFOMCでは政策金利見通しも含めてどのような見解が示されるかに市場の注目が集まりそうです。

国内(日本)経済は5月31日発表の4月の鉱工業生産において事前の市場予想(前月比+1.5%)に対して▲0.1%と大きく期待を裏切る水準でした。輸出数量のマイナスが続いていることや国内の自動車販売も昨年の勢いからは減速しており、全般的に景気の弱さを反映しているように見えます。

米国経済の減速は日本経済にも日本株市場にとってもマイナス要素です。しかし、米国金利低下が促されることで円安圧力は弱まることが期待されます。また、国内景気も弱含むことで金利上昇も抑制に向かうと考えられます。輸出関連など主力株にとっては厳しいものの、業績好調な成長株にはプラスに働く可能性も考えらえます。年初から続いてきた大型輸出関連が強く、小型成長株が弱い相場環境に転換が生じることも考えられそうです。

 


 

 

この記事を書いている人

藤根 靖昊(ふじね やすあき)

  • 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
  • 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
  • 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。
アイフィス・インベストメント・マネジメント株式会社
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