英メイ首相、EU単一市場からの完全離脱を表明

2017/01/20
  1. 英メイ首相は17日、EU単一市場からの完全離脱と新たな貿易協定を模索することを表明しました。
  2. 離脱宣言の議会承認の要否に係る最高裁判決が24日に下される予定であり、事態は依然流動的です。
  3. 経済への影響には様々な意見がありますが、早い決断がむしろ市場にプラスに働くとの見方もあります。

最高裁判決控え、情勢は依然流動的

17日、英国のメイ首相は、EU(欧州連合)からの離脱交渉に向けた政府の方針について演説しました。演説の要旨はEU単一市場から完全に離脱するEUと新たな貿易協定を締結する③国益に沿った移民の管理を行う、など、EU加盟に伴う特権的扱いを放棄する「ハードBrexit」の道を選択する内容となっています。ただし、EUとの最終合意は議会の承認を受ける、としています。

メイ首相は8日のインタビューでEU単一市場からの離脱を示唆し、その後為替市場では英ポンドの下落傾向が強まり、16日には一時1ポンド1.2ドルを割り込みました。しかし、今回の演説で最終的に議会承認を受ける旨が盛り込まれたことで安心感が広がり、17日は大きく買い戻され、足元では1.23ドル台で推移しています。

英政府は、3月中にEU離脱を宣言する予定です。しかし、離脱宣言に対する議会承認の要否が、最高裁で審議されており、24日に判決が下される予定です。議会承認が必要との判決が下ると、離脱宣言が遅れる可能性が高まります。また、議会承認を受ける過程でEUルールを一部受け入れてEU単一市場への参入を一定程度維持する「ソフトBrexit」へと姿勢が変化する可能性もあり、事態は依然として流動的です。

※Brexit・・・英国のEU離脱。BritainとExitを合成した造語

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逆説的な意味で英ポンドを下支え

英国が国民投票でEU離脱を選択した直後、PMI(購買担当者景況感指数)が一時、景気の良し悪しの境目である50を割り込みました(16年7月)。しかし、その後は改善に転じ、12月は56.7と15年7月以来の水準まで上昇しています。

また、16年の夏場以降インフレ率が高まり、12月のCPI(消費者物価指数)は前年同月比+1.6%と、14年7月以来の+1%台後半へ上昇しました。これらの経済指標の動きは金利、特に長期金利の上昇を促し、夏場に0.5%近辺まで低下した10年国債利回りは足元で1.3%台となっています。

これらの動きは、いずれも英ポンド安の効果と見られます。ところが、最近はそれが英ポンドの割安感を強め、逆に下支える方向に働き始めたと思われます。EU離脱による英国経済への影響は不透明であることは変わらず、国民投票以前の水準以上に相場が上昇する可能性が低いことは否めません。しかし、早期に国の方針を明確に打ち出せば、不透明感を払しょくすることにつながるという見方もあり、今回の演説が英ポンドにプラスに働く契機となることも期待されます。

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