中国の景気減速と金融不安
今週の株式市場はFOMCの行方が話題の中心でしたが、中国では20日に6月製造業PMI速報値(HSBC版)が発表されました。その結果は48.3となり、景況判断の分かれ目となる50を2カ月連続で下回ったほか、前回(49.2)からもさらに悪化しました。
景気の底打ち観測により、昨年末にかけて日本株並みの株価の戻りを演出した中国株市場でしたが、今年に入ってからは、昨年末の水準を挟んだもみ合いの展開が約半年ものあいだ続き、今週の上海総合指数は再び年初来安値を更新する場面もありました。今回のPMIをはじめ、冴えない経済指標が相次ぎ、何だかんだで中国の景気減速への「警戒モード」が解けずにいる格好です。
もっとも、このまま中国景気の減速傾向が続くと、政府目標であるGDP成長率(7.5%前後)の達成が危うくなるほか、景気低迷によって不良債権が増加し、地方政府の債務やシャドーバンキングの焦げ付きなどの問題が顕在化し、経済や社会が混乱する恐れがあります。
とりわけ、シャドーバンキングについては、今週19日の日経新聞朝刊にも『中国「影の銀行」まん延』という見出しで記事が載りました。以前(4月26日)に、このコラムでも触れた平台(地方政府が資金調達のために設立した特別目的会社)についても解説がありましたが、記事のポイントは、シャドーバンキングによる「不透明な資金調達フロー」の増加傾向が顕著となっており、「融資資金の行先と返済への影響」、「正確な規模や監視が行き届かない」ことなども合わさって、不安が燻っているというものです。
そもそも、シャドーバンキングについては明確な定義は定まっていませんが、ざっくりまとめると、通常の銀行システム外の資金調達フローです。信託ローンやノンバンク融資、「理財商品」と呼ばれる運用商品を通じた銀行の簿外預金、民間企業によるまた貸しなどが主になります。そして、断片的な情報を集約すると、シャドーバンキングの資金運用規模は、近年急拡大している模様です。
例えば、中国人民銀行(中央銀行)は、「社会融資規模」という、金融部門から実体経済へ供給される資金の総額を示す指標を毎月発表しています。2012年の融資規模は15兆7,600億元でした。2010年時点(約14兆元)からは約1.13倍に拡大していますが、その内訳には信託融資や委託融資など、銀行システム外の融資規模、いわゆるシャドーバンキングによるものの一部が含まれています。こちらについては、2010年(1兆1,144億元)から2012年(2兆5,688億元)と2.3倍になっており、確かに急拡大しています。
別の統計でも見てみます。4月25日に中国社会科学院というところが銀行簿外の資金運用規模について、2010年の5兆5,400億元から、2012年は14兆5,710億元に達したと報告しています。こちらも2年間で約2.6倍に急拡大しているほか、その規模も先程の社会融資規模に匹敵しています。さらに、米格付機関のムーディーズも、シャドーバンキングの規模は2012年末で29兆元まで膨れ上がっているとのレポートも出しています。結局、シャドーバンキングの正確な規模は不透明なのですが、危険視されるほどに増加しているのは間違いなさそうです。
まずは、中国景気の減速傾向がこのまま続くのかどうかを見極めていくことになります。来月15日には4-6月期のGDPが公表される予定です。また、当局も危機感が強いだけに、いずれかのタイミングで対策が出てくるものと思われます。既に政府系のファンドが中国の金融株を買い支えるなどの動きが出てきています。
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