ROXX(241A)求職者、求人企業、人材紹介会社にメリットをもたらすビジネスモデル

2024/09/27

ノンデスクワーカー向け転職プラットフォーム「Zキャリア」を運営
求職者、求人企業、人材紹介会社にメリットをもたらすビジネスモデル

業種:情報・通信業
アナリスト:髙木伸行

◆ ノンデスクワーカー向け転職プラットフォームを運営
ROXX(以下、同社)は、正社員になりたいと考えるノンデスクワーカー注1、未経験人材を積極的に採用する求人企業、それらのマッチングを行う人材紹介会社が利用する転職プラットフォーム「Zキャリア」を運営している。テクノロジーを活用することでノンデスクワーカーの正社員化を推進し、低年収層の所得向上を目指すHR Tech注2カンパニーである。ちなみに同社の社名は米国のロックバンドであるエアロスミスの代表的アルバム「Rocks」及びモトリー・クルーのベーシスト「Nikki Sixx」に由来している。

同社が提供するサービスはノンデスクワーカー向け転職プラットフォームであるZキャリアを提供する「Zキャリアサービス」とオンライン完結型のリファレンス/コンプライアンスチェックサービスである「back checkサービス」である(図表1)。23/9期の売上構成比はZキャリアサービスが79.2%、back checkサービスが20.8%であった。

◆ Zキャリアサービス
Zキャリア(旧agent bank注3)はノンデスクワーカーに特化した転職プラットフォームで24年7月末時点の累計登録会員数(求職者)は36万人、掲載求人数は約8.2万人となっている。Zキャリアの登録会員は主に30歳以下、年収400万円未満、非正規雇用が多く、ノンデスクワーカーの非正規雇用から正規雇用への就職活動支援を主なサービスとしている。

日本の給与所得者の5割強は年収400万円以下注4であるにも関わらず、この年収ゾーンを対象とした人材紹介サービスは少ない。一方で求職者の年収が高いほど報酬単価が上がることから、年収が高い求職者向けの人材紹介サービスが主流を占めている現状について同社は矛盾を感じている。この構造的な問題に対処することを事業目的とし、同社のサービスは労働力・人材不足が極めて深刻な状況にある、製造、建設、物流、介護、飲食、サービスといった領域における人材紹介サービスが不足していることに応えるものとなっている。

Zキャリアの求職者の属性は年収400万円未満が94%、300万円未満に限っても73%と日本全体の400万円以下の給与所得者の占める割合である5割強に比べ、圧倒的に低い所得層の割合が大きい。学歴についても高卒以下が71%を占め、正規雇用のハードルが高い層が多い(図表2)。また、PCを保有せず、情報端末はスマートフォンのみという求職者が多く、履歴書の作成などが円滑に行えないような求職者セグメントへの対応が進んだプラットフォームとなっている。

Zキャリアは、プラットフォームとしての利便性の高さなどにより求人企業、求職者、外部の人材紹介会社(以下、パートナー紹介会社)といったプラットフォームの利用者(図表3)に対して、メリットの大きいビジネスモデルとなっている。

(1)求人企業のメリット
1)掲載料無料+任意に報酬額が決定できる成功報酬型費用
求人企業は無料でZキャリアに求人情報を掲載することができ、求職者が入社した場合にのみ費用が発生する成功報酬型となっている。成果報酬額は、人材採用の緊急性や必要性の度合い、採用予算に合わせて求人毎に求人企業が設定できる仕組みとなっている。

2)約400社のパートナー紹介会社を通じて求職者の集客が可能
求人企業はZキャリアを通じ求人情報を全国のパートナー紹介会社に公開することで、パートナー紹介会社からもノンデスクワーカーの紹介を受けることが可能となる。求人企業にとっては、各パートナー紹介会社と個別に契約する手間なく、Zキャリアに求人掲載をするだけで、約400社(24年7月末時点)のパートナー紹介会社から紹介を受けることができ、多人数の採用が容易となるうえ、採用の確度が高まることにもなる。

3)AI面接やAIスカウトで採用負担を軽減
多数の面接に忙殺される求人企業の採用・人事担当者に対して、ZキャリアではAI面接や求人情報を求職者に効率的に届けるAIスカウトといった業務を自動化する機能を提供している。

AI面接では求職者はスマートフォンで場所や時間の制約を受けずにAIとの面接を受けることができ、求人企業はAI面接での質問に対する回答内容や話し方といった動画内容を確認することで、選考プロセスの短縮化・簡素化を実現することが可能となっている。

(2)求職者にとってのメリット
Zキャリアはノンデスクワーカー領域に特化しながら、未経験者を採用する求人情報を取り揃えることで、正社員就業経験がない求職者でも正社員になれる機会を提供している。Zキャリアに登録する求職者は年収400万円未満や非正規雇用の求職者が多く、これらの求職者のニーズを満足できるプラットフォームとなっている。

Zキャリアでは、経験を活かしたキャリア形成を目指す転職とは異なり、「将来や生活の不安から専門性を身に付けたい」、「非正規で給与が上がらないから正社員として働きたい」、「土日休みに変えたい」など、業界や職種を問わず職を探している求職者に対して、有用な求人情報が多い点も魅力となっている。

(3)パートナー紹介会社にとってのメリット
パートナー紹介会社はZキャリアを活用することで約8.2万人の求人を求職者に紹介でき、採用が決定した際には成果報酬を得ることができる。また、小規模なパートナー紹介会社では直接取引を行うことが難しいような大手企業に対してもプラットフォーを通じて人材を紹介できるようになる点も魅力である。豊富な求人情報の中から求職者に提案できるようになり、それに伴い成約率の向上を見込むことが可能になる。

また、Zキャリアには18年1月以降の選考データや採用決定実績が全て蓄積されており、求人情報ごとにどのような求職者が内定を獲得できる可能性が高いのかを確認することができる。大量の事例を以て初めて獲得できるようなデータをパートナー会社は利用することができ、内定率の向上を図ることが可能となっている。

Zキャリアでは約400社のパートナー紹介会社の支援を通して蓄積した人材紹介事業のノウハウをパートナー紹介会社に提供している。パートナー紹介会社は、求職者の集客、キャリアアドバイス、経営面などに関するコンサルティングを受けることが可能になる。

◆ Zキャリアサービスの収益形態
Zキャリアサービスの収益は求人企業からの成果報酬だけではなく、パートナー紹介会社から受け取る月額利用料も含まれる(図表4)。Zキャリアサービス売上高における成果報酬などからなるパフォーマンス収入とパートナー紹介会社から受け取るプラットフォーム利用料であるリカーリング収入の23/9期の構成比は各々54%、46%と、若干パフォーマンス収入が上回っている。

◆ back checkサービス
back checkサービスとして、同社はオンライン完結型のリファレンス/コンプライアンスチェックサービスをSaaS注5形態で提供している。リファレンスチェックとは、求人企業が求職者と一緒に働いたことがある上司や同僚等から評価を取得し採用活動の参考とすることを指す。なお、back checkでは付随して犯罪歴や経歴詐称といったコンプライアンスリスクがないかをチェックすることも可能である。

リファレンスチェックはback check上で求人企業が質問事項を設定し、前職の上司・同僚等に求職者の評価について回答を依頼することで行っている。コンプライアンスチェックは外部と連携しているデータベースへの照会やWEB上の情報等の調査を行っている。

back checkサービスの対価としては、求人企業から月額利用料を受け取っており、リカーリング収入に分類される。リファレンスチェック数・コンプライアンスチェック数・機能等に応じて複数の料金プランがある。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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