グリーンモンスター(157A) 新NISA等の投資促進の追い風を享受できるポジションにあることを評価
投資初心者/未経験者向けの体験型投資学習アプリの提供が主力
新NISA等の投資促進の追い風を享受できるポジションにあることを評価
業種:サービス業
アナリスト:藤野敬太
◆ 投資未経験者や初心者向けに体験型投資学習アプリを提供
グリーンモンスター(以下、同社)は、初心者向けに体験型投資学習アプリを提供している。同社の体験型投資学習アプリは、株式投資やFX、資産形成の分野について、ゲーム感覚のデモトレードやシミュレーションを通じて疑似体験できる内容になっており、メインターゲットである投資の未経験者もしくは初心者に受け入れられやすくなっている点が最大の特徴である。また、自社アプリを顧客企業のためにカスタマイズしてOEM提供するサービスも行っており、投資学習と金融教育のオープン化を目指している。
同社は投資学習支援事業の単一セグメントだが、売上高は、サービス別に、体験型投資学習アプリ、広告代理業、ファイナンシャルプランニングサービスに区分されている(図表1)。22年12月にFPコンサルティング等を買収したため、23/6期より連結業績の開示が始まり、「ファイナンシャルプランニングサービス」のサービス区分が追加されたが、収益の大半が体験型投資学習アプリによるものである。
◆ 体験型投資学習アプリ
同社の体験型投資学習アプリは、投資未経験者や初心者(以下、ユーザー)が対象で、ユーザーが投資に踏み込めない理由となっている知識不足や心理的不安といったハードルを取り除くことで、投資を始めることを後押しするものとなっている。現在は、分野別に、FX分野の「FXなび」、株式投資分野の「株たす」、資産運用分野の「トウシカ」の3つが主力アプリとして運営されている(図表2)。他にも「暗号資産なび」等があり、23年末時点でシリーズ全体では累計700万ダウンロードを超えている。内訳の開示はないが、「FXなび」が最も多いと推察される。
ユーザーの属性としては、投資経験の有無では、「投資経験なし」が79.6%、「投資経験あり」が20.4%となっている。男女別では「男性」が67.2%、「女性」が32.8%、年齢別では「30代まで」46.7%、「40代」29.6%、「50代以上」23.6%(いずれも23年12月にダウンロードしたユーザーが対象)であり、投資経験のない比較的若い世代のユーザーに利用されている。
◆ 体験型投資学習アプリの収益モデル
動画広告や検索によって流入してくるユーザーに対して、アプリは無料で提供されている。そして、アプリで疑似体験や学習をした後に実際に取引をしようとするユーザーは、アプリ経由で証券またはFXの口座を開設する。
証券会社やFX会社にとって、同社のアプリは、複数ある口座獲得チャネルのひとつだが、同社のアプリ経由で口座を開設したユーザーは、「より学んでいる顧客=投資に積極的な顧客」となるため、証券会社やFX会社にとっては長く取引を続けてくれそうな顧客を獲得できるチャネルという位置づけとなっている。
同社アプリを経由して口座開設がなされた場合、アフィリエイト・サービス・プロバイダー経由で証券会社やFX会社から成功報酬を得る。成功報酬は口座開設時の1回限りであり、体験型投資学習アプリからの収益はこれがすべてで、完全にフロー型収益となる。
以前はLINE証券への送客が多く、LINE証券からの収益が大きな割合を占めていたが、LINE証券の事業再編のためにLINE証券からの収益が失われた。一方、23/6期以降LINE証券以外への送客が顕著に増加し、LINE証券以外からの収益は増加傾向にある(図表3)。
売上高は「投資デビュー支援数×平均報酬単価」となるが、送客1件当たりの報酬は顧客である証券会社やFX会社ごとに設定され、かつ同じ先でも口座開設への注力度合いやマーケティングの施策の有無により時期によって変動する。このため、以前は四半期ごとの変動が大きかったが、23/6期以降、平均報酬単価は25,000~26,000円前後の比較的小さい変動幅で推移している(図表4)。
一方、費用面で最も重要なのは、原価に計上される広告運用費である。売上高広告運用費率が低いほど、かけた広告運用費が効率的に売上高につながっていることを示している。24/6期第1四半期52.5%、同第2四半期49.5%と低下しており、24/6期になって広告運用費の効率が上がっている状況がうかがえる(図表5)。