フライヤー(323A)法人顧客の開拓と法人向け新規サービスの投入で成長を目指す

2025/02/21

ビジネス書の要約サービスを法人、個人向けに月額課金モデルで提供
法人顧客の開拓と法人向け新規サービスの投入で成長を目指す

業種:情報・通信業
アナリスト:鎌田良彦

◆ ビジネス書の要約サービスを法人、個人向けに提供
フライヤー(以下、同社)は、ビジネス書を対象にその内容を要約した、「本の要約サービスflier(フライヤー)」を法人及び個人向けに、クラウドサービスとして月額課金形態で提供している。PCの他、スマートフォン、タブレット端末で利用できる。

年間6,000冊以上発刊されるビジネス書のうち、毎年400冊程度を厳選し、50名以上の外部専門ライターにより、1冊の内容を約10分で読める要約を作成している。24年11月末の要約数は3,800冊超となっており、そのうち9割以上については音声で聞くことができる。

要約コンテンツは、出版社や著者等の許諾を得て作成しており、要約内容についても確認を受けている。出版社や著者は、同社の要約サービスを宣伝機会、販売機会として捉えており、要約コンテンツの許諾に際して著作権使用料の支払いは発生していない。24年11月末で提携出版社は190社超となっており、ビジネス書を発行している出版社のほぼすべてをカバーしている。

同社の事業は、法人向けのエンタープライズ事業、個人向けのコンシューマ事業の2つのセグメントからなり、本の要約サービスを中心に、その他のサービスの提供を行っている。

24/2期の売上高構成比は、エンタープライズ事業が63.1%、コンシューマ事業が36.8%となっている(図表1)。近年、法人顧客の開拓と機能拡充に注力し、高い成長を遂げていることから、エンタープライズ事業が中核事業となっている。

◆ エンタープライズ事業
エンタープライズ事業では、「本の要約サービスflier」を活用した人材育成サービスである「flier business」を主力サービスとし、その他に施設向け事業、法人向け研修事業を行っている。

1) flier business
flier businessは、本の要約サービスを通じた従業員の自律的学習によりリーダーシップやマネジメント力等のスキルを高め、社内での情報共有による学びの文化形成等を目指した人材育成サービスである。一斉一律の研修とは異なり、社員が興味のある分野や強化したい分野について自発的に取り組むための機会を提供している。本は編集等のプロセスを経て制作されており、学習のための情報源として信頼性が高い。

flier businessには、本の要約サービスを全社的に活用するための各種の機能がある(図表2)。例えば、「学びメモ」機能は、要約で得た学びや気づきを学びメモに書いて社内でシェアすることで、学びの共有やコミュニケーションの活性化を促す仕組みである。その他、社内専用の要約推薦リストを作成する「読書プログラム」や、有識者や同社編集部がお勧めリストを作成する「プレイリス」ト等の機能がある。要約利用者数や要約閲覧ランキング等の確認等ができる「管理者機能」もある。

flier businessの料金体系は、利用者のアカウント数に応じた月額課金となっている。flier businessの契約社数は新規顧客開拓の成果により順調に伸び、25/2期第3四半期末では615社となっている。MRR注1を契約社数で除した1社当たりの月次平均単価であるARPA注2は、従業員数の多い会社の開拓と、導入企業での利用部署・人数の拡大等により増加傾向にあり、25/2期第3四半期では83千円となっている(図表3)。

2) 施設向け事業
施設向け事業では、シェアオフィスや図書館等の施設のWi-Fiにスマートフォンを接続して本の要約を閲覧できるサービスを提供している。

3) 法人向け研修事業
法人向け研修事業では、主にflier businessを利用している企業向けに研修サービスを提供している。研修内容としては、リーダー層向けに本を主題にして他企業の同階層の人たちとともにリーダーシップについて学ぶ「越境マネジメントプログラム」、著者によるセミナー等がある。研修毎に受講料金が異なる。

4) flier成長組織ナビ
「flier成長組織ナビ」は、従業員個々人の成長を促す仕組み作りが、組織や企業の成長につながるとの観点から、従業員に対するサーベイを行い、人材投資の成果をスコア化し、打ち手を見出すためのサービスである。24年5月に提供を開始し、現在はflier businessを導入している企業に対して、データ収集を目的に無償での試験的な提供を行っている段階である。26/2期以降の有償化を計画しており、flier businessの導入前後でのflier成長組織ナビのスコアを測定し、flier business導入の成果を見える化する等、両サービスのクロスセルも想定している。

◆ コンシューマ事業
コンシューマ事業では、「本の要約サービスflier」を中心に、オンライン読書コミュニティの「flier book labo」、「flier book camp」の運営や、YouTubeの「flier公式チャンネル」を通じた広告事業を行っている。

1) 本の要約サービスflier
本の要約サービスflierには、要約が読み放題の税込月額2,200円のゴールドプラン、月5冊まで好きな要約が読める税込月額550円のシルバープラン、20冊程度のサンプルの要約が閲覧できる無償のフリープランがある。

2) flier book labo、flier book camp
flier book laboは、オンライン読書コミュニティで、会員同士の交流のほか、著者等による読書会の開催等を行っている。会費は税込月額5,500円となっている。flier book campは、単独の講座で、料金は講座当たり税込16,500円となっている。

3) flier公式チャンネル
YouTubeのflier公式チャンネルでは、幅広い著名人による本を軸にしたインタビューを動画で提供しており、広告収入を得ている。

◆ 主要販売先
主要販売先として開示されているゼウスはクレジットカード等の決済代行業者であり、Apple Japanは、App Store経由でのスマートフォンアプリの提供に関するものである。いずれもコンシューマ事業に関連する売上高となっている(図表4)。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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