転換期の金融相場と置き土産
今週5日の日経平均は大きく反落しました。前場は前日終値を挟んだもみ合いが続いていましたが、後場に入ると一転して下げ幅が大きくなっていき、終値で518円安と今年3番目の下げ幅となりました。その背景となったのは、安倍首相が講演で言及した成長戦略第3弾です。
その内容自体は事前報道にあった通りで、特にサプライズはありませんでした。最初は買いで反応したものの、法人減税や労働規制の緩和など一部で期待されていたものが出なかったこともあり、積極的に買い上がる材料になりきれず、逆にファンドや先物などによる売り仕掛けのきっかけになってしまった格好です。
とはいえ、ここまで株価が大きく下げるほどの悪い内容だったかと言えば、そう言い切れないと思われます。そもそも、成長戦略自体は日本の将来にわたってのプランであって、戦略の実現に向けての動きや成果をこれから評価していくべきものです。もっとも、「具体的なプランが明確でない」との指摘があるように、安倍政権は戦略に加えて、戦術と作戦面にも気を配る必要はありそうです。
日経平均が前日比で1,140円の急落を見せた5月23日以降の株式市場は値動きの荒い展開が続いています。最近の市況コメントでも「先物主導で値動きが大きくなった」という表現が目立っていますし、日銀が5日に公表したレビューでも、テーマは「先物主導」でした。
相場が急落する5月下旬までの株式市場はほぼ一本調子で上昇してきました。外部要因のリスクテイクの地合いの中、企業業績の上振れ「期待」や一連のアベノミクスへの「期待」をベースに、先進国を中心とする金融緩和祭りによる過剰流動性がその流れを加速させた、いわゆる「金融相場」です。期待先行とカネ余りで過熱感を帯びながらも急ピッチで相場を駆け登ってきましたが、それに伴い、先物取引の建玉や裁定買い残もどんどん積み上がっていきました。
ところが、米FRBによる金融政策(QE3)の出口戦略に向けた動きが現実味を帯び始めたことで、これまでのイケイケムードに変化が訪れ、今度は積み上がったポジションの整理や手仕舞いの動きが警戒されるようになり、実際に相場の動きを大きくしている状況となっています。
例えば、5日に発表された最新の裁定買い残(5月末時点)は3兆6,100億円でした。ピークをつけた5月17日時点(4兆3,140億円)からは、最近の軟調相場に伴って減少しているものの、株価が上昇し始めた昨年11月時点が1兆9,000億円だったことを踏まえると、依然として高水準です。
確かに、今までの金融相場は転換期に差し掛かっていると言え、特に米FRBの一挙手一投足に注目が集まっています。足元ではFRBの出口戦略の有無が話題の中心ですが、よく考えてみればFRBは金融緩和策をピタッと止めるわけではなく、状況を見ながら資産購入額を縮小させていくというものです。そのため、今後の焦点は「どのくらい縮小させるのか」、「どのくらいの縮小のペースなのか」、「状況によっては再び拡大はあるのか」に移っていくものと思われます。つまり、金融相場一辺倒の状態から、実体経済とのバランスをとりながら業績相場へスムーズに移行させて行けるかがポイントになってきます。
ただ、先程の裁定買い残高にもあるように、金融相場の「置き土産」は大きく、来週以降は日銀の金融政策決定会合やメジャーSQ、G8サミット、米FOMCなとのイベントが目白押しのため、値動きの荒くなる展開がしばらく続きそうです。
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