手詰まり感のスペイン情勢、財政支援要請のタイミングは?
今週の株式相場は、日米欧の金融当局が決定した一連の金融緩和策を受けたリスク選好ムードが一服し、利益確定を中心に売り優勢の展開が目立っています。
中国の景気減速が続いているほか、欧州の不安も再燃するなど、金融緩和策による過剰流動性相場への期待よりも、足元の状況を警戒する動きの方が強まっている格好です。また、米国でもフィラデルフィア連銀の総裁が、量的金融緩和第3弾(QE3)について否定的な発言をし、「金融緩和を決めた当局者自身が否定してどうするの」と受け止められ、売り材料となりました(同総裁はFOMCにおいて議決権を有していませんが・・・)。
そんな状況の中で、とりわけ欧州スペインの動向が注目されています。今週のスペインは重要日程が多く、27日に2013年度予算案が提出されるほか、28日にはスペイン国内銀行のストレステスト(健全性調査)の結果が公表される予定です。主なポイントは、「スペイン国債の格下げがあるのか」と「スペインが財政支援を要請するのか」の2点です。
そもそもスペインでストレステストが行われている背景ですが、話は6月に遡ります。不動産バブルの崩壊や景気後退などで苦境に喘ぐスペインの銀行に対して、ユーロ圏の財務相が緊急の電話会合を開き、総額1,000億ユーロの救済措置を決定しました。テストの結果は、スペインの銀行の資本増強にいくら必要なのかを判断する基準として利用されます。
このテストが注目されているのは、米国格付会社のムーディーズがテスト結果を受けて、月末までに格付けの見直しを行う予定になっているためです。ムーディーズによる現在のスペイン国債の格付けは「Baa3」です。普段あまり格付けを意識していない方はピンとこないかもしれませんが、ここから一段階でも格下げされれば「投資不適格」となる水準です。格下げとなれば、スペイン国債がさらに売られ(利回りが上昇)、国債を発行して市場から資金を調達することが困難になります。
また、スペインの財政も厳しい状況が続いています。スペイン政府はこれまでに歳出削減や増税などの緊縮財政による再建策を打ち出してきたものの、景気後退の影響もあり、税収が当初の予想よりも減少し、財政赤字がなかなか改善していません。というより、むしろ悪くなっています。今年の財政赤字目標額は、GDP比で6.3%以内でしたが、6月末時点ですでに4.3%を超えてしまっており、目標の達成が困難になりつつあります。
そのため、27日に発表される2013年度予算案では、さらに緊縮財政を進めることになります。政府は年金制度の見直しをはじめ、株式取引や温暖化ガス排出への課税、優遇税制の縮小などが検討されている模様です。ただし、これまで以上に負担が増す緊縮財政に対する国民の反対は強く、今週に入って大規模なデモが発生する事態となっており、どこまで緊縮財政に踏み込めるかが焦点となります。
いずれにしても、スペインは「手詰まり」の状態に近づきつつあり、EUに財政支援を要請するのは時間の問題と思われます。スペインが財政支援を要請すれば、先日のECB理事会において合意された「債券買い入れプラン(OTM)」が発動される条件のひとつを満たすことになりますが、一方でより厳しい財政再建や経済構造の改革などを受け入れなければならないという条件もあるため、スペインとしてはできるだけ支援要請はしたくないというのが本音のようです。
市場では支援を要請するタイミングの目安として、早ければ今週末、その後は来週のECB理事会、ユーロ圏財務相会合(10月8日)、EU首脳会議(10月18日~19日)、スペインの地方選挙(10月21日)などが意識されているようですが、10月末に合計291億ユーロのスペイン国債の大量償還が控えているため、10月末までには支援要請をするのではとの見方が多いようです。
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