株高の背景となった円安の背景
最近の国内株式市場の値動きが大きくなっています。米大統領選挙後に不安が再燃した「財政の崖」問題をはじめ、欧州でも景気減速やギリシャの財政支援に対する懸念、中国の新指導部体制を見守る動きなどを背景に、日経平均は4月以来となる7日続落となり、約390円の下落となりました。ただし、その後はガラリとムードが変わり、4日続伸で約492円上昇しました。
株価の上昇は、14日に野田首相が衆院を解散すると表明したのがきっかけです。翌15日の国内株市場は、政局に対する停滞や閉塞感が打破されるとの期待や、次期政権担当者と目される安倍自民党総裁が、デフレ脱却に向けて無制限の金融緩和と、政策金利のゼロもしくはマイナスについて言及し、為替が円安に反応したことで大きく上昇しました。その後も為替の円安基調が続き、日経平均は9月19日の戻り高値(9,288円)も超える水準となっています。
引き続き、為替の動向が株式相場を左右しそうなため、ここで一度、最近の円安要因を整理してみたいと思います。
まずは外部(国外)の要因です。米国は、「財政の崖」問題に対する不透明感は依然として根強いものの、ねじれとなっている議会で民主・共和の両党が歩み寄りの姿勢を示していることで不安が一服している状況です。足元で堅調な経済指標もドル買いの動きになっています。また、欧州でも、ギリシャが要求している、財政再建目標期限の2年延長が承認される方向で動いていることや、現在ストップしている支援再開への観測などでユーロが買い戻されています。
一方の国内要因は、先程の解散総選挙や追加金融緩和を先取りした期待感が円安スイッチを入れた格好ではあるものの、国内景気の後退を懸念した円売りの動きも意識した方が良いかもしれません。7-9月期の実質GDPが3四半期ぶりのマイナス成長となり、落ち込み幅も昨年1-3月期の2.1%以来(マイナス2.1%)の大きさだったほか、先日発表された10月貿易赤字も5,490億円と同月としては過去最大の赤字を記録しており、10-12月期も2期連続でマイナス成長となる可能性が高まっています。
つまり、最近の円安は、国内政局動向を起爆剤として、外部要因のリスク回避が後退したことによるポジティブな面と、国内要因の「景気の減速傾向=追加の金融緩和期待」という構図によるネガティブな面が合わさったことによるものと言えます。確かに、円安傾向が続くことで輸出企業の業績に寄与しますが、日本経済全体で見ると喜んでばかりではいられない状況と言えます。
また、安倍自民党総裁が打ち出した、日銀への金融緩和圧力政策についても、日銀法の改正やマイナス金利、インフレ目標3%、建設国債の買い取りなどの面で賛否が分かれています。11月2日のコラムでも触れたのですが、日銀はこれまでに何度となく追加の金融緩和を実施し、資産買い入れ基金の総額を、導入時(2010年10月)の35兆円から今回の91兆円程度まで3倍近くに増やしていますが、未だにデフレ脱却には結びついていないのが現状です。
恐らく、安倍総裁は、「まだまだ日銀の緩和が足りない」という見解だと思われます。確かにデフレ脱却のために金融緩和を行うことは重要なポイントですが、規制緩和や構造改革、税制の見直しなど、金融緩和を実体経済に活かす政策は政治がカギを握っています。その政治側がこれらの政策をどこまで議論・実行してきたかが検証されないまま、日銀だけに圧力をかけてデフレから脱却しようというのは少し無理があるような気がします。
10月30日の日銀金融政策決定会合において公表された共同文書(「デフレ脱却に向けた取り組みについて」)の通り、日銀と政府が協力してデフレ脱却に取り組める体制が整うことに期待したいところです。
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