アルファパーチェス(7115) 資本効率が高い、独自のビジネスモデル

2023/01/04

間接材物販事業と施設・設備管理事業を展開
資本効率が高い、独自のビジネスモデル

業種: 卸売業
アナリスト: 大間知 淳

◆ 間接材物販事業と施設・設備管理事業を展開
アルファパーチェス(以下、同社)は、間接材物販事業(「Maintenance Repair and Operation事業、以下、MRO事業)と設備・施設管理事業(Facility Management事業、以下、FM事業)を展開している。

MROは、本来、商品販売とサービス提供の双方を含む概念であるが、日本では設備や機械の修理用備品、文具、オフィス用備品等の間接材の物販のことをMROと呼ぶことが多いため、同社でもMRO商品の物販をMRO事業と称している。一方、設備・施設管理は、広義のMROに含まれるが、物販と役務の提供という違いがあるため、同社ではFM事業として区分管理している。

21/12期の売上高構成比は、MRO事業74.5%、FM事業25.3%、報告セグメントに含まれないその他(子会社ATCが担当するソフトウェア関連事業)0.3%であった。セグメント利益率では、MRO事業1.9%、FM事業2.8%であった(図表1)。

22年9月末の数値となるが、従業員は、MRO事業に107名、FM事業に103名、その他(ATC)に13名、コーポレート・プランニング本部と内部監査室に30名が配属されている。

◆ MRO事業では大企業の間接材の購買プロセスを支援している
MRO事業では、インターネットを活用して発注から納入までを効率化し、企業が日常的に購入する消耗品等の間接材(MRO商品)を販売している。MRO商品は、種類が極めて多い一方、一品当たりの購入量が少なく、単価も安い、典型的なロングテール(多品種・少量・少額)型の商品である。

同社は、主に上場企業を主体とした大企業の企業グループ全体を顧客とするべく、その購買に最適なITプラットフォームを提供し、①幅広い商品の選択肢から最適な商品を、②競争力のある単価で、③管理された顧客の社内決裁を経て購入が可能という強みを生かして事業を行っている。顧客本体の事業所、営業所にとどまらず、その子会社や関係会社までを含む顧客の企業グループ全体と、機械卸商社等のMRO商品提供者(サプライヤー)を同社のITシステムで結び、基本的にサプライヤーから商品を直送することで、MRO商品調達に関する業界全体のDX(同社顧客全体をベースとした最適共同購買)の実現を目指している。

①幅広い選択肢から最適な商品を購入
同社の顧客である大企業の企業グループには多数かつ多様な事務所や関係会社が存在し、それぞれの拠点や関係会社が購入を希望する商品は多岐にわたる。同社は、サプライヤー約1,500社から提供された、自社電子カタログに掲載する幅広い商品(約450万品目)を電子購買システム「APMRO」経由で販売している。

また、同社の電子カタログに掲載されていない商品の購入を希望する顧客に対しては、その要望を沿ったサプライヤーと商品を探し出し、複数のサプライヤーの相見積りの結果を提供する仕組みを構築している。

②競争力のある単価で購入可能同社が仕入、再販している多数のサプライヤーから供給可能な幅広い商品が、価格や納期の情報と共に顧客の電子購買システム上に表示されるため、サプライヤー間の自由で公正な競争が発生し、結果的に顧客は魅力的な単価で多様な商品を購入できるようになっている。

また、同社を一元窓口とし、幅広い大手企業への再販が行われることから、同社による商品あたりの購入額が増大し、顧客にとっては、自社グループだけによる購買では実現できない水準となるボリュームディスカウント後の価格での購入が可能となっている。

③管理された社内決裁(購買統制・購買管理)
MRO商品群は非常に幅広く、その全てに対して顧客が独自に適切な管理、統制プロセスを経て購入するには相当な手間と時間が必要となる。大企業グループにおいては、商品のカテゴリーや価格帯毎に異なる購買主管部門や購買規程が存在する一方、あらゆる拠点や関係会社で多数の購買が行われるため、全体を統括する購買管理部門は購買統制や購買管理に苦心している。

社員がBtoC(個人向け)のインターネット通販会社から必要な商品を個別に購入し、会社が立替払いするといった手法は認めがたいため、管理された社内決裁を経た適切な購買管理の重要性が強く認識されている。こうしたことから、コンプライアンスを重視する大企業グループの顧客にとって、購買に係る社内決裁プロセスをシステム的に担保できる同社の電子購買システムは重要な業務インフラとなっている模様である。

顧客に提供するMROサービスの価値としては、1)ワンストップサービスによるプロセスコストの削減、2)多様な選択肢の提供による購買コストの削減、3)継続的なPDCA管理を通じたガバナンス強化と見える化が挙げられる。

21/12期において、MRO事業の業績は、売上高28,263百万円(前期比15.0%増)、セグメント利益526百万円(同2.7%増)であった。また、セグメント利益に減価償却費を加算したEBITDAは960百万円、EBITDAマージンは3.4%となっている(図表2)。

MRO事業の商品種類別の売上高や売上高構成比は開示されていない。売上高の大部分はMRO商品の販売によるものであるが、顧客から若干のシステム手数料や、顧客システムとの連携接続等に伴い、個別に受け取るシステム改訂料が若干含まれている。22/12期第3四半期累計期間において254百万円と開示されている「一定の期間にわたり移転される財またはサービス」の売上高はこれらのシステム手数料等と推測される。

◆ FM事業ではCFMサービスとFMサービスを提供している
Facility Managementとは、一般的には土地、建物、構築物、設備等の事業用資産全てを、最小のコスト、かつ、最大の稼働率で運営、維持するための総合的な管理を指している。同社では、商業施設等の内外装、設備機器の新築、改装、修繕、清掃、運営支援に加え、工事用建材を各店舗の工事日程に合わせて提供するサービスに限定している。

同社は、商業施設等の開店や改装時に、仕様・数量・配送日程等をあらゆる面で店舗工事に最適化した建材提供を「材工分離」(資材支給と工事施工を別の業者が行う)形態で行う部分をCFM(Construction & Facility Management、以下CFMサービス)と呼んでいる。一方、商業施設等の維持管理や改装、修繕、清掃、各種法定点検対応等の予防保全を行う部分を(狭義の)FM(以下、FMサービス)と称して事業部を分けて運営している。

FMサービスは、同社の従業員が行う店舗レイアウト変更に係る各種受託作業と、自営工務店等の役務サプライヤーに外注する、継続的な修繕・清掃業務に大別される。同社は、22年9月末時点で、1,600拠点の修繕・保守・清掃の役務サプライヤー(パートナー)と連携した全国ネットワークを活用し、日常のメンテナンスのみならず、緊急対応を24時間365日体制で行っている。

CFMサービスとFMサービスは、商業施設や店舗の出店から退店までのライフサイクルに合わせて、適宜、必要な物財やサービスを提供するという点で共通の事業特性を持つほか、改装工事の際に建材支給と工事施工が分離されるか統合されるかは顧客側都合で決まるため、2つのサービス形態を合わせてFM事業として管理している。

同社のFM事業は、店舗数が多く、同型施設・設備が多数あり、建材や役務提供業務の定型化が容易なチェーンストア(コンビニエンスストア、ドラッグストア、ファーストフード店、ビジネスホテル等)向けを中心に展開している。大規模チェーンストアは、本部と全国の直営店、フランチャイズ店の組合せで運営されることが多く、同社はチェーン本部の管理業務の一部を受託する形で、全国の直営店とフランチャイズ店に対して均質なサービスを提供している。

FM事業では、顧客業界の動向や環境の変化が業績に影響を与えるが、多様な業態のチェーンストアが顧客となっているため、その影響の一部は相殺されて安定化する構造となっている。例えば、コロナ前の訪日観光客が増加した際には、ホテルチェーンやドラッグストアの改装需要が活況であったのに対し、新型コロナ感染症の蔓延により、それらの業界からの需要が低迷した際には、テイクアウトが好調だったファーストフード店や冷凍食品が伸びたコンビニエンスストアの改装需要の拡大が見られた。

顧客に提供するFMサービスの価値としては、1)建材・什器備品の購買管理の支援による維持管理費用等の削減、2)店舗に係る仕様の変更・更新の購買履歴管理のサポート、3)サービスの機会損失削減と店舗の長寿命化が挙げられる。

21/12期のFM事業の業績は、売上高9,586百万円(前期比22.8%増)、セグメント利益264百万円(同64.6%増)であった。EBITDAは335百万円、EBITDAマージンは3.5%となっている(図表3)。同事業ではMRO事業に比べてシステム化が進んでおらず、ソフトウェアの減価償却費が少ないため、セグメント利益率はMRO事業より高いが、EBITDAマージンはMRO事業並みとなっている。

◆ 売上高と営業利益を重視している
同社は、自社が提供するITシステムと仕組みを通じた、日本の産業界の効率化とDXへの貢献による収益獲得を目指しており、その目標達成状況を計る指標として、売上高と営業利益を挙げている。MRO事業においては、大手企業グループとの新規契約の獲得が重要と認識しているものの、契約から本格的な売上計上までには、ITシステム開発や相互接続に要するリードタイムが1~2年に及ぶケースが多いため、単年度の経営管理指標として新規契約数を用いないとしている。

◆ 資本効率が高い、独自のビジネスモデル
売上原価の内訳は開示されていない。同社によれば、MRO事業の売上原価の大部分は商品仕入高であるが、ITシステムに係るソフトウェアの減価償却費の一部(減価償却費の多くは販売費及び一般管理費に計上されている)も含まれている。一方、FM事業の売上原価は、CFMサービスに係る資材仕入、FMサービスに係る外注費や労務費によって構成されている。

21/12期の売上総利益率は10.3%と低い水準にあるが、両事業の売上総利益率に大差はない模様である。MRO事業については、通常仕入品とシステム連携をしている通信販売系同業者からの仕入品が存在しているが、システム連携先からの仕入品は、通常仕入品に比べて利益率が低いことが多いと同社は説明している。

一方、FM事業の中では、FMサービスの店舗レイアウト変更は、労務費以外のコスト負担が少ないため、売上総利益率のみならず、限界利益率も高いと推測される。FMサービスの店舗修繕・清掃等は、コストがほぼ外注費であり、中程度の売上総利益率となっている模様である。CFMサービスの店舗改装の建材支給は、コストが資材仕入であり、相対的に売上総利益率が低い構造となっているようである。結果として、FM事業の売上総利益率は、店舗レイアウト変更の売上高が拡大すると上昇し、店舗改装の建材支給の売上高構成比が高まると低下する傾向がある。

販売費及び一般管理費(以下、販管費)については、人件費(MRO事業、FM事業、管理部門)や、減価償却費(MRO事業、FM事業)、荷造運賃(MRO事業)、業務委託費(MRO事業、FM事業)等が中心となっているが、どの科目も売上高に対する比率は抑制されており、販管費率は8.0%に過ぎない。しかし、売上総利益率が低いため、営業利益率は2.3%と高くはない。なお、新規顧客の獲得タイミングがITシステムの更新時にほぼ限定されるため、広告宣伝費は開示対象となる規模には達していない。また、物流センターの賃借もないため、地代家賃の負担も低水準にとどまっている。

21/12期末において、有利子負債依存度は5.4%に過ぎないが、買掛金(仕入債務)が8,628百万円と総資産の65.1%を占めているため、自己資本比率は23.0%と低水準にとどまる。資産サイドを見ると、売上債権は7,496百万円、棚卸資産は594百万円であり、運転資本(売上債権+棚卸資産-仕入債務)は-536百万円となっている。売上債権の回収サイトに比べて仕入債務の支払サイトが長いことや棚卸資産が少ないことがその要因である。

また、21/12期末において、大型物流センターの所有・賃借がないことから有形固定資産も138百万円に過ぎない。一方、ソフトウェアとソフトウェア仮勘定によって構成される無形固定資産は、積極的なIT投資の実施により、有形固定資産の11.8倍となる1,633百万円であった。

固定資産合計2,177百万円に運転資本を加算した投下資本は1,641百万円であり、売上高で投下資本を除した投下資本回転率は23.1回と高水準を誇る。結果、低い営業利益率を高い投下資本回転率でカバーし、投下資本利益率(Return on Invested Capital、以下、ROIC)は34.5%と極めて高い水準であった。こうした資本効率の高さから、証券リサーチセンターでは同社 のビジネスモデルは独自性があると評価している。なお、ROICの分子となる税引後営業利益は、同社の法定実効税率34.59%を使って算出している。

◆ 特約店であるアスクルと日本マクドナルド関連への依存度が高い
同社は2,500社以上の顧客と取引しているが、売上高の97%が上場企業及び非公開大企業、そのグループ企業によるものである。顧客業種別では、製造業・建設業が51%、小売・サービス業が31%、特約店経由販売が18%となっている。主要顧客としては、親会社であるアスクル(2678 東証プライム)、日本マクドナルドホールディングス(2702 東証スタンダード)の連結子会社である日本マクドナルドとそのフランチャイズ企業、ローソン(2651 東証プライム)等が挙げられる。

21/12期においては、アスクル向けが売上高の17.5%を占めている。アスクルは同社のMRO事業の特約店であり、自社の顧客である中小企業に再販している(図表4)。

日本マクドナルド向けは売上高の10%を超えていないものの、そのフランチャイズ企業群向けを合計した販売高は売上高の1割を上回っている。

◆ 設立からアスクルグループ入りまでの経緯とアスクルとの関係
同社の前身会社であるアルファパーチェス(旧アルファパーチェス)は、00年11月に、米国の投資ファンドであるリップルウッドが日本国内で大企業や個人の投資家を募り、MROを中心とした商品とサービスを提供する商社として設立された。

リーマンショック後、リップルウッドが日本からの撤退を決定した際、旧アルファパーチェスは、10年11月に新設分割により新会社として同社(現アルファパーチェス)を設立し、その株式を旧アルファパーチェスの株主に割り当てた。リップルウッドと多くのその他株主は、割当株式をアスクルに売却し、アスクルは発行済株式総数の78.8%を保有する親会社となった。

22年11月21日時点では、アスクルは発行済株式総数の83.9%を保有していたが、公募増資や売出し(オーバーアロットメントによる売出しを含む)を実施した上場後も同社株式の62.0%(グリーンシューオプションが全て行使された場合は60.1%)を保有する親会社にとどまる見通しである。

同社は、アスクルグループとしての中核事業であるeコマース事業(22/5期の売上高構成比97.7%)に属しているが、同事業の中心はOA・PC用品やオフィス生活用品等である。アスクルの売上高に占める同社の割合は1割弱に過ぎない。

同社の取締役は5名で、うち社外取締役は2名である。社内取締役3名のうち、非常勤取締役である玉井継尋氏はアスクルの取締役CFOである。アスクルからの出向者の受け入れはない。

同社とアスクルとの間には、アスクルを経由したエンドユーザーへの販売のほか、アスクルを物品サプライヤーとした商品仕入取引(21/12期2,185百万円)も存在している。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。