ベアマーケットラリーに惑わされるな!

2023/11/07

 

31-1日の米FOMCは市場予想通りに政策金利は据え置かれました。パウエル議長は、必要に応じて今後再び利上げに動きうる、と釘を刺しましたが、このまま利上げが休止されるとの見方が市場では強まったようです。3日には米10年国債利回りは4.5%台にまで低下し、ダウ工業株平均は週間で1,643ドルの大幅上昇となりました。

先週の米株市場の大幅高は、1)FOMCの政策金利据え置き(および12月も利上げは見送られるという市場の見方の強化)、2)米財務省の23年11月~24年1月の国債発行計画(1日発表)において発行額の増加規模が市場予想を下回ったこと、3)労働関係の経済指標の軟化、4)ISM製造業・非製造業ともに悪化、などがあげられます。

労働関係では、週間の新規失業保険申請件数(2日発表)が市場予想を下回りました。米労働生産性指数(7-9月期・2日発表)において単位労働コストの伸びが3四半期ぶりの低下となりました。10月の米雇用統計(3日発表)において非農業部門雇用者数が前月比+15万人にとどまった(市場予想+17万人)ことに加えて、8月、9月分が下方修正されました。さらに失業率も3.9%と上昇しました(9月・市場予想ともに3.8%)。

10月のISM製造業景況感指数(1日)が46.7と前月比▲2.3pt(市場予想49.2)となり50を12カ月連続で下回りました。非製造業は51.8と10カ月連続で50を上回ったものの、前月比▲1.8ptの低下となりました。

米利上げの停止時期が近づいていることを市場は過剰に好感していますが、それは他方ではマクロ環境の悪化です。7-9月期の米企業決算では売上高の失速が鮮明になってきました。これから小売業の多い8-10月期決算が本格化しますが、景気悪化というマイナス面を市場は織り込む局面に向かう可能性も考えられます。

国内ではインバウンド効果と円安によって足もと好調な企業も多く存在しますが、設備・装置関係など中国景気の影響が色濃く表れており、減益となった企業も少なくはありません。アナリストコンセンサス予想も今期に関しては上方に修正されていますが、来期・再来期に対して慎重になり始めており、決算発表の一巡後は来期以降に視線が向かうものと考えられます。そのため、一本調子の株価上昇は考えにくく、また、上昇相場が始まったと見るには時期尚早と思います。
中国景気減速から原油相場が落ち着いていますが、イスラエルがガザ地区の攻撃を強め、死者が拡大していることに危機感を覚えます。反ユダヤ感情が世界的に醸成されることによって新たな火種が生じることを懸念します。

 


 

 

この記事を書いている人

藤根 靖昊(ふじね やすあき)

  • 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
  • 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
  • 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。
アイフィス・インベストメント・マネジメント株式会社
5th Stage Lab「シン・日本株投資」   アイフィス・インベストメント・マネジメント株式会社
短期の業績変動や株価のブレに惑わされることなく、何が本質であるかを見極められる「自律した投資家」を目指していくための気構えやスキル、実例解説などをお伝えしていきます。
本資料は、アイフィス・インベストメント・マネジメント株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報源から入手した情報に基づいて作成しておりますが、正確性の保証は致しかねます。情報が不完全または要約されている場合もあります。本資料に記載する価格、数値等は、過去の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。また、第三者による人為的改ざん、機器の誤作動などの理由により本情報に誤りが生じる可能性があります。 本資料は、情報の提供のみを目的としており、金融商品の販売又は勧誘を目的としたものではありません。また、本資料は将来の結果をお約束するものではありません。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。本資料の情報に基づいて行われる判断について、当社は一切の責任を負いません。内容に関するご質問・ご照会等にはお応え致しかねます。 本資料の著作権は、原則として当社に帰属します。本資料の転用、複製、販売等の一切を固く禁じております。

このページのトップへ