ヒューマンテクノロジーズ(5621)KING OF TIMEの機能拡張・拡販と付加価値サービスの提供で成長を目指す
クラウド勤怠管理システムKING OF TIMEをSaaS形態で提供
KING OF TIMEの機能拡張・拡販と付加価値サービスの提供で成長を目指す
業種:情報・通信業
アナリスト:鎌田良彦
◆ クラウド勤怠管理システムKING OF TIMEをSaaS形態で提供
ヒューマンテクノロジーズ(以下、同社)グループは、同社と子会社4社からなり、クラウド勤怠管理システムKING OF TIME(以下、KOT)の開発及びSaaS注1形態での提供を行っている。子会社である国内のITエージェントとシンガポールのHuman Technologies Singapore PTE. LTD.は、同社システムの開発業務を受託しており、タイのHuman Technologies (Thailand) Co., Ltd.はタイを中心とする東南アジアで日系企業向けにKOTを販売している。スリランカのHuman Technologies Lanka (Pvt) Ltd.は同国の経済危機を受け、休眠会社となっている。
同社グループの事業は、勤怠管理SaaS事業の単一セグメントであるが、売上高をKOTの利用料であるKOT SaaSサービスと勤怠記録を行う打刻端末の販売やKOTの有償プレミアムサービス等からなるその他に分けて開示している(図表1)。23/3期の売上高構成比はKOT SaaSサービスが87.5%、その他が12.5%となっており、KOTの利用料が9割近くを占めている。
23/3期の連結売上高は単体売上高の1.02倍と乖離は小さく、単体の国内事業が太宗を占めるため、同社では単体ベースのKOT関連指標を経営指標として重視し、開示している。単体ベースの23年9月までの1年間で打刻履歴のあるKOT利用社数は51,206社、利用ID数は306.9万IDであった。また、9月に課金対象となったID数は223.4万IDとなっている。
課金IDベースでの利用企業の分布を従業員規模別に見ると、100名未満の企業が35.4%、100名以上500名未満の企業が38.1%、500名以上の企業が26.4%となっており、中堅・中小企業の比率が高い。
KOT関連指標の推移を見ると、19/3期末から24/3期第2四半期末にかけて利用社数は16,233社から51,206社に、利用ID数は123.1万IDから306.9万IDに、課金ID数は86.6万IDから223.4万IDにそれぞれ増加した(図表2)。19年4月の「働き方改革関連法」の施行により厳格な勤怠管理が求められ、新型コロナウイルスの感染拡大を契機にリモートワーク等の多様な働き方への対応が必要とされたこと等により、勤怠管理システムの需要は拡大してきた。
◆ KOTの特徴と機能
KOTはカスタマイズや初期費用なしに、1ID当たり月額300円で利用できる。この月額料金の中で勤怠管理機能に加え、PCによる出退勤ログの自動取得、勤怠・生産性分析を行うデータ分析、人事管理やWEB給与明細を作成する人事労務、給与計算・年末調整等の給与計算に関する様々な機能を利用することができる(図表3)。
① 勤怠管理
勤怠データを入力する打刻方法は、顔認証や静脈認証等の生体認証やICカード、スマートフォン等、働き方や業務形態に応じて最適な方法を選択できる。勤怠管理ではスケジュール・シフト管理、残業・休暇等の申請と承認のワークフロー作成等が行える。
② システムログ
Windows PCによるログイン、ログアウト情報に基づいて出退勤ログの自動取得を行うことができる。
③ データ分析
全従業員の時間外労働時間の把握とグラフ化、時間外労働時間の前年比較や部署別集計等の分析ができる。また、36協定注2基準や改正労働基準法基準等、法令に準拠した時間外時間の把握等が行える。
④ 人事労務
勤退管理の対象となる従業員について、従業員情報の入力・管理を行うことができる。外部の給与計算ソフトから情報を取り込んで、WEB給与明細を作成することができる。
⑤ 給与
給与計算式の設定を行い、勤怠管理、人事労務のデータと連携することで、給与計算を行うことができる。
この他、他社の給与計算ソフトウェアや労務管理ソフトウェア等とAPI注3連携やCSV注4ファイルで連携することができる。
◆ 販売チャネル
KOTの販売チャネルは、直販、販売店、OEMの3つがある。23年9月の課金IDベースの販売チャネル別シェアは、直販が35.0%、販売店が21.4%、OEMが43.6%となっている。
販売店としては、KDDI(9433東証プライム)、NTTドコモ(東京都千代田区)、ソフトバンク(9434東証プライム)等があり、OEM提供先としては、東日本電信電話(東京都新宿区)、西日本電信電話(大阪市都島区)等がある。各販売チャネルとも最終顧客向けには1ID当たり月額300円の料金で提供している。OEM提供先はサポート業務もおこなっているため、同社からのKOTの卸値は販売店に比べて低くなっている。