なぜグロース(成長株)投資に集中するのか
前回まで4回にわたって投資の才能(ってなんだろうか?)について書いてきました。まだお読みいただいていない方は是非バックナンバーをご覧ください。
さて、今回は成長株投資についての私の考え(スタンス)を述べてゆきたいと思います。
「5th Stage Lab」では、「企業分析実例」や「リコメンドリスト」において取り上げる企業は、基本的には成長企業です。いわゆるオールドエコノミーの企業は全くではありませんが、取り上げることは少ないと考えています(もちろん、成熟産業にあっても成長率の高い企業は例外ですが)。大まかですが、前者はグロース投資、後者はバリュー投資と言い換えることができるかもしれません。一般的にはバリュー投資の方が、グロース投資よりも高いパフォーマンスを獲得できるという見方があります(計測時期によっても異なりますが)。
それなのに何故、グロース投資に集中するのかを申し上げます。
第一にバリュー投資は正直に申し上げて何時、株価が上がるかの見当がつきません。個々の企業の業績が反映されるというよりもマーケット要因の方が大きいように感じています。また、バリュー銘柄の多くは流動性が低く、買う時には地味に根気よくコツコツ拾ってゆく必要があります(逆に上がった時には一気に売らなければ売り場を逃します)。そのため広く分散させる必要があり、個人投資家の株式投資にはあまり向かないと考えます。
第二に、バリュー投資の対象となる企業は日本の成長を促してはくれないことにあります。人口減少で対象市場も縮小する可能性が強く、(一部の企業を除けば)企業そのものの業績も停滞する可能性が予想されます。
第三に、バリュー株は、水準訂正が起こっても株価が2倍以上になることはあまり多くはありません(下落リスクは小さいかもしれませんが)。
もちろん、配当利回りや株主優待を主な目的にして投資をされる方もいらっしゃると思いますし、それを否定するものではありませんが、「5th Stage Lab」では検討対象からは外したいと考えております。
非常に個人的な欲求ではありますが、成長株に集中するのは、まず私自身が“未来”を見たいからです。新しいビジネス(ビジネスモデル)、新しいテクノロジー、新しい市場、新しい社会、新しい組織形態とそこで働く人たちの意識とモチベーション、それが社会に何を齎すのかも含めて私は知りたいのです。
この先の世界がどの様に変化・進化してゆくのかは既存の産業や企業を見ていただけでは分かりません。また、グロース投資に身を置くことで、自分自身もRolling Stoneとなり、自己変革を促すことができると考えております。
さて、その結果として対象セクターは、IT/DX関連やインターネットサービスの企業が多くなると思います。もちろん、製造業や不動産・金融業や再エネ関係にも興味深い企業がありますが、とにかく、社会構造の変革に向けた企業を対象にしたいと考えております。
今回もお読みいただきまして有難うございました。
次回は“リアル”についての拘りをお話しさせていただきます。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。