サンクゼール(2937) 23年3月期は国内FC店舗、ホールセール、海外展開が成長を牽引する見込み
「サンクゼール」、「久世福商店」ブランドを展開する「食のSPA」
23 年 3 月期は国内 FC店舗、ホールセール、海外展開が成長を牽引する見込み
業種: 食料品
アナリスト: 藤野 敬太
◆ 「サンクゼール」、「久世福商店」ブランドを展開する「食のSPA」
サンクゼール(以下、同社)は、「サンクゼール」、「久世福商店」、「Kuze Fuku & Sons」という3つのブランドを擁し、全国各地の優れた食品を多様な販売チャネルを通じて販売する「食のSPA注」モデルをもとに事業を展開している。現代表取締役社長と取締役副社長の両親である代表取締役会長夫妻が長野県の斑尾高原で始めたペンションが創業事業であり、ペンションで提供していたジャム等を各地で販売するようになったことが、現在の事業展開につながっていった。
同社の事業は食品製造販売事業の単一セグメントだが、売上高は、店舗(直営、FC)、EC、ホールセール、グローバルの4つの販売チャネルに区分されている(図表1)。直営とFCを合わせた国内の店舗を通じた売上高が全体の約7割を占めているが、直近はホールセールを通じた売上高の割合も
上昇している。
◆ 3つのブランド
同社は、国内向けに2つ、海外向けに1つの合計3つのブランドを展開している。
国内向けには、ジャムやパスタソース等の洋食材を中心とした「サンクゼール」と、大正時代の商店をイメージした和食材中心の「久世福商店」を展開している。
「サンクゼール」は、「Country Comfort~田舎の豊かさ、心地よさ~」をコンセプトとした長野県発のメーカーズブランドで、同社の本社がある長野県上水内郡飯綱町につくり上げた「サンクゼールの丘」をイメージしたブランドである。非日常をテーマとしており、現在は、観光地等のアウトレットでの販売 を中心としている。
一方、「久世福商店」は、「ザ・ジャパニーズ・グルメストア」をコンセプトとした、日本各地のこだわりの強い食品を商品化していくブランドである。各地にあるこだわりのある食品の日常づかいを意識しているため、店舗出店先も国内各地の商業施設が中心となっている。
海外向けには、米国を中心とするグローバル展開を目的としてつくった、「Kuze Fuku & Sons」を展開している。「The Premium Japan Brand」をコンセプトに、米国等の食事シーンに日本の食習慣や食材を取り込んでもらうことを企図したブランドである。米国で拡大が続くオーガニック食品市場を重要なターゲットとしている。
◆ 4つの販売チャネル(1): 店舗(直営及びFC)
同社の売上高の7割超を占める販売チャネルが店舗である。22年9月末時点の151店舗の内訳は、形態別には直営52店、FC99店、ブランド別には「サンクゼール」15店、「久世福商店」136店である(図表2、図表3)。直近は、「久世福商店」のFC店舗を中心に出店している。なお、21/3期には、「サンクゼール」を中心に、新型コロナウイルス禍で業績が悪化した店舗を整理したため、21/3期末の直営店舗は前期末比19店舗減の50店舗となったが、このことも、「久世福商店」のFC店舗中心の出店という方針を明確なものにしている。
◆ 4つの販売チャネル(2): ホールセール
同社の売上高の2割弱を占める、売上構成比を上げてきている販売チャネルである。国内のスーパーマーケットを展開する小売企業を主要顧客として、同社の自社ブランド商品の販売、及びOEM供給を行っている。
◆ 4つの販売チャネル(3): EC
同社の売上高の約6%を占める販売チャネルである。自社ブランド商品を販売する自社ブランドECと、全国の生産者が出店するマーケットプレイス「旅する久世福e商店」を展開している。
自社ブランドECは、自社で構築したオンラインショップと、楽天市場の2カ所での販売となっている。
20年10月に開始した「旅する久世福e商店」は、全国各地の生産者やメーカーと消費者が直接商品の売買を行うことができるオンラインマーケットプレイスである。商品が購入されると、同社は販売手数料を得る。
◆ 4つの販売チャネル(4): グローバル
17年に米国オレゴン州に設立した子会社St. Cousair, Inc.経由の販売チャネルで、米国を中心とした小売企業が主要顧客である。
◆ 「食のSPA」を支える仕組み(1): 商品の企画・開発力
同社は、生産の多くを外部の仕入先メーカーに委託し、企画と販売を自社で行う、いわゆるSPAモデルを構築している。この「食のSPA」モデルを支えるためのいくかの仕組みがある。
「食のSPA」モデルの根幹を支えるのは、商品の企画・開発力である。同社ではブランドごとにチームを分け、商品の開発、改良を行っている。また、パッケージやラベルデザインは自社デザイナーが担当することで、企画・開発のスピードが上がっている。その結果、自社製造または同社が企画・開発した仕入商品による売上高は、全体の8割に達している。
◆ 「食のSPA」を支える仕組み(2):サプライヤーネットワーク
同社が取り扱う商品は、(1)日本各地の食品メーカー(仕入先)によって製造される商品、(2)同社の製造拠点で製造される商品に分けられる。
仕入先となるのは、国内各地で独自性の高い商品を製造する食品メーカーで、500社超にのぼる。食品メーカーとしては、地元の販売チャネルでしか販売できなかった製品を全国に流通させることができるようになるというメリットがある。
同社の製造拠点は、国内では長野県上水内郡の飯綱町と信濃町に、海外では米国オレゴン州にある。飯綱町の工場では、ジャムやパスタソース、ドレッシング等を、信濃町の工場ではジェラートを製造している。また、飯綱町の工場の近隣にある自社ワイナリーではワインやシードルの製造を行っている。米国オレゴン州の加工工場は17年4月に買収した工場で、オーガニック認証も取得している。
◆ 「食のSPA」を支える仕組み(3): システムの自社開発
在庫管理システムや自社POS連動型ERPシステム、ECサイト、会員制アプリや会員顧客データ分析システムといった、同社のSPAモデルを支えるシステムは、自社で開発している。これらの自社開発システムをシームレスに連携することで、SPAを支えるオペレーションを最適化している。
また、本社の間接人員に占めるエンジニアの割合が10%と、エンジニアが多いことも特徴である。