米国インフレ率低下は硬直的、景気弱含みでスタグフレーションの懸念も台頭(するかも?)
米ダウ平均は、12日に史上最高値を更新した後はやや停滞しているようです(19日は休場)。13日発表の1月の米消費者物価指数が前年同月比+3.1%と市場予想(+2.9%)を上回ったことで、FRBの早期利下げ期待が後ずれするかたちで後退しています。
また、15日発表の1月の米小売売上高が前月比▲0.8%と市場予想(▲0.1%)よりも大きく減少したことから、景気後退の可能性も懸念されているようです。インフレ低下に対する硬直感がみられる中で、景気が弱含むことを市場は警戒していると考えられます。
こうした状況では、21日発表のFOMC議事録要旨(1/30-31分)への注目は高くなりそうです。FRBが(利下げの可能性も模索せずに)引き締め的なスタンスを維持する可能性が高いと市場が判断すれば、長期金利の上昇と株価調整が生じるリスクがありそうです。
他方で、こうしたマクロ要因とは別に生成AIをはじめとしたIT関連企業や半導体関連は引き続き強含む可能性も残っています。21日発表のNVIDIAの決算内容によっては同社並びに関連銘柄の株価が再加速する可能性も考えられます。ただ、その場合でもいったん材料出尽くしとなる可能性にも留意したいと思います。S&P500採用企業の利益予想データは、“マグニフィセント7”を除く493銘柄では昨年9月末から減少しているとの指摘もあります。
日本株は、米国株が一服する中でも底堅い展開を続けています。海外投資家からの再評価(?)も高まる中で、日経平均株価の史上最高値更新が迫っていることに対する期待が市場参加者の高揚を生んでいるものと考えられます。モメンタムの騰勢を維持できるかどうかは米国株の動向が最大の要素と思われます。24/3期決算企業の増益率は13%と目されていますが、インフレと円安が寄与していることを鑑みれば、翌期以降の持続性にはやや疑問が残ります。
今週の米国関連指標では、前述のNVIDIA決算とFOMC議事録(いずれも21日)に加えて、S&Pグローバル米国製造業景気指数(22日)が注目されます。
国内は21日の貿易統計(1月)に注目しています。12月分では3カ月ぶりに輸出の数量指数が+3.1%とプラスに転じましたが、これを維持できるかどうか。また、緩やかに上昇しつつある原油価格の影響が輸入に現われていないかを見たいと考えます。
また来週発表の、27日:国内消費者物価指数(1月)、29日:米個人消費支出(PCE)物価指数(1月)には日米両国の金融政策当局の方向性を占う意味で注目が集まると思います。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。