全保連(5845)不動産管理会社や不動産仲介会社との強固なネットワークを構築

2023/10/27

家賃債務保証サービスを提供する大手企業
不動産管理会社や不動産仲介会社との強固なネットワークを構築

業種:その他金融業
アナリスト:髙木伸行

◆ 賃貸人に対して家賃の支払いを保証
全保連(以下、同社)は、賃貸人に対して家賃の支払いを保証する家賃債務保証サービスを提供している(図表1)。賃借人が賃借料を支払わない場合、賃借人に代わって同社が代位弁済注1し、後に賃借人から代位弁済した賃料を回収する。同社は家賃債務保証サービスの対価として、賃借人から保証委託料を受け取っている。

家賃債務保証サービスは賃貸借契約において入居者の連帯保証人の役割を果たすサービスでもある。賃貸住宅の賃貸借契約においては連帯保証人が必要となるが、連帯保証人が見つからない、あるいは知人に頼みたくないという入居希望者が増加しており、家賃債務保証サービスへの需要は増加している。

家賃債務保証サービスの対象物件は、住居用、事業用(店舗・事務所)、駐車場、倉庫・トランクルームがある。

同社の事業ウエイトの大きい住居用家賃債務保証を例にとると、不動産管理会社や不動産仲介会社など(以下、協定会社)を通じて入居希望者から申し込みを受け、同社は入居希望者の審査を行い、契約可能かを判断する。契約可能と判断した場合、基本プランの例では入居者から家賃の0.5カ月分の初回保証委託料(最低初回保証委託料2万円)を受け取り、賃料債務24カ月分を上限に保証を引き受ける。1年ごとの更新では継続保証委託料約1万円を入居者から受け取り継続して保証を行なっている。

また、同社が成長分野として注力している店舗・事務所といった事業用の家賃債務保証については、保証限度額を6カ月分とし、初回保証委託料は家賃の1カ月分、継続保証委託料(年間)として家賃の0.1カ月分(上限なし、下限1万円)を受け取り保証している。

◆ その他のサービス
同社は、上述した基本サービスに加えて、協定会社や賃貸人からの信頼確保や利便性を高めることにつながるサービスを提供している。信託口座を活用した賃貸人の賃貸料滞納リスクを解消する仕組みである概算払方式、家賃債務保証と火災保険などの契約を同時に行えるサービスであるZ-value、API連携による申込から契約書の作成、契約管理を行える協定会社用のオンラインシステムであるZ-WEBを提供している。また、孤独死などの賃貸人事故対応費用保険といったオプションをつけてパッケージ化して提供している。

以上の他、新領域への展開として、23年6月より販売を開始した学費保証が挙げられる。専修学校の学費保証は他社が進出していない領域で、社会的意義もあり、同社のノウハウが活用できる領域として、注力してゆく考えである。

(1) 概算払方式
概算払方式は、15年4月から開始されたサービスだが、08年の大手債務保証会社の破綻を機に、長い期間をかけて同社が独自開発したスキームであり、大手金融機関2行からの与信を活用している点が他社の類似したサービスとの差別化点となっている(図表2)。

概算払とは後で精算する条件でおよその見積額を支払うことであり、毎月の家賃は振替指定日に賃貸人・指定会社の口座に入金される。23/3期の概算払方式の導入割合は約6割となっている。債務保証サービス業界には支払委託型と呼ばれる保証の仕組みがあるが、同社のスキームは信託口座を活用し、収納代行会社が賃借料の支払日に立替えて支払うことで賃借料滞納リスクを軽減することを可能にしている。

(2) Z-value
賃借人の入居時に家賃債務保証と火災保険などの契約を同時に行うサービスで、損害保険会社とともに開発し、電子契約システムや保険会社とのシステムとAPI連携を実現している。21年8月から提供を開始しており、23年7月時点での累計契約数は7,822件となっている。

(3) Z-WEB
同社は21年に基幹システムを刷新し、申込・契約をWeb上で完結し、ペーパーレス化するなど、不動産業界のDX化に対応可能なシステム基盤を構築してきた。直近3期の累計で約53億円をシステムに投資しており、同じく5期間では同社のDX人員は14名から24名に増加している。API連携による電子申込は23年7月時点で月間6,073件、申込全体の約19%を占めた。

◆ 業界最大規模の協定会社ネットワーク
同社は協定会社を介して家賃債務保証サービスを提供している。賃借人と契約を結ぶものの、家賃債務保証会社を選ぶのは協定会社になる。オーナーの賃貸目的などに合致した保証内容が提供されているか否か、審査の迅速さや正確さ、保証会社の信用力などが家賃債務保証会社選定の基準となる。

提携する協定会社とその拠点の多さが、顧客の獲得数に影響する。同社は主要都市に19拠点を配して、協定会社向けに営業活動を行っている。現在は、業界最大規模の約41,000社、約5万拠点の協定会社ネットワークを構築している(図表3)。

◆ 売上・費用構造
同社は協定会社を通じて入居希望者から申し込みを受け、初回保証委託料及び更新時には継続保証委託料を受け取り入居者の賃料債務を保証している。初回保証委託料や継続保証委託料は、受け取った時点で全額を売上に計上するのではなく、契約期間に亘って按分計上される。また、時間の経過とともに、後述するストック型収益が累増してゆくことから、業績の見通しが立て易いという特徴がある。

家賃債務保証サービスの保証料収入は、「新規保証契約件数×初回保証委託料+既存顧客数×継続保証委託料」に分解され、フロー型収益(新規保証契約件数×初回保証委託料)とストック型収益(既存顧客数×継続保証委託料)から構成されている。同社は年次あるいは月次で受け取る継続保証委託料に加えて、保証事務手数料、口座振替手数料をストック型収益としており、23/3期のストック型収益は44.8%を占めた(図表4)。

費用に目を向けると、売上原価に占める割合が高いのは、賃貸借保証契約を賃借人と結ぶ際に協定会社が行う事務手続きに対しての事務手数料である。その他は、賃借人が家賃を滞納した際に関係する、貸倒引当金繰入額、保証履行損失引当金繰入額、債権処分損などのいわゆる信用コストがある。また、販売費及び一般管理費(以下、販管費)のなかの一般管理費は費用の中で大きな部分を占めている。直近3期累計で費用計上される部分も含めて約53億円のシステム投資を行っており、減価償却費負担が大きくなっている。

23/3期末の自己資本比率は7.1%と低い。将来、売上として計上される前受金が負債純資産合計の51.9%を占めていることから、自己資本比率を低く見せる要因となっているためであり、財務の安定性は見かけほどは低くない。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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