欧州発のリスク回避の芽

2013/03/29

3月中旬、ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)が緊急支援を合意した時から市場の注目を集めたキプロス問題。当初はキプロスという国の経済規模や特殊性もあって、問題は短期間で収束し、影響は限定的だとの見方が大半でしたが、キプロス議会が合意された支援条件を否決したほか、財務相がロシアに乗り込んで個別に支援を求めたり(断られましたが)、ユーロ離脱の可能性が浮上するなど混乱する局面があり、結局、国内大手行の閉鎖と再編で決着が着くまで、しばらく時間がかかりました。

今週の為替市場の動きを見ると、週初はキプロスへの支援がひとまず決着したことで安心感が広がり、ユーロが買い戻されましたが、ホッとしたのも束の間、その後は再びユーロ売りが優勢の展開が続いているほか、欧州株式市場も弱含みとなっています。きっかけとなったのは、ユーログループ議長のデイセルブルム氏による、「キプロスの銀行再編計画はユーロ圏全体の雛型と見なすべき」という発言です。

そもそも、小国であるキプロスの一挙一動に世界中の目が注がれたのは、その支援条件に銀行預金者への負担が盛り込まれていたためです。これが、今後欧州で起きるかもしれない銀行破綻の処理プロセスの基準になるとの思惑を呼ぶことになりました。現在のEUでは域内での銀行が破綻した際に処理を行う手順が明確化されておらず、関連するEU法の草案段階です。銀行が自力で資本の増強ができなくなれば、株主をはじめ、債券保有者や預金者などに負担が課せられる可能性があり、今回のキプロスへの対処があくまでも例外なのかどうかが注目されています。

また、イタリアでは国債の格下げが噂されたほか、連立政権樹立に向けた協議も難航しています。経済指標でも、前月まで4カ月連続で上昇していたユーロ圏景況感指数が再び低下に転じるなど、欧州から次々と冴えない材料が出てきたこともユーロ売り・欧州株売りを後押ししました。欧州債券市場ではドイツ国債が買われる一方、イタリアやスペイン、ギリシャなど南欧諸国の国債が売られています。総じてリスク回避の動きとなっていますが、10年債利回りの水準は、28日朝の段階でイタリア(4.78%)、スペイン(5.07%)、ギリシャ(12.84%)と、まだ懸念するほどではありません。

欧州情勢への不安は2009年10月に政権が交代したギリシャが、「実は財政赤字の対GDP比が3.7%ではなくて、12.7%でした。」とカミングアウトしたときから始まりましたが、ここ数年、春から夏にかけてのタイミングで欧州からの不安が再燃し、軟調な相場展開となるパターンが続いています。確かに欧州の現状は、警戒感が高まっているものの、本格的なリスク回避モードではないと言えます。その一方で、抱えている不安の「芽」が多いことも事実であり、今後も注意が必要です。

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