中国の「問題先送り」懸念

2014/07/25

今週の日経平均は比較的堅調な展開が続いています。先週末に相次いで発生した地政学的な緊張の高まりによって日経平均は大きく下落しましたが、連休を挟んで「リスクオフ」ムードはひとまず一服している格好です。また、良好な企業業績に対して素直に好感する動きも見られています。

そんな中、中国では24日に7月の製造業PMI速報値(HSBC版)が発表され、その結果は52.0となり、前月(50.7)から上振れたほか、予想の51.0も上回りました。日経平均も結果発表の直後は上値を伸ばす場面もみられましたが、あまり長続きしませんでした。先週発表された4-6月期の実質GDP成長率が前年比で+7.5%に加速していたこともあり、多少の良い結果は想定内だったと言えます。

中国における今回のPMIやGDPの良好な結果の背景には、政府による「プチ経済対策」が奏功したことが挙げられます。ただし、李克強首相が「今年(2014年)の経済成長率が目標の7.5%を多少上下に振れても容認できる」と述べているように、政府の経済対策は景気を積極的に浮揚させるためというよりは、経済の構造改革を進めていくことに伴う、景気の減速懸念を下支えすることが前提と考えられ、更なる景気改善がしにくいことも株式市場の反応が限定的に留まった理由と思われます。

また、今週の中国ではもうひとつ注目の話題がありました。華通路橋集団という、中国の建設会社が発行する短期債が今週23日に償還を迎えるにあたり、デフォルト(債務不履行)するのではという懸念です。これまでにも、中国企業による利払い不能のデフォルト騒ぎは度々起こっていましたが、今回は利払いと元本返済の両方がデフォルトする初の事例になる可能性がありました。

今のところ正式な発表はありませんが、華通路橋集団が資金をかき集めたほか、本社が所在する山西省の地方政府も資金を提供したと見られ、結果的にはこれまでの多くの事例と同様に、ギリギリのところでデフォルトは回避された模様です。こちらについても、中国政府は金融市場の改革を進めようとしている最中であり、今後も大きな混乱を避けたいというのが本音と思われます。

政府による景気対策も、債務返済の救済も、あくまでも改革を進めていくための時間稼ぎの対応です。また、プチ経済対策の内訳をみても、地方政府の支出前倒しや公共事業の投資拡大など、持続可能が難しいものが含まれているほか、自転車操業的な資金の融通もいつまでも続けられるものではありません。単なる「問題の先送り」とならないように、着々と改革を実行していくことが今後の中国経済のカギとなりそうです。

 

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