新年度の企業業績見通しは、事前コンセンサスを大きく下回るか?
先週、注目された米経済指標では経済減速を示す内容が続きました。
30日発表のコンファレンスボード消費者信頼感指数(4月)は97.0と下方修正された3月(103.1)及び市場予想(104.0)を下回りました。1日発表のISM製造業景況指数(4月)は49.2と前月から▲1.1pt低下、3日発表のISM非製造業景況指数(4月)は49.4と前月比▲2.0pt低下しました。製造業も非製造業も節目となる50を下回っています。
3日発表の4月の米雇用統計においては、非農業部門雇用者数が前月比17.5万人増と市場予想(24万人増)を大きく下回ったことに加えて、失業率も3.9%に上昇しました(3月並びに市場予想は3.8%)。このように米国経済の減速感を示す統計が相次いだことや、4/30-5/1の米FOMC後のパウエル議長がハト派的な発言を行ったことから米長期金利(10年国債利回り)は4.6%台から4.4%台へと低下しました。また、それを受けて米国株は上昇傾向にあります。
4月29日には為替は一時160円/ドルの円安に振れましたが、日本政府の介入と見られる動き(29日および2日)によって、153円まで押し戻されました(ただし、足元では155円を伺う動きにある)。日本株は、米国株(特にハイテク株)市場の動きに反応して日経平均株価39,000円台を伺う水準にまで値を戻しています。
ゴールデンウィーク明けの日本株市場は主に、1)米国株市場、2)為替レート、3)国内企業業績、というファクターの中で大きく揺らぎそうに思われます。現状の米国株市場は、ハイテク企業群は業績堅調、経済減速は深刻化しない、インフレ率は緩やかに沈静化に向かう、FRBは年内に利下げを開始する、というやや楽観的なシナリオに立脚しているように見受けられ、脆弱に感じます。
さて、国内企業業績に関しては、まだ決算発表は4合目ではありますが新年度についての事前予想(コンセンサス)に対しては進捗があまり芳しくなさそうです。
日経平均株価のコンセンサス予想EPSの、4月5日時点(来期・再来期)と5月2日時点(新年度:今期・来期)を比較してみます。4月5日時点の来期(新年度今期)は1958.44円⇒5月2日時点1783.57円。再来期(4/5時点)2183.88円⇒来期(5/2時点)2039.12円。まだ何とも言えませんが新年度の業績見通しは事前予想を大きく下回る可能性もありそうです。そのため、株価調整は終わったと考えるにはまだ早い、と思われます。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。