dely(299A)ユーザー顧客基盤に対する企業の成果報酬型販売促進支援で成長を目指す
レシピ動画や買い物サポートアプリ、エンターテインメントのプラットフォームを運営
ユーザー顧客基盤に対する企業の成果報酬型販売促進支援で成長を目指す
業種:サービス業
アナリスト:鎌田良彦
◆ レシピ動画サービスやエンターテインメントのプラットフォームを運営
dely(以下、同社)は、レシピ動画サービスや買い物サポートアプリ等の提供で獲得した消費者からなるユーザー基盤と、消費者に商品やサービスを提供するメーカーや小売企業を結ぶリテールデジタルプラットフォーム、及びエンターテインメント提供プラットフォームからなるプラットフォーム事業を展開している。主な収益は、企業からの広告や販売促進に関する収益と、エンターテインメント事業でのマネジメント収益である。
リテールデジタルプラットフォームのサービスとしては、レシピ動画サービスの「クラシル」、お買い物サポートアプリの「クラシルリワード」、人材紹介サービスの「クラシルジョブ」、ライフスタイル情報メディアの「TRILL(トリル)」があり、エンターテインメント提供プラットフォームとしては、クリエイターマネジメントサービスの「LIVEwith(ライブウィズ)」がある。
◆ クラシル
クラシルはレシピ動画サービスで、24年10月時点で25万件以上のレシピ動画を提供している。レシピ動画は、Webやスマートフォンアプリのほか、SNSのYouTubeやInstagram、X、LINE等を通じて配信される。
動画コンテンツには、社内の管理栄養士が監修した公式レシピの他、ユーザーが作成したレシピ等を15~60秒のショート動画にまとめた「クラシルショート」がある。
クラシルのサービスは会員登録することで、レシピ動画の視聴や検索、気に入ったレシピを「お気に入り」として保存、献立に必要な食材の買い物リスト化等の機能を無料で利用できる。加えて、月額480円のプレミアムサービスに加入すると、「お気に入り」上限数解除やプレミアム会員限定レシピの閲覧等のサービスが利用できる。
クラシルの収益は、プレミアム会員からの会費収入、クラシル上の広告枠をGoogle等のアドネットワーク事業者を通じて企業向けに販売して得られるアドネットワーク収益、食品・飲料関連企業等がブランドや商品認知のために同社と行うタイアップ広告収益、小売店舗からの電子チラシの掲載収益である。
23年10月には「クラシル比較」のサービスをリリースした。これは、クラシルの食に関するコンテンツから派生して、キッチン用品、調理家電、食料品、生活雑貨等幅広いジャンルの商品の選び方やおすすめ商品を紹介する比較サイトである。主な収益は、消費者がサイトで商品を購入した際の成果報酬であるアフィリエイト収益である。
◆ クラシルリワード
お買い物サポートアプリのクラシルリワードは、消費者がプロモーション対象商品やサービスの購入・契約、購入商品レシートのアップロード、小売店舗の電子チラシ閲覧や店舗訪問といった行動をした場合、報酬(リワード)としてコインを獲得できるサービスである。獲得したコインは、他社のポイントやデジタルギフト、電子マネー等に交換できる。サービスはWeb及びスマートフォンアプリで提供している。
クラシルリワードは、22年7月にサービスを開始し、足元でMAU注1が大幅に増加している(図表1)。収益は、消費者が商品やサービスを購入・契約した際のアフィリエイト収益、消費者の購買等に報酬を提供する成果報酬型の販売促進案件を消費関連企業から受託することで得られるマストバイ収益、小売店舗の電子チラシ掲載収益等である。
◆ クラシルジョブ
クラシルジョブは23年11月に開始したサービスで、主に業界未経験の若手の求職者に正社員採用の斡旋を行う人材サービスである。同社の社員が、履歴書の作成から、候補企業の選定や面接の設定等をサポートする。収益は採用が決まった際の求人企業からの成功報酬である。
◆ TRILL
TRILLはライフスタイル情報メディアで、250を超えるコンテンツパートナーと提携して、美容、ファッション、占い、グルメや旅行等、多岐にわたるジャンルのコンテンツを提供している。主な収益は広告枠の販売によるアドネットワーク収益と広告主とのタイアップ広告収益である。
◆ LIVEwith
LIVEwithは、TikTok LIVE、Pococha、IRIAM等のライブ配信プラットフォームでライブ活動を行うライバーの発掘や活動支援等を行うクリエイターマネジメントサービスである。23年2月にENLOOPを買収して、事業を開始した。
ライバーが所属する事務所をパートナーとして指導するケースと、同社が事務所になって直接ライバーの支援を行うケースがある。収益は、ライバーがライブ配信プラットフォームで獲得したリスナーからの投げ銭等の収益であり、この収益の中からパートナーとライバーへの支払いを行う。
◆ 売上内訳と主要販売先
同社はプラットフォーム事業の単一セグメントであるが、売上高をメディア(認知)領域、購買(販促)領域、その他領域に分けて開示している。
メディア(認知)領域の売上高は、クラシル、クラシルリワード、TRILLにおけるアドネットワーク広告収益、タイアップ広告収益、電子チラシ掲載収益、及びクラシルのプレミアム会員の会費収益である。
購買(販促)領域の売上高は、企業から成果報酬として受け取る収益である。主な収益は、クラシルリワード、クラシル比較のアフィリエイト収益、マストバイ収益の他、クラシルジョブの成功報酬が含まれる。
その他領域の売上高は、LIVEwithのライブ配信収益である。
24/3期の売上高構成比は、メディア(認知)領域が74.7%、購買(販促)領域が6.3%、その他領域が19.0%であった(図表2)。直近ではクラシルリワードとLIVEwithの収益寄与により、購買(販促)領域とその他領域の売上高の伸びが大きい。
主要販売先のGoogle Asia Pacific Pte. Ltd向け売上高は、アドネットワーク広告収益とクラシルのスマートフォンアプリの有料会員収益、ディー・エヌ・エー(2432東証プライム)向けの売上高は、ディー・エヌ・エーが運営するライブ配信プラットフォームのPocochaでの売上高、Apple Inc.向けの売上高は、クラシルのスマートフォンアプリの有料会員収益である(図表3)。