アップコン(5075) 施主は操業を止めることなく、短工期で施工可能

2022/12/29

独自のアップコン工法でコンクリート床の沈下、傾き、段差、空隙を修正
施主は操業を止めることなく、短工期で施工可能

業種:建設業
アナリスト: 髙木 伸行

◆ アップコン工法によるコンクリート床の沈下修正
アップコン(以下、同社)は、工場、倉庫、店舗、住宅、構築物などにおいて、地盤や建物が不揃いに沈んだり、滑り出したりする不同沈下を原因としたコンクリート床の沈下、段差、傾き、空隙を完全ノンフロンのウレタン樹脂と小型機械を使用した独自のコンクリート床スラブ沈下修正工法(以下、アップコン工法)によって修正する工事を主な事業としている。

アップコン工法は、不同沈下が生じたコンクリート床などに1メートル間隔で直径16ミリの穴を開け、ウレタン樹脂を注入する。ウレタン樹脂は短時間で発泡し、その圧力でコンクリート床を押し上げて段差や傾きを修正する(図表1)。同工法は1ミリ単位での修正を可能としている。

◆ アップコン工法の特徴
アップコン工法の特徴としては、工期が短い、費用が相対的に低い、顧客は操業を続けながらでも工事が可能といった点が挙げられる。沈下修正工法には、アップコン工法の他に、1)アンダーピニング工法、2)耐圧版工法、3)プッシュアップ工法、4)薬液注入工法がある。

アンダーピニング工法は地盤が安定していない場合や支持地盤が比較的深い場合に使われ、再沈下の可能性がほぼないという工法である。その分、工期が長く、費用も各工法に比べると非常に大きくなる。

耐圧版工法は鉄板と砕石、あるいはコンクリートブロックの耐圧版と建物などの間に設置した支持台により基礎ごと建物を水平修復する工法で、建物の沈下修正工事としては一般的である。

プッシュアップ工法は建物全体ではなく、一部の沈下修正や沈下量が少ない場合に使われる。建物部分だけをジャッキで調整しながら持ち上げる工法で、基礎は傾いたままである。

薬液注入工法は、地盤に凝固する性質を持つ薬液を注入し地盤を固めながら建物を水平に修復する工法である。軟弱地盤の最下層から地表に向かって脈状に地盤を固め、圧縮された土が固まり隆起して建物を持ち上げる。

工期についてはアップコン工法の場合で数日というのに対して、他の工法は1週間から2カ月程度かかる。費用はプッシュアップ工法にはやや劣後するが、他の工法に比べると半分程度で済む。

◆ 変動の大きい売上高
同社の売上高は、大型案件の有無の影響を大きく受ける。同社は1件50百万円を超える工事を大型案件としているが、19/1期は194百万円、21/1期には270百万円の工事があった。

民間事業と公共事業という施工対象別では22/1期では民間事業と公共事業の割合は3対1であったが、期ごとの変動は大きい(図表2)。また、公共事業の方が、民間事業に比べて採算が良いものが多い傾向にあることから、利益に与える影響も大きいと推察される。

民間事業では工場、倉庫、店舗などの沈下修正工事が多いが、これは、短工期に加えて、工場を操業しながら、或いは店舗を営業しながら、工事が可能というアップコン工法の利点が評価されていることが大きいと思われる。公共事業については道路、港湾・空港、学校などでの工事があり、道路の構成比が高いようである。

受注経路は、公共事業については元請け業者からの受注がすべてであることや、民間事業についても元請け業者からの受注があるため、約7割程度が元請け業者からとなる。そのため販売先としては建設会社が上位を占めている。東亜道路工業(1882 東証プライム)、クレハ建設(福島県いわき市)、日本道路(1884東証プライム)、ピーエス三菱(1871東証プライム)といった名前が開示資料には挙がっている。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。