カワニシホールディングス(2689) 成長と調整
急性期医療に深く関与する大手基幹病院を主要顧客として、医療器材の卸売販売を展開するカワニシホールディングスは、未開拓領域の開拓への注力などを通して着実な増収・増益を中長期的に持続することを計画している。また、未開拓地域の開拓に関しては、新規のアライアンス戦略(同業他社の買収)の実施も視野に入っており、これが同社の成長力を加速させる可能性がある。同社は、新規のアライアンス戦略による効果が発生しないことを前提として、2017年6月期に対して、売上高120,000百万円、営業利益2,000百万円、営業利益率1.67%の達成を示唆している。2014年6月期の実績を起点とした場合、今後3年間に向けて、CAGRで7.3%増収、11.6%増益が見込まれていることになる。これに対して市場の成長率としては、CAGRで3%前後とされていることに鑑みれば、同社は、持続的に市場シェアを引き上げていくことになる。ただし、2015年6月期に向けては、設備・備品(各種の医療機器など)への需要の伸び悩みが2014年6月期に引き続いて発生する方向性にあることなどから、増収・増益率はやや低い水準に留まる見通しである。
2014年6月期は、売上高97,137百万円(前年比1.0%増)、営業利益1,440百万円(7.4%減)、営業利益率1.48%(0.13%ポイント低下)での着地となった。主力の医療器材事業に関しては、売上高81,132百万円(0.4%減)、営業利益1,410百万円(14.2%減)、営業利益率1.74%(0.28%ポイント低下)となり、同社の営業利益(調整額▲116百万円を除く)の90.6%を占めた。手術関連消耗品、整形外科消耗品、循環器消耗品における全般的なトレンドとしては、着実な増収が持続されたものの、設備・備品の売上高がより大きく調整した。結果、同事業セグメントとしても売上高が伸び悩んだ。消費税増税前の駆け込み需要が発生した第3四半期(1-3月)に至る経緯においては、設備・備品の売上高は一定の水準を維持していたものの、第4四半期(4-6月)における駆け込み需要の発生に起因する反動が大きくなった。一方、同社は、医療器材事業に加えて、ライフサイエンス事業、SPD事業、介護用品事業にも関与している。以上の事業セグメントにおいては、総じて損益が向上したのだが、圧倒的な収益源である医療器材事業における減益を補うまでには至らなかった。
2015年6月期に対する会社予想では、売上高101,091 百万円(前年比4.1%増)、営業利益1,537 百万円(6.7%増)、営業利益率1.52%(0.04%ポイント上昇)が見込まれている。また、基本的に同社の業績動向は、主力の医療器材事業の業績動向に沿った推移を示す。設備・備品に関しては、大型案件の一巡などが想定されていることから、売上高が更に調整を続ける見通しである。ただし、手術関連消耗品などの販売数量が2014年4月の薬価改定(材料価格改定)に起因する単価下落を補って余りある程度に拡大することが見込まれており、これが同社の増収に寄与する。同社によれば、既存販売地域における新規顧客開拓においても個々の既存顧客においても未開拓領域が残されており、これを着実に開拓していくことによって一定水準以上の数量増が可能となるとのことである。また、これを東北などの自社の販売拠点がない地域で進めていくことを主目的として計画されているのが新規のアライアンス戦略である。詳細に関しては未だ検討中ではあるものの、現状においても複数の案件が俎上に載せられている模様である。