意外と脆い?足元の堅調ムード

2015/11/12

今週の国内株市場ですが、日経平均は一段高でスタートし、節目の19,500円台に乗せてからも、同水準を維持する展開となっています。11日(水)の取引終了時点で、気が付けば先週から6連騰ですし、急騰に対する警戒感の一方で、ちょっと下がると買いが入って持ち直す動きが多くなっており、「アフター米雇用統計」の相場ムードはかなり堅調と言えます。

その米10月雇用統計の結果は、NFP(非農業部門雇用者数)が27.1万人増、失業率が5%ちょうどとなりました。特にNFPについては市場予想(18万人増)を大きく上回ったほか、過去分(8月と9月)も当初の発表から上方修正されるなど、FRBによる12月の利上げシナリオを補強する内容でした。

最近までは米国の利上げ観測が高まると、国内外の株式市場はネガティブに反応することが多かったのですが、今回についてはこれまでのところポジティブに捉えられているため、多少の違和感は否めませんが、利上げに対しての視点が「実施による影響を懸念」から、「実施できるほど米国経済はしっかりしているという背景を好感」へと移ったのかもしれません。逆を言えば視点が再び懸念へと向かう可能性もあるということです。

また、あれだけ不安視されていた中国への懸念が後退したことも日本株への追い風となっています。経済政策や金融政策への期待が後押しする格好で上海総合指数は今週3,600ポイント台を回復しました。夏場の安値から20%以上戻した格好ですが、昨年末比では10%以上高い水準でもあります。経済指標の悪化や企業業績の減速傾向は現在進行形ですから、政策期待の支えがあるとはいえ、確実に中国株は割高になっていると言えます。

先日、5中全会を通過しましたが、報道等からすると、今後5年間に想定されるGDP成長率は6.5%~7%です。この目標を達成するために中国当局は様々な政策や対策を講じてくると思われます。確かに、GDPをはじめとする中国の経済統計の信頼性の問題はありますが、ある程度の成長を中国は続けていくと考えられます。

とはいえ、中国では地方政府や企業による債務の増加が問題視されており、足元では経済成長のペースよりも債務増加のペースが上回っています。金融当局は資金供給の対策を次々と打ち出していますが、この状態が続けばいずれ行き詰まってしまいかねません。11月は人民元がIMFのSDRの構成銘柄に採用されるかどうかが判断される予定ですし、その意味では「中国不安」の根源はGDP成長ではなく、注意すべきは中国の「カネ回り悪化」の方なのかもしれません。

 

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