一時的に賑わった農業関連株

2013/02/21

「通過安競争」をキーワードに日本への風当たりが懸念されていた、G20財務相・中銀総裁会合を無難に通過した今週の国内株市場ですが、20日に日経平均が取引時間中に2008年9月30日以来となる、節目の1万1,500円台を4年5カ月ぶりに回復する場面が見られたものの、上値を追いきれない展開が続いています。

そんな中、19日の取引では、農機具や化学肥料、飼料、種苗などの農業関連株が物色され、軒並み上昇する動きがありました。そのきっかけとなったのは、政府の産業競争力会議が農業強化策の検討に入ったとの報道です。「①農産物の輸出拡大」、「②農業と他産業との連携」、「③農地の有効活用」の3つが柱となります。

具体的には、2月に発足した官民ファンドなどを活用して他の産業との連携を強化し、農地全体の1割弱を占める耕作放棄地の解消などを通じて、農業の生産性向上や効率化を図り、現在4,500億円規模の農産物輸出を2020年までに1兆円規模に倍増させることなどが主な方針となり、6月末までに策定されるアベノミクス「3本目の矢」、成長戦略に盛り込まれる予定です。安倍首相も、この会議で「農業を成長産業分野として伸ばしたい」と強調しています。

確かに、世界的にも食料の需要増加が見込まれることから、農業を成長分野に位置づけることは理に適っていますし、相場のテーマ株になる可能性は十分に秘めています。ただ、直近の農業関連株の値動きを見ると、報道直後こそ上昇しましたが、その後の勢いは続いているとは言い切れず、これまでのところ、ひとまずは様子見の印象が強くなっています。

農業の生産性向上や効率化、国際競争力の強化のためには、補助金依存からの脱却や、税制の見直し、農業団体へのテコ入れなど、規制緩和や構造改革を大胆に進めていく必要があります。そういった意味では、今回検討に入った産業競争力会議だけでなく、規制改革会議などでも議論が進むことが望ましいのですが、その規制改革会議で農業は重点分野に現時点で入っていません(ちなみに、重点分野に挙げられているのは、①雇用、②エネルギー・環境、③医療・健康の3つです)。

今回の産業競争力会議での安倍首相の表明は、22日から始まる日米首脳会談を前に、あくまでもTPP参加交渉を視野に入れた環境整備の一環で、規制改革会議の重点分野に農業が入っていないのは、参議院選挙を前にTPPに反対する党内派閥や農業団体を無駄に刺激しないという配慮と考えることもできます。今後、農業分野での規制緩和・構造改革にメスを入れるとの本気度を示せるかどうかが、農業関連株がテーマ株になるポイントとなりそうです。

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