FRBはリセッション回避から次回で利上げ打ち止め、経済活動にポジティブな材料に市場は素直に反応する
先週は日米ともに株価が上昇しました。週間で日経平均株価は975.16円上昇、ダウ平均は401.18ドルの上昇でした。ダウ平均は4週連続の上昇となり、その間の上昇幅は2,024ドルにも達しています。
12日発表の3月の米消費者物価指数(CPI)は、前年同月比+5.0%と2月(+6.0%)から大きく低下し、市場予想(+5.1%)も下回りました。13日発表の米生産者物価指数(PPI)は2月分が+4.6%から+4.9%に上方修正されましたが、3月は前年同月比+2.7%と大幅に低下しています(市場予想+3.0%)。また、13日発表の週間の新規失業保険申請件数(4/2-8分)は23.9万件(前週比+1.1万件)と3週ぶりに増加しました。注目された14日発表の米小売売上高は2月分が▲0.4%から▲0.2%へと上方修正されましたが、3月は▲1.0%と市場予想(▲0.5%)を大きく上回る悪化となりました。
このように景気悪化を示す材料が多かったにもかかわらず、株価は上昇傾向を維持しました。これは、FRBが景気に配慮した政策運営を行うとの見方が強まっているものと考えられます。実際に12日に公表されたFOMC議事要旨(3/21-22分)においては、複数の参加者が利上げ見送りを検討していたことが示されました。次回のFOMC(5/2-3)では0.25%の利上げが見込まれているものの、それが上限とのコンセンサスが市場に広がっていると考えられます。そのため、良好な経済活動を示す材料が出た場合に、以前ならターミナルレート(最終金利)が切りあがる可能性から株価は下落しましたが、現在はポジティブに反応しています。17日のNY連銀製造業景況指数が大幅にプラスになったことで株価が上昇したのが象徴していると思われます。
日本株は米株上昇の追い風に加えて、10日に就任記者会見を行った植田日銀総裁が「長短金利操作を継続するのが適当」と発言したことや、来日したウォーレン・バフェット氏が「(日本株への)追加投資を検討したい」と日本株に強気の見方を示したことで大きく楽観に傾いています。実際にバークシャー・ハサウェイは5本の円建て社債(発行総額1,644億円)の発行を決めました。
足もとは、米国の銀行信用リスクが低下したことや、日銀の金融政策維持から為替は円安方向に動いており、インバウンド関連や輸出関連株には追い風となりそうです。ただし、輸出関連に関しては輸出数量のマイナストレンドには注意が必要と考えます。特に自動車は米国の環境規制が強まることもマイナス材料です。
4月は小売業など業績回復が顕著な決算発表が続きましたが、4月下旬からの製造業の決算にはやや注意が必要と考えます。ただし、5月のFOMC通過後は、FRBの利下げ時期に市場の関心が向かうことも考えられるだけに株式市場が大崩れする可能性は低下しているようにも感じます。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。