JRC(6224) コンベヤ部品事業の海外展開とロボットSI事業の拡大で成長を目指す

2023/08/17

安定収益源であるコンベヤ部品事業と新規事業であるロボットSI事業を展開
コンベヤ部品事業の海外展開とロボットSI事業の拡大で成長を目指す

業種:機械
アナリスト:髙木伸行

◆ コンベヤ事業とロボットSI事業を展開
JRC(以下、同社)グループは、屋外用ベルトコンベヤ部品の製造・販売とコンベヤの課題解決ソリューションを提供する「コンベヤ事業」を主力事業としている。また、工場などに対してロボットの導入をサポートする「ロボットSI事業」に注力している。連結子会社には、コンベヤ事業に属するJRC C&M(兵庫県小野市)と大成(福岡県北九州市)がある。

同社の前身である浜口商店が創業した1961年以来、コンベヤ部品の製造販売を行っている。コンベヤ事業は23/2期の売上高の94.4%を占めており、セグメント利益率は14.9%と高い(図表1)。ロボットSI事業はALFISというブランドで18年より展開している。成長分野として注力しており、23/2期の売上高の5.6%を占めたが、12百万円のセグメント損失を計上した。

◆ コンベヤ事業(コンベヤ部品事業)
同社グループのコンベヤ事業では、コンベアの部品である、ローラ、プーリ、スタンド、アイドラ、ベルトクリーナーなどの設計・製造・販売を行っている。同社グループの主要製品はコンベヤのベルトを引っ張り、駆動させるプーリ、ゴムベルトを支えるアイドラである(図表2)。

コンベヤには屋内用と屋外用があるが、屋外用のコンベヤ部品を事業領域としている。屋外用のベルトコンベヤは、長いものでは20kmを超えるものもあるなど、大規模かつ厳しい環境で使用され、製鉄所、建設・工事現場、セメント工場、鉱山、発電所などにおける長距離・重量物搬送に使用されている。

同社のコンベヤ事業の特徴としては、(1)強い事業基盤、(2)ソリューション提供による高付加価値化といった点が挙げられる

(1)強い事業基盤
同社グループはコンベヤ部品業界で高いシェアを確保している。同社の推計によれば、21年度において、国内コンベヤ部品製造企業10社の中では約52%のシェアを占めているとしている。多業種に亘る多様なエンドユーザーを持ち、23/2期末点での累計エンドユーザー数は約13,000社となり、5期前の1.28倍となっている。

高い価格交渉力を有しており、材料費が上昇傾向にあるなか、価格に転嫁できている点も注目に値する(図表3)。また、コンベヤ事業の受注額(単体ベース)のうち、23/2期における更新・リプレイスの比率は86%を占めている。このため、安定的に収益を確保できる状況にある。

生産面においては、いち早く、1989年に本社工場(兵庫県南あわじ市)に自社開発したローラ自動組立ラインを導入したのをきっかけに、均一な品質で製造できる体制が整っている。自動組立ライン導入前は人手で組立ていたが、自動化により回転精度や振れが小さいコンベヤ部品の製造が可能となった。また、製品の材料は同社グループの要求をクリアする品質の国内メーカー品を使用しており、品質管理は徹底している。

現在、本社工場の他に北海道工場(旭川市)、北関東工場(埼玉県児玉郡)、九州工場(鹿児島県姶良郡)がある。生産拠点は地理的に分散され、全国対応が可能な体制となっている。

ちなみに自動化ライン導入をきっかけに自動化ノウハウを蓄積してきたことが、その後のロボットSI事業の展開につながっている。

販売面においては、営業所8拠点(大阪市、札幌市、仙台市、埼玉県本庄市、横浜市、名古屋市、岡山市、北九州市)、物流センター2拠点(埼玉県本庄市、兵庫県小野市)を持ち、顧客に近い場所での営業や即納体制を確保できている。また、長年の取引を通じて築き上げた約3,300社からなる代理店網を持ち、販売活動を展開している。

(2)ソリューション提供による高付加価値化
同社グループは長年蓄積してきたコンベヤに関するノウハウを活かして、コンベヤの停止ロスの軽減に資するコンベヤ部品や周辺機器の導入を含む提案を行い、それまでの代理店中心の販売から、顧客の生産性を改善するためのソリューションを同社自ら提供する営業活動を15/2期より行っている。

代理店と同行、あるいは同社グループでエンドユーザーの現場を訪問し、実態や潜在ニーズを把握し、課題を解決する機能品を開発・提案することにより現場の生産性改善につなげている。

現状ではソリューション営業を行えている先は全エンドユーザーの1~2割程度、23/2期の単体コンベヤ事業に占める機能品及びソリューションサービスに関連する売上比率は15.9%にとどまり、向上余地がある。同社が直接アプローチできない先への拡販については、ノウハウを組み入れた営業アプリの活用やウェアラブルカメラなどを使った遠隔ソリューション営業も行ってゆく構えである。

◆ロボットSI事業
ロボットSI事業は、ALFISブランドで18年5月より本格的に展開を開始した新規事業である。ロボット導入に向けてニーズ調査、構想提案から運用までを支援している(図表4)。部品メーカーとして自社工場のロボット化・自動化で培ったノウハウをベースにエンドユーザーの多品種少量生産やリードタイム短縮などに対応している。

少品種大量生産の場合はロボットに置き換えやすく、ロボットを大量に使用するラインのシステムインテグレーションについてはエンドユーザー自体が内製化したり、平田機工(6258東証プライム)、ヒロテック(広島市佐伯区)、北斗(愛知県小牧市)、三洋機工(愛知県北名古屋市)といった大手ロボットSIerが対応している。

一方、同社がターゲットとしているのは、多品種少量生産で自動化があまり進んでこなかった組立や搬送などの分野で、金額も数千万円程度のものが中心となる。同社が事業を展開している分野は、案件規模が小さいことから、大手SIerは対応したがらない。また、中小のSIerは、特定顧客のカスタマイズ対応に追われ、標準化まで手掛けることが出来ない。同社は、既存事業者が対応できない領域で事業を展開している。

同社はロボットシステムの標準パッケージ製品をカスタマイズして提供している。例としては、多種多様な段ボールに対応可能なパレットへの荷積みを可能にするパレタイズシステム、段ボールや袋状の積み荷のパレットからの荷下ろしを可能にするデパレタイズシステム、整頓されていないバラ積みされた作業対象物をピッキングするバラ積みピッキングシステムなどが挙げられる。

同社は21年8月にパラレルリンクロボットシステムインテグレーション事業を譲受したことにより、事業の幅が拡大した。また、食品や医薬品産業向けに強みのあった先からの事業譲受であったことから、これらの産業向けへの展開も容易となった。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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