Rebase(5138) 高利益率でリピート率の高いビジネスモデルを確立

2022/12/20

レンタルスペース予約プラットフォーム「インスタベース」を運営
高利益率でリピート率の高いビジネスモデルを確立

業種: 情報・通信業
アナリスト: 大間知 淳

◆ レンタルスペース予約プラットフォーム「インスタベース」を運営
Rebase(以下、同社)は、レンタルスペース予約プラットフォーム「インスタベース」を提供している。インスタベースは、空いている物件やスペースを貸したい個人・事業者(以下、スペース掲載者)が貸したい期間や時間帯だけスペースを提供し、スペースを使いたい個人・事業者(以下、スペース利用者)が使いたい期間や時間帯をパソコンやスマートフォンからインターネット経由で予約できるマッチングサービスである。

インスタベースの掲載スペース数は、22年9月末時点で24,500件を超えており、国内最大級のレンタルスペースのマッチングプラットフォームとなっている。同社は、自社開発した営業リストの自動作成ツールの活用やオンラインの獲得施策の実施、メールマーケティングツールの活用、ワークブース注1・宿泊施設・娯楽施設等を運営する企業や、分譲マンション等を手掛ける大手不動産会社等とのアライアンスにより、少人数で効率的に掲載スペースを獲得する体制や仕組みを構築している。掲載スペース数は、18/3期末の3.3千件から22/3期末には19.0千件へと年平均54%のペースで急拡大している(図表1)。

インスタベースの特徴として同社は以下の点を挙げている。

①スペース利用者への価値提供
(1)パソコン・スマートフォンで24時間いつでも検索・予約可能
同社は全国47都道府県でサービスを提供しているが、サービス利用者は、スマートフォン(ブラウザ、アプリ)やパソコンブラウザを通じて、いつでもエリアや用途、利用日時等から気軽に目的に合わせたスペースを検索することができる。気になるスペースについてはスペースページにて、内観写真や、設備・備品、口コミ等の詳細情報を確認可能であり、予約についてもWeb上で手軽に完結できるようになっている。

(2)多種多様な用途で利用可能
多種多様なスペース利用者の利用ニーズに応えられるよう、同社では創業以来、様々なタイプのスペース掲載に取り組んできている。会議室やテレワークスペース、古民家、撮影スタジオ、ダンススタジオ等がその例である。結果として、インスタベースの利用用途は、会議・商談・テレワーク、勉強会、スポーツ・フィットネス、レッスン講座等、多岐にわたっている(図表2)。

(3)安心して利用できるサービスや機能が充実
法人、個人問わずに安心してサービスを利用できるよう、同社は、様々な決済方法や、万が一に備えた補償サービス「インスタベース安心補償」を手数料なしで提供している。決済方法としては、クレジットカード決済、コンビニ決済、銀行振込、請求書等の後払いに対応している。インスタベース安心補償は、スペース利用者が備品や設備等を過失によって壊してしまった際、最大1億円が補償されるサービスである。

②スペース掲載者への価値提供
(1)充実した予約管理機能や運営サポート
同社は、スペース掲載者の利便性や安心感を高めるため、スペースページの作成管理機能や予約管理機能、ダブルブッキング防止のためのGoogleカレンダーとの予約情報自動連携機能、レンタルスペースの運営を効率化させるIoT機器とのシステム連携等を提供している。

特に、スマートロックや監視カメラ等のIoT機器とのシステム連携においては、22年4月に構造計画研究所(4748東証スタンダード)、5月にセーフィー(4375東証グロース)、6月にPhotosynth(4379東証グロース)と提携する等、矢継ぎ早に関係構築を進めている。

(2)安心のサポート体制
同社は、スペース掲載者からの問合せに対応するための専門部署を設置し、レンタルスペース運営をサポートしている。スペース利用者のキャンセルがあった場合も、予約時の決済料金から漏れなくキャンセル料を回収してスペース掲載者に支払うことで、不安なく取引ができるようにしている。また、「インスタベース安心補償」により、万が一に備えたサポート体制を整えている。

(3)シンプルな料金体系
同社は、初期費用や月額固定費用を求めておらず、スペースレンタルのコストはスペース掲載者が自ら決めるスペース利用料の一定割合に相当するサービス手数料のみであり、完全成果報酬型の料金体系を採用している。

③スペース掲載者の特徴
インスタベースのスペース掲載者は、以下の3タイプに大別される。

(1)遊休不動産の所有者(不動産オーナー)
賃貸テナントを募集しているものの、長期間借り手が付かない物件を所有する不動産オーナーが、借り手が見つかるまでの期間限定で、会議室等として貸し出し、遊休不動産の収益化を図っている。

(2)既存店舗・施設等の事業者
飲食店やサロン、宿泊施設等の事業者が、営業時間外や予約が入っていない時間帯をレンタルスペースとして貸し出し、遊休時間の収益化を図っている。既存の備品や設備をそのまま活用できる場合が多いことや、本業の営業時間や予約時間との調整が容易であることから、収益化しやすい特徴がある。

(3)レンタルスペース専業の事業者(運営代行会社を含む)
レンタルスペース専業の事業者が、自ら賃貸物件を契約したり、遊休不動産の所有者や既存店舗・施設等の事業者から委託を受けたりして、内装リフォームや備品等の初期投資を行い、事業を運営している。

◆ 掲載スペース数、実利用数、実利用総額をKPI としている
同社は、掲載スペース数に加え、スペース利用者が、スペースを利用した件数である「実利用数」と、スペースを利用したスペース利用料の総額(税抜)である「実利用総額」をKPI として開示している。実利用総額を実利用数で除した利用単価は短期的な変動が小さいため、プラットフォーム運営会社として、同社では、需要量を示す実利用数と供給量を示す掲載スペース数の増加を通じて、実利用総額の拡大を目指している。

実利用数は、掲載スペース数の増加に加えて、多種多様な利用用途による集客の強化とマッチング精度を高めるための同社の取組みが成果を上げたため、18/3 期の42 千件から22/3 期には686 千件へと毎年倍々ペースで急拡大しており、インスタベースの集客力の高さが見て取れる(図表3)。

実利用総額については、単価が低い掲載スペースの利用増や、新型コロナ感染症に伴う、1 利用当たりの人数や時間の減少により、利用単価の下落傾向が見られたものの、実利用数が拡大したため、18/3 期の277 百万円から22/3 期には2,783 百万円へと年平均78%増となった(図表4)。

実利用数と実利用総額の推移を見ると、20/3 期第4 四半期から21/3 期第2四半期に掛けては新型コロナ感染症の影響が表れているが、同社では、イベントやパーティー等の多人数で集まる用途に過度に依存せず、用途が分散していたことから落込みは比較的小さかった。また、テレワーク需要の拡大を想定して、ワークブースを運営する事業者との提携を強化する等、迅速な経営判断が、その後の実利用数や実利用総額の急回復に繋がったようである。

◆ 取引は小口で分散している
22/3 期の売上高890 百万円を実利用数686 千件で除して求めた1件当たり手数料は1,297 円に過ぎず、取引は小口で分散している。スペース掲載者には、ワークスペースとして客室を時間貸しする大手ホテルチェーンやワークブースや娯楽施設を運営する事業者も存在するが、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先(スペース掲載者)は存在していない。

◆ 多様なバックグラウンドを有する経営陣
同社は、14 年4 月にレンタルスペース予約・集客サービス事業の展開を目的に、現代表取締役CEO である佐藤海氏、現取締役CTO 髙畠裕二氏らによって設立された。佐藤氏は、法政大学在学中にシリコンバレーでの3 年間の留学生活を通じて、米国ベンチャー企業にインターンとして参加した経験を持ち、16 年4 月に代表取締役CEO に就任した。髙畠取締役は東京工業大学在学中にベンチャー企業を共同創業したほか、シリコンバレーでの企業勤務を経験している。

同社は、17 年5 月にベンチャーキャピタル等の5 投資家から資金を調達し、経営管理体制の強化に乗り出した。同じく5 月に取締役COO に就任した石田貴心アレキサンダー氏は、San Jose State University を卒業後、Uber Japan 等に勤務し、「Uber Eats」の企画、立上げに参画した。同年7 月に入社した大辻琢磨氏は、早稲田大学卒業後、ヤフー(現Z ホールディングス)等での勤務経験を持ち、21 年7 月に取締役に就任した。

◆ 高利益率でリピート率の高いビジネスモデルを確立している
同社売上高の99.1%(22/3 期)はインスタベースによって占められている。残りの0.9%は、インスタベースの付帯サービスとして、飲食を目的とするスペース利用者とデリバリー・ケータリング事業者をマッチングするサービス「インスタベースPlate」や、スペース掲載者とレンタススペース運営のための商品やサービスを提供する事業者をマッチングする「マーケットプレイス」等による売上高である。

インスタベースは、スペース利用者が、予約時にオンライン決済にてスペース利用料を決済代行会社経由で同社に前払いする。スペース利用者がスペースを利用した後、同社がスペース利用料から手数料を控除した金額をスペース掲載者に支払い、利用料から控除した手数料が同社の売上高となる。

スペース掲載者が負担する費用は、スペース利用料に対する手数料のみという完全成果報酬型であり、初期費用や月額固定料金は掛からない仕組みとなっている。同業他社には、スペース利用者に対してスペース利用料以外の手数料を請求する会社もあるが、同社は、スペース利用料から控除される手数料のみをスペース掲載者から受取っている。

同社が受領する手数料率は、上限が35%に設定されているが、掲載スペース数に応じて軽減されている。実利用総額を売上高で除した比率(平均手数料率)は、実質値下げの実施に伴い、18/3期の38.8%から19/3期には32.3%に低下したが、その後はほぼ横ばいで推移し、22/3期は32.0%となっている(各期の売上高にはインスタベース以外のサービスが若干含まれているため、正確な手数料率ではない)。

同社の売上高は概ね、実利用総額(実利用数×利用単価)×平均手数料率に分解できる。あくまで概算ではあるが、21/3期の売上高475,929千円は、実利用数354千件×利用単価4,237円×手数料率31.7%という構成であった。一方、22/3期の売上高890,244千円は、実利用数686千件×利用単価4,057円×32.0%という構成であった。利用単価については、新型コロナ感染症の影響等に伴う1利用当たりの人数や時間の減少により、下落した模様である。

一方、実利用数は、ワークブース提供業者や宿泊施設等の大手企業とのアライアンスに伴う掲載スペース数の増加に加え、多種多様な利用用途による集客の強化とマッチング精度の向上により、1掲載スペース数当たりの実利用数の増加により大幅に拡大し、増収の原動力となった。

同社のビジネスは、利用の都度、課金するフロー型モデルであるが、利用用途別のリピート率は高い。21年に同一用途で2回以上予約したスペース利用者による予約の割合はパーティ用途を除いて60%~85%となっており、継続的なスペース利用者の需要を獲得している点に特長がある(図表5)。

同社の22/3期の売上総利益率は97.9%であった。売上原価に計上される費用は、地代家賃の一部、減価償却費の一部、消耗品費等に過ぎず、労務費や外注費が計上されていないことが高い利益率の理由である。

一方、販売費及び一般管理費(以下、販管費)については、決済代行会社に支払う決済手数料や通信費等が含まれる支払手数料、新規顧客獲得を目的とした広告出稿による広告宣伝費、インスタベースの開発、保守等による業務委託費、人件費等が中心を占めており、販管費率は74.2%に達している。販管費のうち、決済手数料、広告宣伝費等が変動費に該当する。

売上総利益率が高いため、同社の営業利益率は23.8%と高い水準にある。9月30日時点での平均年間給与は6,910千円と、同業他社と比べて高水準であるが、従業員1人当たり売上高の高さ等により、高利益率のビジネスモデルを確立していると言えよう。

22/3期末において、同社の有利子負債依存度は12.2%に過ぎないが、未払金(総資産比12.8%)や預り金(同8.8%)、未払法人税等(同6.9%)等が計上されているため、自己資本比率は51.9%と高い水準ではない。しかし、現金及び預金は総資産の69.5%を占めており、キャッシュリッチの状態にある。なお、預り金は、決済代行会社を通じて同社に入金されたスペース利用料から同社が受領する手数料を控除した、スペース提供者への支払予定額であり、同社の事業が拡大すると増加する性格を持つ。

22/3期において、総資産回転率は1.3回転とさほど高くはないが、営業利益率の高さを背景に、総資産経常利益率(32.0%)と自己資本利益率(40.7%)は共に極めて高い水準となっている。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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