HEROZ<4382> 企業(BtoB)向けサービスへの本格シフトへの期待が高まる局面
将棋等の頭脳ゲームで技術を蓄積してきた人工知能分野の有力企業
企業(BtoB)向けサービスへの本格シフトへの期待が高まる局面
業種: 情報・通信業
アナリスト: 藤野 敬太
◆ 人工知能(AI)を活用したサービスを個人、企業向けに提供
HEROZ(以下、同社)は、人工知能(以下、AI)を活用したサービスを提供 する企業である。個人(BtoC)向けには、AI を用いた将棋等の頭脳ゲーム のアプリケーション(以下、アプリ)を提供し、企業(BtoB)向けには機械学習 等の AI サービスを提供している。
同社の事業は、AI 関連事業の単一セグメントだが、サービス区分として、AI (BtoC)サービスとAI(BtoB)サービスに分類される(図表1)。17/4期の売上 高の94.1%がAI(BtoC)サービスによるものと推算される。今後AI(BtoB)サ ービスの伸びが全体の成長を牽引するものと考えられる。
◆ AI(BtoC)サービス
同社は、創業来、将棋やバックギャモン、チェスといった頭脳ゲームに AI 技 術を導入することで事業展開してきた。その過程で機械学習注 1 やディープ ラーニング注 2 のイノベーションを経験し、AI 関連の技術を蓄積してきた。
頭脳ゲームに AI を活用したアプリを、Google Inc.が運営する Google Play や Apple Inc.が提供する App Store 等のプラットフォームを通じて提供する のが、同社の BtoC 向けのサービスである。
中でも「将棋ウォーズ」は、同社のエンジニアが開発した将棋AIの「Ponanza (ポナンザ)」を搭載したスマートフォン将棋ゲームアプリで、会員数は世界 最大の420万人を有している。「Ponanza」は、13年に現役のプロ棋士に、17 年に名人に勝利するという実績を持っている。
この「将棋ウォーズ」の収益源はユーザーへの課金である。ただし課金方法 が独特で、ユーザーがオンライン対戦している時に、「Ponanza」がユーザー の代わりに指し手を進めてくれる機能を用いると課金される仕組みとなって いる(アプリ内では「棋神」と呼ばれている)。
「将棋ウォーズ」以外には、「Backgammon Ace」や「CHESS HEROZ」、「ポケ モンコマスター」のアプリを提供している。
◆ AI(BtoB)サービス
BtoC 向けの頭脳ゲームでは、例えば将棋であれば棋譜と呼ばれる指し手 のパターンをインプット情報として AI に学習させることで性能が向上し続け てきた。このインプット情報を棋譜からビジネスデータに置き換え、BtoC向け で蓄積されてきた AI 技術を活用して学習させることで、対象となるビジネス に合った AI を作り上げるというのが、同社の AI(BtoB)サービス事業のコン セプトである。
将棋 AI で培った AI 技術を BtoB 向けに活用できるよう標準化したものが、 「HEROZ Kishin」と呼ばれる社内専用のMLaaS注 3である。「HEROZ Kishin」 は機能別にいくつものエンジンが用意されており、これらのうち必要なエン ジンを用い、顧客の持つ業種特有のデータをインプットして学習させること で、金融 AI や建設 AI といった顧客に特化した AI を作り上げていく。
顧客からは、AI の提供開始時の初期設定フィーと、AI を継続して使用する 際の月次の継続フィーの2種類のフィーを受け取る。継続フィーはストック型 の課金モデルとなるが、AI は機械学習を継続するほど、また、情報量が多 いほど精度が向上するため、顧客が継続して使用するインセンティブが働き やすく、また、フィーが増えていく傾向にある。そのため、継続フィーが積み 上がっていくことにより、収益基盤が安定していく構図になっている。なお、 BtoB 向けの利益率は BtoC 向けよりも高い。
◆ 将棋等のゲームアプリ開発を通じた AI 技術の蓄積が最大の強み
同社の特色及び強みとして、将棋等の頭脳ゲームアプリの開発・運営で培
われ蓄積された AI 技術、社員の約 2/3 を占める AI エンジニアの開発集団 の存在が挙げられる。
さらに、BtoB 向けに関しては、パートナー戦略を採ることにより、他社に切り 替えられにくいポジションが構築できていることも強みとなっている。