米大統領選に次ぐ注目の政治イベント・・・中国共産党大会について
中国では共産党全国代表大会、いわゆる党大会が今週の8日より開催されています。
この党大会は5年ごとのペースで開催され、党規約の改正や修正、党人事の選挙などが行われます。今回の党大会は、10年にわたって続いた、胡錦濤氏・温家宝氏の体制から新指導部に移行するタイミングでもあり、特に人事に注目が集まっています。
具体的には、中国共産党の「中央政治局」という機関のメンバーを決めます。中央政治局は、党を指導し、政策を討議・決定するところなのですが、中国は共産党の一党独裁体制となっているため、事実上の国家の指導部でもあります。
そのメンバーの数は25名で、「政治局委員」と呼ばれています。そして、その中から「政治局常務委員」という7名の最高指導部が選ばれ、この7名が次の中国を引っ張っていく主要メンバーになります。ちょうど、人気アイドルのAKB48の中で不動の人気を誇るメンバーを「神7(セブン)」と呼ぶそうですが、それに近いようなイメージです。
今のところ、次期トップとなる習近平氏と、ナンバー2とされる李克強氏の2名は常務委員入りがほぼ確定とされていますが、残りの5名の顔ぶれについては、ある程度の候補者が絞り込めても、実際に蓋を開けて見ないとわからないという状況です。
ポイントとなるのは、改革派とされる、王岐山氏や汪洋氏がメンバー入りして、改革に向けた姿勢をアピールできるかです。王岐山氏は、中国の中央銀行である人民銀行の副行長など金融ポストを歴任し、海外からの評価と期待の高い人物です。また、汪洋氏については、広東省のトップだった時に労働組合や農村の選挙を実施したり、政治体制の民主化や構造改革に前向きな改革派として認知されています。
改革派の動向が注目されるのは、今後、中国が安定的な発展や成長をしていくためには、政治経済などの面で改革をしていくことが必要だからです。例えば、経済については、これまで「外需主導・投資主導」で急成長を遂げてきましたが、これからは「内需主導・消費主導」の安定成長に方向転換すべく、2011年に決定した第12次五ヵ年計画にも盛り込まれています。
直近の中国経済は様々な経済政策の効果が出はじめ、ようやく減速傾向に底打ちの兆しが見え始めましたが、その政策の内容は従来の投資主導が中心です。今後3~4年間で計12兆元を超える規模とされています。
確かに、2008年にも4兆元とされる、投資主導の大規模な経済政策を打ち、中国経済が劇的な回復を見せた実績はありますが、一方で、不動産バブルやインフレ、格差、地方政府の債務問題などの副作用を生み出しました。現在の経済政策で短期的に持ち直したとしても、中長期ではこうした問題が再燃する恐れがあります。
本来であれば、社会保障制度の整備や税制改革、規制緩和、国営企業改革などの政策を通じて、経済構造を効率化し、所得の再分配や可処分所得を増やして、内需や消費の拡大を促すことが必要です。
元々、改革路線の方針は、現在の胡錦濤氏・温家宝氏体制の頃からあったのですが、現在の中国は、かつてのカリスマ指導者による「鶴の一声」で動くのではなく、この政治局常務委員による集団合議で調整していく体制となっているため、改革に反対する勢力の抵抗もあり、結局は大きな成果は出せず、次期政権への宿題として引き継がれる格好になってしまいました。
そのため、新指導部がどこまで構造改革に踏み込めるかが焦点になるのですが、そもそも党大会の日程がなかなか決まらなかったことや、メンバー候補も現時点で未だに憶測を呼んでいることなどを踏まえると、背後で熾烈な派閥争いがあったことも推測され、これまで以上に政権基盤が弱くなってしまう可能性があります。
なお、現在の政治局常務委員の数は9名ですが、今回から2名減ることになります。その理由はハッキリとは判りませんが、人数が少ない方が意見の調整をしやすくなるというねらいがあるのかもしれません。
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