バリュエーション面では既に割高!!
日経平均株価は、24日に一時33,817円まで上昇し、7月3日に記録したバブル後の最高値を更新しました。米国・欧州の株高を好感した動きであり、FRBの利上げ局面が終わったとの見方の広がりと、イスラエル/ハマスの人質交換のための停戦による心理面での好転によってもたらされたと思われます。
しかしながら、前回も述べましたが、TIWが算出している日経平均株価の妥当レンジ上限(24日現在で31,523円)を大きく上回り乖離が広がっています。
米国経済が底堅い中で、インフレ率は低下傾向にあり、懸念されたリセッションは厳しいものとはならず、他方でFRBが利下げに転じるとの見通しが強気派の根拠となっています(弱気派が強気に転じているケースも多いようです)。
また、日本株に関しては、中国への警戒感継続からこれまで中国に向かっていた投資が日本に振り向けられるとの見方や、24年から開始される新NISAによる株式への需要増、PBR1.0倍割れ企業の自社株買いや増配などによる株価向上策や構造改革を通じて日本企業の底上げが継続するとの見通しも支援材料となっていると考えます。
確かに金利低下局面では、PERの上昇を通じて株価が上昇する傾向が一般的です。しかし、米国の金利は下がるものの、日本は金融緩和からの正常化の過程にあり、長期金利には上昇圧力があります。
さらに、予想PER水準からすると24日時点の日経平均のコンセンサス予想PER(今期ベース)は既に19.5倍であり、バリュエーション面では既に割高な領域に入っていると考えられます。予想PERが20倍を超えていたのはユーロ危機が沈静化した2013年5月以降ではコロナ禍の20年5月から21年4月の間であり、それ以外の期間はPER18倍以下に納まっています。PER20倍以上のバリュエーションを正当化する根拠はあまり見いだせないように思われます。
さて、足元の米国市場はブラックフライデーのオンライン売上高が前年比+7.5%(アドビ・アナリティクス発表)と好調が伝えられていますが、セールで少しでも安く買おうとする購買行動とBNPL(バイ・バウ・ペイ・レイター)の利用拡大に支えられている感もあります。しかし、こうしたネガティブな面もFRBの利下げ時期の早まりとして好感されるのが現在の市場です。
今週は30日:米個人消費支出(PCE)物価指数(10月)、1日:米ISM製造業景況感指数(11月)の発表がありますが、公表される結果とそれに対する市場の反応を注視したいと思います。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。