2月の雇用統計について(米国)
- 非農業部門雇用者数は前月比+23.5万人と2カ月連続の+20万人超。雇用は順調に増加しています。
- 賃金は伸び加速のトレンドを維持しており、先行きインフレ率の上昇につながると見込まれます。
- トランプ政権の政策によって、製造、建設など、財生産業を中心に相対的な雇用増加が試されます。
就業者の割合底上げ
10日、米労働省が発表した2月の雇用統計では、非農業部門雇用者数は前月比+23.5万人でした。2カ月連続の20万人を超える増加で、16年6、7月以来のことです。業種別の雇用者数では、建設業が前月比+5.8万人、製造業が同+2.8万人と財生産業の雇用増加が目立ちました。サービス産業では専門・企業向けサービス(同+3.7万人)、ヘルスケアサービス(同+3.3万人)、レジャー・接客業(同+2.6万人)などが増加しました。
なお、16歳以上の人口(非軍事)に占める就業者の割合が、09年2月以来8年ぶりに60%台となりました。完全雇用になったとされる現在の雇用環境では、いかに就業者数の割合を上げていくかが課題になるでしょう。
賃金の全体的な底上げもトランプ政権の課題
また、民間企業の時間当たり賃金は前年同月比+2.8%でした。単月では上下を繰り返していますが、15年初めから徐々に進んでいる賃金の伸び率上昇のトレンドは変わっていないと判断されます。PCE価格コア指数は1月時点で前年同月比+1.7%と大きく動いていませんが、今後、賃金の伸びを吸収する形で水準を上げていくと見込まれます。
ところで、トランプ政権は、減税やインフラ投資で国内経済の活性化を図ろうとしています。これらは「没落した製造業の復権を狙う」政策とも見られていますが、実際、製造業の雇用者数はリーマン・ショック前の景気のピーク時に対して、民間企業雇用者数に対するウエイトが大きく低下しました。製造業だけでなく、建設業をはじめ、財生産業はわずかな例外(石油掘削など)を除き、ほとんどの業種にわたってウエイトが低下しました。
代わりにサービス業のウエイトが上昇しています。賃金水準はサービス生産業が財生産業に比べてやや低いのと同時に、業種による賃金格差が概して大きいため、今回の大統領選で問題にされた「格差拡大」の一因にもなってきたと思われます。これに対して製造業などの財生産業は中レベルの賃金水準であり、「製造業の復権」がなされれば、雇用者の賃金水準を平準化するとともに全体的な底上げも期待できます。
トランプ政権の経済政策の成果をチェックする方法として、業種別の雇用者のウエイトが挙げられるでしょう。また、経済政策が効果を発揮できていれば、賃金の伸びも一段と高くなることが期待されます。
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