アクシスコンサルティング(9344) コンサルタント・利用企業双方への価値提供力に優れている

2023/04/04

ハイエンド領域の人材紹介とスキルシェアの複合サービスを提供
コンサルタント・利用企業双方への価値提供力に優れている

業種: サービス業
アナリスト: 大間知淳

◆ ハイエンド領域の人材紹介とスキルシェアの複合サービスを提供
アクシスコンサルティング(以下、同社)は、ハイエンド人材領域における人材紹介とスキルシェアの複合サービスを提供するヒューマンキャピタル事業を展開している。人材紹介として正社員採用サービスを、スキルシェアとしてフリーコンサルサービスとスポットコンサルサービスを提供している。22/6期におけるサービス別の売上高構成比は、人材紹介66.6%、スキルシェア33.4%であった。

①人材紹介(正社員採用サービス)
同社は、02年の創業以来、約20年に亘り、コンサルティングファームのコンサルタント(正社員)採用サービスを提供しており、特にコンサルティングファームにおけるマネージャー以上のポストの採用支援に強みを持っている。

連結子会社であるケンブリッジ・リサーチ研究所(16年買収)は、約60年に亘り、事業会社のエグゼクティブ層の採用を支援しており、現在では、経営層にとどまらず、デジタル・DX領域等のハイエンド人材やコンサルタント経験者にも対象を広げて、事業会社にサービスを提供している。ケンブリッジ・リサーチ研究所の22/6期業績は、売上高507,059千円、経常利益82,587千円であった。

22/6期における人材紹介売上高の凡その会社別構成比は、単体が8割、ケンブリッジ・リサーチ研究所が2割と推測される。

②スキルシェア
(1)フリーコンサルサービス「フリーコンサルBiz」
16年6月に同社は、独立してフリーランスとなったコンサルタント(以下、フリーコンサルタント)による、企業のニーズに合わせた課題解決プロジェクトを支援するサービス「フリーコンサルBiz」の提供を開始した。同社グループの人材データベースには、戦略やDX領域において実績のあるコンサルティングファーム出身者のフリーコンサルタントが登録されている。

フリーコンサルBizでは、役務提供を受ける企業(事業会社またはコンサルティングファーム)と同社との間で業務委託に関する基本契約と案件毎の個別契約を締結する一方、同社と登録フリーコンサルタントとの間で当該企業の案件に係る業務委託契約を締結して、フリーコンサルタントが当該企業の案件に参画する形式となっている。

利用企業側のメリットとしては、1)専門分野に精通したコンサルティングファーム経験者であるフリーコンサルタントを数カ月のプロジェクト単位で利用できること(コストの変動費化)、2)同社のフリーコンサルサービスは企業間取引であるため、個人との直接取引に比べて安定したサービスの利用が期待できること、3)プロジェクトの立ち上げ段階ではフリーコンサルタントを利用し、事業推進段階ではコンサルタントを正社員として採用する等、ワンストップで支援を受けられることが挙げられる。

フリーコンサルタント側のメリットとしては、1)同社のネットワークを通じて受注したプライム(直請け)案件に継続的に参画できる可能性があり、金銭的なメリットを得やすいこと、2)豊富な案件があるため、独自性や自由度の高い案件に携わる機会を得られやすいこと、3)フリーコンサルタントから正社員として事業会社へ就職する等、働き方に合わせたキャリアサポートを受けられることが挙げられる。

(2)スポットコンサルティングサービス「コンパスシェア」
同社は、22年7月、企業の経営者や担当者が、経営課題や事業課題等について短期間かつ手軽にコンサルタントに相談できるデジタルプラットフォーム「コンパスシェア」の提供を開始した。同社は、多様な課題を抱える企業と、コンサルティングファームに在籍している現役コンサルタントやコンサルタント経験者をマッチングし、利用企業が短時間(短期間)の各種サービスを利用できる(コンサルタントが副業を行う)仕組みを提供している。

具体的なサービスメニューとしては、ミーティング60分(税込料金38,500円)、研修60分(同55,000円)、資料作成(同10,000円~1,000,000円)等が挙げられる。

基本的なサービスの流れは以下の通りである(ミーティングの場合)。
1)サービスを利用したい企業の経営者や担当者(以下、利用者)は、同社が提供するデジタルプラットフォーム「コンパスシェア」に相談内容を登録する。
2) 「コンパスシェア」に登録しているコンサルタントは、企業が登録した相談内容を確認し、案件が経験、スキル、希望に合う場合はエントリーする。
3) コンサルタントからエントリーを受け取った利用者は、エントリーしたコンサルタントに対してオファーを出す。
4) コンサルタントがオファーを受諾するとマッチングが成立する。
5) マッチングが成立したら、利用者はコンサルタントとミーティング日程を調整し、ミーティングURLをコンサルタントに送信する。
6) 両者は設定された日時にミーティングを実施する。終了後、コンサルタントは作業完了報告を行う。
7) 利用者は同社に報酬を支払う。
8) 同社は、利用者から受取った報酬からシステム利用料(同社の売上総利益に相当)を控除した金額をコンサルタントに支払う。

◆ 複合サービスの提供がリカーリングビジネスに繋がっている
同社は、企業側(発注者)が直面する課題と人材側(候補者)が求めるキャリアニーズに応じて、正社員採用サービスやフリーコンサルサービスを提供している。これらのサービスは、一時点または短期間で提供されており、「プリンターの販売後に消耗品であるインクカードリッジを継続的に販売する」といった一般的な意味でのリカーリングモデルには当たらない。

しかしながら、同社は、個々のサービスが継続利用される傾向があることや、あるサービスの利用企業が他サービスも利用することがあること、正社員採用サービスを経て採用された者(候補者)がその後、企業側の発注者にもなり得ることから、自社の事業をリカーリングビジネスと位置付けている。

具体例としては、同社の正社員採用サービスを通じて事業会社に転職した人材(候補者)が、転職先で事業の責任者(発注者)となり、同社のフリーコンサルサービスや正社員採用サービスを利用する場合や、同社の正社員採用サービスを利用してコンサルティングファームや事業会社に転職した登録コンサルタントが、独立してフリーコンサルタントとなり、フリーコンサルサービスの業務委託先となる場合が挙げられる。

同社は、創業以来、約20年に亘り、コンサルティング業界を中心としたハイエンド人材の人材採用を支援しているほか、ケンブリッジ・リサーチ研究所も約60年に亘る事業会社のエグゼクティブ層の人材紹介サービスを提供している。結果、同社グループの人材データベースの登録者数は、22年12月末時点で約8万名に達している。

同社によれば、国内の大手中堅コンサルティングファームに在籍する約4万人のコンサルタントのうち、約1万人が同社の人材データベースに登録されている。同社グループの人材データベース登録者の残り約7万人は、一般事業会社のエグゼクティブ層(役員等)、コンサルティング系職、フリーコンサルタントによって構成されている。

長年のサービス提供によって蓄積された人材データベースの価値を高めるため、同社は、ハイエンド人材との中長期的な関係を構築するための仕組みと多様なキャリアパスの支援にも取り組んでいる。

具体的には、MA(マーケテティングオートメーション)ツールの活用により、定期的に登録者とコミュニケーションを図ると共に、MAツールのデータを分析し、登録者に対して適時に効果的なキャリアプランを提案している。登録者に寄り添い、転職支援から副業紹介、独立してフリーコンサルタントになった際の案件紹介に至るまで、登録者の多様なキャリアパスを支援している。当該登録者の成長に伴い、年収や案件の契約単価が上昇すると、同社グループの売上高や営業利益の増加にも繋がるため、同社と登録者には、「ウィンウィン」の関係が成立していると言えよう。登録者に対する中長期のキャリア支援の接点を増やすことは、同社グループがサービスを提供する機会の増加(リカーリングビジネスの強化)にも繋がっている。

◆ PwCコンサルティング等への依存度が高い
同社は、ハイエンド人材領域における人材紹介及びスキルシェアを行っており、結果としてコンサルティングファームとの取引が多くなっている。同社の主要顧客としては、大手総合系コンサルティングファームであるPwCコンサルティングや、アビームコンサルティング、デロイトトーマツコンサルティングが挙げられる。

中でも、売上高に占めるPwCコンサルティング向けの比率は、21/6期23.2%、22/6期29.1%、23/6期第2四半期累計期間(以下、上期)25.9%であり、PwCコンサルティングに対する依存度が高い状態にある(図表1)。

◆ 両サービス共に人数の増加により増収基調となっている
人材紹介の売上高は、入社決定数×平均受注単価(平均年収×平均手数料率)に分解できる。22/6期の売上高2,340,181千円は、入社決定数634人×平均受注単価3,691千円という構成であった(図表2)。一方、23/6期上期の人材紹介売上高1,385,820千円は、入社決定数329人×平均受注単価4,212千円となっており、平均受注単価が上昇したことが好調な業績に寄与している。

人材紹介会社は、一般的に成功報酬として紹介手数料を受領するが、その手数料率は年収の30~35%となっている場合が多いようである。平均手数料率を35%と仮定した場合でも、22/6期における入社決定者の平均年収は10,546千円と試算され、ハイエンド人材を中心としたサービス提供であることがうかがえる。

一方、スキルシェアについては、スポットコンサルのサービス開始が22年7月であるため、22/6期のスキルシェア売上高は、フリーコンサルのみによって占められている。フリーコンサルの売上高は、稼働人数(当該期間の月次の稼働人数の合計)×平均受注単価(月額)に分解できる。22/6期の売上高1,172,964千円は、稼働人数762人×平均受注単価(月額)1,539千円という構成であった(図表3)。受注単価は、フリーコンサルタントへの月額の報酬に同社が計上する売上総利益を加算したものであり、フリーコンサルタント1人当たりの月額売上高と位置付けられる。

平均受注単価は、18/6期の1,086千円から22/6期には1,539千円に上昇しており、年平均増加率は9.1%となっている(図表4)。

◆ 売上総利益率が高く、資産効率が良好なビジネスモデル
同社の22/6期の売上総利益率は63.8%と高い水準にある。売上原価に計上される主な費用としては業務委託費と支払手数料が挙げられる。業務委託費とは、スキルシェアにおいて、フリーコンサルタントに支払う費用である。支払手数料とは、人材紹介において、他社転職サイトの求職者情報を利用して獲得した転職希望者が同社グループの紹介により求人企業に就職した場合に当該転職サイトに支払う手数料である。

単体の売上原価明細書によると、単体の人材紹介売上高に対する支払手数料の比率は概ね7~9%にとどまる一方、スキルシェア売上高に対する業務委託費の比率は83~87%に達しており、両サービスの売上総利益率には大きな格差が存在している。

一方、販売費及び一般管理費(以下、販管費)については、給料及び手当、賞与、広告宣伝費、役員報酬、システム費用、採用費等の固定費が中心を占めており、販管費率(連結)は49.5%に達している。

売上総利益率が高いため、22/6期の営業利益率は14.3%と良好な水準にある。23年1月31日時点での平均年間給与は8,066千円と、同規模の新規上場企業と比べて高水準であるが、従業員1人当たり売上高の高さ等により、高利益率のビジネスモデルを確立していると言えよう。

22/6期末において、有利子負債依存度は15.7%に過ぎないが、未払金(総資産比12.8%)や未払費用(同9.5%)、未払法人税等(同8.8%)等が計上されているため、自己資本比率は41.0%と高い水準ではない。しかし、現金及び預金は総資産の70.6%を占めており、キャッシュリッチの状態にある。

22/6期において、営業利益率の高さに加え、総資産回転率も2.0回転と良好であるため、総資産経常利益率(27.5%)と自己資本利益率(46.4%)は共に極めて高い水準となっている。

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ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
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