ブルーイノベーション(5597)先行投資による損失が続き、黒字化のタイミングが当面の焦点

2023/12/18

ドローン及びロボットの統合制御プラットフォームを通じて各種ソリューションを提供
先行投資による損失が続き、黒字化のタイミングが当面の焦点

業種:情報・通信業
アナリスト:藤野敬太

◆ ドローン及びロボットを統合管理するプラットフォームを基軸とした各種ソリューションを提供
ブルーイノベーション(以下、同社)は、ドローン等の自律移動ロボットを遠隔で制御し、統合管理するソフトウェアプラットフォーム「Blue Earth Platform(以下、BEP)」を基軸に、各種ソリューションを提供している。

同社は1999年に、現代表取締役社長の熊田貴之氏の父により、日本企業の工場の中国進出をサポートするために設立された。その後、01年に入社した熊田貴之氏が海岸防災コンサルティングサービス事業を開始した。その事業を進めるにあたり、ドローンを活用した災害直後の空中写真を撮影するモニタリングシステムを東京大学と共同開発したのを機に、ドローンにおける知見を蓄積していった。18年にBEPを発表して以降は、BEPをベースに主に自律型社会インフラを支えるためのソリューションを提供してきた。

同社はドローン関連事業の単一セグメントだが、売上高は、ソリューション別に、点検ソリューション、教育ソリューション、物流ソリューション、ネクストソリューションに区分されている。期によって変動するが、22/12期では、点検ソリューションが約36%、教育ソリューションが約27%、物流ソリューションが約28%、ネクストソリューションが約10%という売上構成比となっている(図表1)。

◆ BEP(Blue Earth Platform)
一般的なドローンはGPS(全地球測位システム)を利用して現在地を確認して飛行する。上空のGPS衛星から発信される電波の受信が前提となっているが、橋梁下等の構造物の影や屋内といったように、GPSの信号が届かず、一般のドローンでは自動飛行ができない場所が存在する。このような非GPS環境における飛行のために、複数のセンサを組み合わせて自己位置を推定するセンサフュージョン(位置情報算出)や、障害物を自動回避して最適ルートを選定するセルフナビゲーション(自動ルート設定)の技術が必要となる。

同社は、センサフュージョンとセルフナビゲーションを総称したマルチセンサポジショニングの技術に強みを有しており、同社のセンサモジュールをドローンに搭載して同社のサーバー・アプリと連動させることにより、非GPS環境における遠隔での飛行制御を可能としている。

これらの一連のシステムは、センサモジュール、ソフトウェア、ハードウェア(デバイスまたは機体)で構成される。このうち、センサモジュール、ソフトウェアを統合して提供するのがBEPである。なお、同社はハードウェア(デバイス)を製造しないことから、どのハードウェアにも対応でき、このことも同社のサービスの強みとなっている。

同社は、このBEPをベースに、顧客が持つ課題に対する解決策をソリューションとしてパッケージ化し、顧客に提供している。

◆ 4つのソリューション
同社が提供するソリューションは4つに区分されているが、収益モデルとしては、点検ソリューション、物流ソリューション、ネクストソリューションの3つが比較的類似している。

点検ソリューションは、石油化学や製鉄所、電力プラントを主な対象としたサービスである。プラント施設の点検を提供する「BEPインスペクション」、送電線点検を提供する「BEPライン」、プラントや工場等の巡回点検を提供する「BEPサーベイランス」がある。中でも「BEPインスペクション」は、石油化学プラント、製鉄所、水力・火力発電所、ゴミ処理場等の施設を中心に、現在まで250以上の現場で導入されている。

物流ソリューションは、16年に国土交通省との共同開発を端緒として提供されるようになったサービスである。ドローンが離発着陸するドローンポート「BEPポート」を軸としたサービスであるが、現在は、国土交通省や地方自治体、物流サービス業者に対する「BEPポート」の開発と導入実証実験を行っている。

ネクストソリューションは、文字通り、新規ソリューションの開発を行っている。現在は、米国のiRobotとの提携で、複数フロアのオフィスやホテル等の清掃を行うルンバ等を群制御する清掃サービス「BEPクリーン」の実証サービスを提供している。

他の3つとは性格が異なる教育ソリューションは、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)と連携した、ドローンの産業活用に向けたパイロット育成やそれに関連する各種サービスである。JUIDAは、ドローンの操縦技能証明証や安全運航管理者証明証の発行を行う国内有数のドローンコンソーシアムであり、JUIDA認定のドローンスクールは275校にのぼっている。同社は14年7月のJUIDA設立時から関わっており、事務局運営を受託している。教育ソリューションでは、基礎教育「BEPベーシック」、応用教育、ドローン専用飛行支援地図サービス「SORAPASS」を提供している。

◆ 収益モデル
点検ソリューション、物流ソリューション、ネクストソリューションは、ドローンやロボットのハードウェアにBEPを接続し、ハードウェアを含めたパッケージとして顧客に価値提供をしている。顧客からは、ハードウェア(一括購入ならフロー型売上、リース契約ならストック型売上)、ソフトウェア(月額利用料のストック型売上)、運用サービス(フロー型売上)への対価を得ている。

教育ソリューションは、BEPによるパイロット管理システム及びその運営サービスをJUIDA等の法人に提供している。両方とも月額利用料を受け取るストック型売上である。

これらを踏まえると、同社の売上高は、収益形態別に、以下の3つに分類することができる。

(1)BEP利用のためのライセンス料によるソフトウェア売上高
(2)人的な運用サービスに関するサービス売上高
(3)ハードウェアの販売やリース、保守からなるハードウェア売上高

現在はサービス売上高が中心であるが、関わる案件が増えていくにつれ、ストック型売上に分類されるソフトウェア売上高の売上構成比が年々上昇している(図表2)。

なお、22/12期における収益形態別の売上総利益率は、ソフトウェア売上高67%、サービス売上高45%、ハードウェア売上高15%となっている。このことから、ストック型収益であるソフトウェア売上高の売上構成比の上昇が、全体の売上総利益率を引き上げる要因となっている。

◆ 顧客
同社の顧客は、同社が提供するソリューションの関係上、インフラ運営企業が多い。そして、BEPというプラットフォームがソリューションのベースとなっている関係上、同社の事業成長においては、継続的にBEPを利用するユーザー数の増加が欠かせない。23年9月末におけるBEPユーザー数は120社、97,591人まで増加している(図表4)。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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