PEファンドの資産運用に期待
・お金を投資して運用する。これをどのような形で行うか。自分で会社を興し、事業を推進する人がいる。自分の資産だけで足らなければ、外部の資本を募る。
・最初は知り合いに頼み、事業が立ち上がってくれば、銀行やベンチャーファンドに頼ることもできる。企業が一定規模になってくれば、上場を目指すこともできよう。その会社を売却してしまうこともありうる。
・事業に価値があると思うから、自らの資金で起業し、その事業が伸びると評価するから、外部の資本も入ってこよう。事業がホップ、ステップ、ジャンプと伸びていけばよいが、そうはいかないことも多い。事業の狙いはよくても、タイミングよくリソース(経営資源)が集まらなければ、行き詰ってしまう。
・オーナーの経営力が十分でないこともよくある。情熱で頑張れるうちはよいが、人が集まらなければ、大きくはできない。事業の節目では、大きな投資が必要になる。この時、投資家がファイナンスに応じてくれなければ、チャンスを逃してしまう。
・バリューチェーンのどこで力を発揮するのか。上場企業に投資する投資信託は、主に個人投資家の資金を集めていく。投資信託のパフォーマンスがよくなければ、長続きはしない。
・企業や公共体の年金基金を集めて運用する投資顧問でも、その運用会社が信頼できなければ資産の拡大はできない。こうした投資信託や投資顧問会社は、機関投資家としてのサステナビリティが問われている。
・サステナビリティを支える仕組みがESGであり、その厳格さが評価の対象となっている。とりわけ運用会社のガバナンスが問われており、1)エンゲージメントは本物か、2)利益相反は防止されているか、3)投資哲学の実践にスキはないか、という点が注目されている。
・PEファンド(プライベート エクイティ ファンド)の台頭も著しい。典型的なパターンは、機関投資家や個人投資家から集めた資金を、未上場企業に投資して、経営を支援することによって企業価値を高め、いずれその企業の株式を売却してリターンを上げていく。
・ベンチャー企業への投資、経営不振に陥っている未上場企業への投資、上場企業の1つの事業部門の分離再生への投資、後継経営者が見つからず、事業承継が難しくなっている会社への投資など、その形はさまざまである。
・ファンドの出口(エグシット)は、IPO(新規上場)や企業の売却(M&A)が中心である。対象企業の経営に関わるといっても、現経営陣を活かすことが多い。経営陣が十分でなければ、外部から優秀な経営者をつれてくる。資金面では、対象会社の資産を担保に借入を行うLBO(レバレッジ バイアウト)も一般的である。
・ユニゾン・キャピタルの林代表パートナー(日本PE協会会長)の講演を視聴した。これからPEファンドを立ち上げようというスタートアップに関心があるので、学びと気付きをいくつも得た。
・PEファンドは、会社を買って売る。そのためにお金を集めて、いずれそのお金を返す。企業経営に直接関わり、企業価値向上に貢献する。それがリターンの源泉である。
・既存の経営者は自己規律が緩みがちなので、支配株主として議決権を行使する。つまりガバナンスを効かせる。5年先に売却価値が最大になるようにマネジメントしていく。
・上場企業のガバナンスでは、ボード1.0、ボード2.0、ボード3.0が話題になっているが、2.0のモニタリング型で本当に会社はよくなるのか。もっと経営に関与する必要があるのではないか。アクティビストの台頭はその動きである。
・PEファンドから現経営陣をみると、1)情報不足、2)分析不足、3)資源不足(人材、資金)、4)意欲不足のことが多い。そこで、1)事業を外部からサポートする、2)社外取締役に当該事業に詳しい人材を入れる、3)経営人材を直接送り込む、という手立てをとる。
・PEファンド(投資事業組合)の参加者は、GP(ジェネラルパートナー)とLP(リミテッドパートナー)から成るが、GPは運用者であり、LPは投資者である。
・GPは時間の100%をファンドに使い、自らの個人資産、事業資産も入れて、全力投入の姿勢を示す。このスピリットがLPの信用を得る。LPは運用をGPに任せる。投資期間は一般に10年で、期間の後半から終盤にかけてリターンが出てくるように運用を行う。
・パートナーシップのモデルで、リスクとリターンを共有しつつ、役割を分担してコミット(必ずやると約束)する。ハンズオン(直接関わる)といっても、4つのパターンがあると、林氏は説明する。
・1)ファンドが100%出資し、取締役として参加するとしても、経営はあくまで経営陣に任せてその評価を行うケース、2)GPの担当者が自らその会社の個別の戦略やプロジェクトを推進するケース、3)中堅中小企業のマネジメント層の人材不足を埋めるべくサポートしていくケース、4)GPが自ら社長となって直接経営するケースである。
・4番目になると、それでガバナンスが効くのかという課題が出てくるので、通常はここまでいかない。2番目から3番目というのが、通常のPEファンドのやり方である。
・ユニゾン・キャピタルでは、投資先のGPとして、①取締役会に出る、②経営会議に陪席する、③現場の会議に若手FMが陪席する、④経営懇話会と称して月1回経営陣と食事をしてフランクに話し合う、⑤年に1~2回オフサイトの戦略会議をもって、実行戦略をすり合わせる、という活動を行っている。
・時間軸では、1)まず5年で価値を創り込んでいく。2)次の5年でその価値を可視化して、エグシット先に十分評価してもらえるようにする。
・このPEファンドは、どこまで再現性が高められるのか。つまり、資本参加してマジョリティをとり、経営を再建していく。この手法で一定の定石を示すことができ、安定感と信頼感が得られるのであれば、今後一段と成長しよう。
・PEファンドのエコシステムで人材を育て、取締役会のガバナンスを超えて価値創造を行い、新たな成長基盤の構築ができるならば、多くの企業の再生に役立とう。
・ユニゾン・キャピタルは、GPから企業再生のプロデューサーへ発展しようとしている。PEファンドの枠を超えて、企画、制作、販売というプロデューサー機能を、調達、調整、運用という場面で発揮していく。外部のリソースと協働して、トラックレコードをベースに、さらなる成長を目指す。
・PEファンドは、企業の期限付きオーナーである。ドクターとして治療に当たり、リハビリを終えて、元気になった企業に、次のステージに向かってもらう。そのブリッジの役割はますます重要になろう。PEファンドから上場してくる企業も多い。そのガバナンスと成長力をよく見極めたいものである。