中国が2023年の台風の目となる

2023/01/17

 

12日発表の米消費者物価指数(CPI・12月・前年同月比)は、11月の+7.1%から+6.5%へと市場予想通りに低下しました。ただし、ガソリンや中古車価格などの下落の影響が強く、サービス価格の低下は大きくないとの見方もあり、現段階で金融当局が政策変更を検討するまでには至らないと考えられます。
CPI発表後には「この先は0.25%ポイントの幅で政策金利を引き上げるべきだ。現時点では5%をかなり大きく上回る水準に到達させる必要はないと考える」(フィラデルフィア連銀ハーカー総裁)というややハト派な見解もありましたが、「物価上昇圧力の抑制を確実にするために、政策金利を5%超へと速やかに引き上げるべきだ」(セントルイス連銀ブラード総裁)というタカ派の声も根強いようです。今週も当局高官の発言が続くので注視したいと考えます。

17-18日の日銀の金融政策決定会合が注目されています。昨年12月(19-20日)の会合において突如としてYCC(イールド・カーブ・コントロール)の幅を-0.5~+0.5へと拡大させるというサプライズを行ったことから今回もサプライズの可能性を見る向きがあるためです。12日付の読売新聞オンラインにおいて「日本銀行は、大規模な金融緩和策に伴う副作用を点検する」と報じられたことを切っ掛けに円高と株安が進行しました。
結果は蓋を開けてみなければ分からないものの、YCCが修正される可能性は極めて低いというのが市場の見方です。会合通過後は、一旦は円安・株高の方向に戻すものと考えます。

中国は昨年12月にゼロコロナ政策からの転換を事実上図りました。その結果、新型コロナ感染者数及び死者数が急増しています。14日に中国当局は「政策緩和後、1カ月の死者が約6万人であった」と発表しました。この数字の信憑性には疑問(過小)が出ているものの、いずれにしても中国が再びコロナ対策強化を進める可能性は極めて低いと考えられます。ゼロコロナからの転換は、習近平体制の基盤強化が進んだ証左と考えられ、集団免疫の獲得と経済活動の本格化に向けて舵を切ったと位置づけられると考えます。北京大学の研究チームの報告として既に累計9億人が新型コロナウイルスに感染したと中国メディアが報じています。今月の春節休暇をピークに急速に観戦が鎮静化する可能性も指摘されています。中国政府は、不動産やIT企業への支援姿勢も打ち出しており、23年の世界経済の台風の目となる可能性もあると予想します。
台風の目と言うのは、中国経済の回復が世界経済をけん引するという面と、経済活動の積極化によりエネルギーや鉄鋼・非鉄等の資源の利用が増えることによって、資源価格の上昇を招く可能性があるということ。その結果として、先進国のインフレ鎮静化が遅れる可能性も考えられます。
また、中国はサウジアラビアなど産油国と人民元建ての原油取引を推進しつつあり、中期的に世界のドルペッグ制への影響を及ぼす可能性も考えられます。こうした動きに米国が対抗してゆく過程で、先端技術に対する輸出規制に留まらず、台湾海峡を巡る緊迫感も高まることも懸念されます。

日本株は、来期業績に対するアナリストコンセンサス予想がやや弱含みで推移しており、日銀のYCC解除への思惑から全般的には重苦しい展開を予想しますが、中国関連銘柄の復活やインバウンド関連の再浮上の可能性には留意しておきたいと考えます。

 


 

5th Stage Labは真に自律した投資家を育成してゆくことを目的とした投資家教育&投資助言のサービスです。自律した投資家とは、経済、金融市場、企業経営、株価評価など一定の知識を持ち、シミュレーションや仮説を構築し、第三者の言説に(参考にすることはあっても)流されずに投資の意思決定を行い、想定したパフォーマンスを獲得できる投資家です。 ただ単に株価の動きを追うのではなく、金融・経済、企業経営、社会・産業動向、事業分析、株価バリュエーションなどファンダメンタルズ投資への理解を深め、メンタル面でも自立した自己を確立することを目指してゆきます。

社会の動きや人々の行動、経済の動向、ビジネスの仕組み。そうしたものが見えてくると世界観が変わります。自分で仮説を立て、予想し、投資を実行し、それが現実化する過程で、人生そのものに対する自信も深まります。

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この記事を書いている人

藤根 靖昊(ふじね やすあき)

  • 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
  • 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
  • 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。
アイフィス・インベストメント・マネジメント株式会社
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