インフォメティス(281A)次世代スマートメーター導入に伴い、電力データ活用サービス拡大で成長目指す
家庭の電力使用データをAI技術で分析し、エネルギーの効率利用を促進
次世代スマートメーター導入に伴い、電力データ活用サービス拡大で成長目指す
業種:情報・通信業
アナリスト:鎌田良彦
◆ 家庭の電力使用データをAI技術で分析し効率利用を促進
インフォメティス(以下、同社)グループは、同社と英国子会社Informetis Europe Ltd.、持分法適用関連会社エナジーゲートウェイの3社で構成され、エナジー・インフォマティクス事業を展開している。国内では家庭での電力使用データを独自のAI技術で分析して見える化し省エネルギーと快適生活を実現するスマート・リビングサービス、電力事業者等のエネルギーの運用効率を最適化するエネルギー・マネジメントサービスをSaaS形態で提供し、海外ではInformetis Europe Ltd.が欧州圏で営業及び技術開発を行っている。
同社独自のAI技術は、①電力使用データを機械学習により分析し、家庭の総電力データから「どの家電がいつ、どのくらい使われているか」をリアルタイムに推定する機器分離推定技術と、②今後の電力需要等を予測して需給の最適化を行う数理最適化技術である。
◆ スマート・リビングサービス
国内のスマート・リビングサービスには、大きく分けてスタンダードサービスとライトサービスがある。
1) スタンダードサービス
スタンダードサービスは、電力を使用する住宅に電力センサーを設置し、取得した総電力使用データから、機器分離推定技術により冷蔵庫、エアコン等最大10台の家電毎の1秒単位の電力使用量を推定し、電力の効率的利用を促す電力の見える化サービスや、設備の遠隔制御サービス等を提供するものである。顧客は、賃貸住宅事業者やハウスメーカー、住宅設備商社等であり、電力の最終消費者である家庭に対しては、これらの顧客がサービスを提供している。
スタンダードサービスの販売は、東京電力ホールディングス(9501東証プライム)傘下の送配電会社である東京電力パワーグリッドとの合弁会社であるエナジーゲートウェイ(同社出資比率40.0%)を通じて行っている。エナジーゲートウェイは、東京電力管内だけでなく、全国の顧客への販売を行っている。
スタンダードサービスのアプリとしては、「ienowa(イエノワ)」、「enenowa(エネノワ)」、「hitonowa(ヒトノワ)」がある。ienowa、enenowaは家電による電気の使用や太陽光発電の状況、蓄電池の充放電等の家庭での電力使用の流れを見える化し、電気の使い過ぎを通知したり、Google Home等のスマート家電コントローラーと連携して空調自動制御や消費者による遠隔制御を行うことができる。賃貸住宅事業者やハウスメーカー等は、付加価値の高い住宅を提供することで、電力消費者のサービス利用の対価を、月額賃料や販売時の住宅価格の形で徴収している。
hitonowaは、家庭の電力消費者と賃貸住宅事業者やハウスメーカー等をつなぐ、企業向けの管理システムであり、電力消費者からの問い合わせやお知らせ配信、電力データを活用した提案等に利用している。
2) ライトサービス
ライトサービスは、小売電力事業者等向けのサービスで、住宅に電力センサーを設置せずに、既設の電力スマートメーターからの30分間隔の電力使用データを基に、機器分離推定技術により、最大5台の家電の簡易な電力見える化サービスを、小売電力事業者等の顧客に提供するものである。
ライトサービスでは、24年5月に資本・業務提携先の伊藤忠エネクス(8133東証プライム)の子会社で、個人向けにTERASEL(テラセル)電気の販売を行うエネクスライフサービス向けに、簡易電力使用見える化サービスの「テラりんアイ(AI)」の提供を開始した。24年10月にはコープさっぽろの関連会社であるトドック電力向けに「トドでんAI」の提供を開始した。
ライトサービスにより、小売電力事業者等は、電力利用者に使用状況のデータを提示してサービスの付加価値を高めるとともに、利用者の主要家電毎の電力使用状況を把握することで、後述する電力の需給状況によって顧客に節電要請等をするデマンドレスポンスを行う際のデータとして活用することができる。
◆ エネルギー・マネジメントサービス
国内のエネルギー・マネジメントシステムの主要サービスとしては、小売電気事業者向けのクラウド型デマンドレスポンス支援サービス「BridgeLAB DR(ブリッジラボ ディーアール)がある。デマンドレスポンスは、電力需給の逼迫が予想される際に、電力消費者に電力消費の抑制を要請し、抑制実績に基づいて電気料金の割引やポイント付与等のインセンティブを与えるものである。BridgeLAB DRは、電力消費者への需要調整の要請、電力消費者の対応の確認、抑制量の集計等を大きなシステム改修投資なしに実現できるサービスである。
◆ 海外
英国を中心に欧州圏でガスボイラー(ガス給湯器)からヒートポンプ(電気給湯器)へのシフトが進む中で、電気消費の急激な増加による電力系統・電力網への影響を管理する必要性が高まっている。21年10月から同社の電力センサーが、ダイキン工業(6367東証プライム)の欧州子会社であるDaikin Europe N.V.が英国に設置するヒートポンプの付帯設備として導入され、電力系統・電力網と消費者の電力料金負担の双方にメリットをもたらす最適化制御を提供している。
◆ 売上内訳と主要販売先
同社は、エナジー・インフォマティクス事業の単一セグメントであるが、売上高をアップフロント、プラットフォーム・アプリ提供、その他に分けて開示している。
アップフロントは、電力センサーの機器販売代金や、プラットフォーム上の各種サービスやアプリの初期設定費用等であり、フロー型収益である。プラットフォーム・アプリ提供は、プラットフォーム上の各種サービス及びアプリの利用料金や運用保守料金等であり、ストック型の収益である。その他は、顧客毎のシステムの受託開発料金やサービス開発のための実証実験料金等であり、殆どがフロー型収益である。
23/12期の売上構成比は、アップフロントが41.0%、プラットフォーム・アプリ提供が31.7%、その他が27.2%であった(図表1)。同期の海外の売上構成比は3.6%であった。
同社の主要販売先は、国内の電力消費者向けサービスの総販売代理店であるエナジーゲートウェイであり、23/12期には売上高の79.9%を占めた。エナジーゲートウェイの販売先は、東京電力パワーグリッド、大和ハウス工業(1925東証プライム)傘下で賃貸住宅の管理・運営を行う大和リビングを含む5社向けが売上高の8割程度を占める。