最近の株価急落について
- 株価が急落しています。きっかけは米当局の不協和音と見られ、収拾にはやや時間が掛かりそうです。
- 基本的な背景は、利上げの累積的な景気押し下げ効果を市場が意識し始めたことにあると見られます。
- 目先は上下に振れやすい展開も、景気拡大持続は変わらず、株価下落長期化はリスクシナリオです。
大統領発の政権内不協和音
株価が急落しています。12月のNYダウは、24日までの15営業日で前日比300ドル超の株価下落が8回に及びました。11月末比は-14.7%と、世界の50を超える国・地域の株価指数では最大の下落率です。明けて25日の日経平均株価も急落。終値は前日比1010.45円安の1万9155.74円と1年3ヵ月ぶりに2万円を割り込みました。
12月入り後の米国株下落は、月前半は、もっぱら米中貿易摩擦の激化が影響しました。1月からの追加関税発動の3ヵ月延期に対する市場の好感も一時的でした。後半になると、19日のFOMC(米連邦公開市場委員会)でFF金利誘導水準の引き上げに加え、19年は2回利上げの想定が発表され、景気の先行き不透明感が強まりました。
さらに20日、メキシコ国境の「壁」建設費の規模をめぐり、トランプ大統領が暫定予算案に反対したため、予算が一部失効して政府機関が一部閉鎖に追い込まれ(22日以降)、政策停滞のリスク増大が意識されました。加えて、トランプ大統領のFRB(米連邦準備理事会)批判など、政権内の不協和音が表面化しました。事態の収拾が急がれますが、とりわけ大統領と議会(特に民主党が多数の下院)との溝は深く、やや時間が掛かりそうです。
基本的背景
株価急落の基本的な背景には、利上げの累積的な景気押し下げ効果があると考えます。夏場辺りから、FRBがこのまま利上げを続けることで、19年前半までには短期金利が長期金利を上回る「逆イールド」となり、その後1年程度で景気後退になるという見方が目立ち始めました。
現在、FF金利誘導水準(上限)の2.5%に対し、10年国債利回りは2.7%台となっており、あと1回利上げすれば逆イールドとなります。11月までは10年国債利回りが3%台を推移し、逆イールドとなる水準の想定は現在よりも高い水準でした。しかし、景気の先行きに対する不透明感が増大し、10年国債利回りが低下するにつれ、利上げを継続して逆イールドになってしまうリスクがその分大きくなっていました。
下落長期化は依然リスクシナリオの範囲
株価急落で、株価の変動性の大きさを示す「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数※(ボラティリティ・インデックス、株価が下落すると上昇する傾向が強い)が急上昇しています。24日は36.07%と、今年最高の37.32%(2月5日)に迫りました。
一般的にVIX指数が急上昇した局面では、株価が大きく下落しているため、安値で株式に投資するチャンスと言えます。2月の急落局面でもその3日後が当面の底となり、その後急反発しました。もっとも、現時点で留意すべきは、年末年始で世界的に取引が少ない時期に当たるため、目先はちょっとしたきっかけで株価が上下双方に大きく振れやすい時期でもあることです。
米利上げが、本格的なリセッション(景気後退)を引き起こす前に打ち止めとなり、減速はするものの、世界は景気拡大が続くとの見方は現時点では変わっていません。したがって、年末年始が過ぎて市場が再び厚みを取り戻した後は、割安感から投資資金が入ってくることも期待され、このまま株価下落が長引く事態は、現時点では依然リスクシナリオの範囲です。
※VIX指数:シカゴ・オプション取引所(CBOE)が、米国の代表的株価指数であるS&P500指数オプション取引のボラティリティ(年間変動率)を元に算出している指数
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