スマートドライブ(5137) 利用車両の増加、パートナー企業との提携事業及び海外事業拡大で成長目指す
車両のモビリティデータを活用し、顧客企業の業務効率化、新規事業創出を支援
利用車両の増加、パートナー企業との提携事業及び海外事業拡大で成長目指す
業種: 情報・通信業
アナリスト: 鎌田 良彦
◆ 車両のモビリティデータを活用し顧客の業務効率化、新事業創出を支援
スマートドライブ(以下、同社)グループは、同社とマレーシアのSmartDrive Sdn. Bhd.からなり、「移動の進化を後押しする」とのビジョンのもと、国内外の車両等の移動に関するモビリティデータを活用し、業務用車両のクラウド型車両管理システムの提供や、自動車メーカーやリース会社、保険会社等の新規事業・サービスの創出支援を行っている。
同社が利用するモビリティデータは、顧客企業の車両に設置したシガーソケット型デバイスや通信機能付ドライブレコーダー等の各種デバイスから取得するGPSデータ(現在位置、移動経路、移動速度等)や加速度センサーで得たドライバーの運転挙動等のデータである。移動体通信ネットワークを通じて同社のクラウド上のデータベースであるMobility Data Platformに蓄積される。
同社グループは、モビリティDX事業の単一セグメントであるが、業務用車両の利用企業を対象とした国内フリートオペレーター事業(以下、国内FO事業)、自動車メーカーやリース会社、保険会社等、車両を利用する企業に製品・サービスを提供する会社を対象とする国内アセットオーナー事業(以下、国内AO事業)、マレーシア子会社による海外モビリティDX事業の3つのサービス・事業を展開している。
22/9期の売上高構成比は、国内FO事業が67.4%、国内AO事業が32.5%、海外モビリティDX事業が0.1%であった(図表1)。海外モビリティDX事業の構成比が低いのは、SmartDrive Sdn. Bhd は20 年3 月に設立されたばかりということもあるが、コロナ禍の影響で事業展開が制約を受けてきた影響が大きい。
◆ 国内FO 事業
・国内FO 事業では、業務用車両を利用する企業に対して各種サービスをSaaS (注1) として提供しており、主力のサービスはクラウド型車両管理サービスのSmartDrive Fleet である。その他のサービスとしては、SmartDrive Cars、モバイルデータの分析サポート、SmartDrive Fleet Basic がある。
1) SmartDrive Fleet
SmartDrive Fleet では、顧客企業は業務用車両に設置した車載デバイスを通じて車両の移動データや位置情報、ドライバーの運転挙動、車両稼働状況等のデータを取得できる。これにより、顧客企業は、車両のリアルタイムの位置情報、訪問エリアやルート等を把握し業務を可視化することで、訪問効率や営業効率の最適化、生産性向上を図ることができる。また、共用車両の事前予約機能による車両管理業務の効率化、車両の使用頻度や稼働状況の把握による保有台数の最適化等を図ることができる。
ドライバーの運転挙動や運転性向の記録とスコアリング機能により、急発進、急停止、急ハンドル等の急操作の多いドライバーの把握と安全運転指導、交通事故未然予防等を推進できる。また、道路交通法施行規則に基づく運転日誌の自動作成機能や、アルコール検知器と連携した酒気帯び点検結果の自動記録等、法令・コンプライアンス対応が可能となる。
SmartDrive Fleet の月額利用料金は車載デバイスにより若干の違いがあるが、平均では車両1 台当たり2,500 円となっており、契約期間分を前払いで受け取っている。
2) SmartDrive Cars
ドライバーの運転挙動データに基づき、安全運転度合いに応じてコンビニエンスストア等で利用できるデジタルポイントをドライバーに付与できる、福利厚生と従業員の安全運転のモチベーション向上のためのサービスである。
3) Fleet Option Report、Mobility Data Insight(データ分析サポート)
同社に蓄積される各種モビリティデータを基に、SmartDrive Fleet の通常利用時よりも詳細なデータ分析や管理用ダッシュボード等を提供するオプションサービスである。
4) SmartDrive Fleet Basic
22 年7 月に開始したサービスで、車載デバイスが不要で、スマートフォンにダウンロードしたアプリから、アルコール検出器と連携してアルコールチェックの記録作成等ができるサービスである。月額利用料金は500 円とSmartDrive Fleet のエントリーサービスの位置づけとなっている。
国内FO 事業の売上は、イニシャル売上とリカーリング売上に分けられる(図表2)。イニシャル売上は、他社製車載デバイスの販売や初期設定費用からなり、リカーリング売上は、各種サービスの月額利用料、自社製車載デバイスの契約期間に対応した売上からなる(図表2)。
◆ 国内AO 事業
国内AO 事業では、自動車メーカーやリース会社、保険会社等、車両利用企業に対してサービスを提供する会社(アセットオーナー)に対して、同社のSmartDrive Fleet のOEM 提供や、同社のモビリティデータと顧客の持つデータを掛け合わせて新規サービスのPoC (注2) 確立や開発支援を行っている。
保険会社向けには、同社のデータベースに蓄積された車両の走行データから導きだされた当該車両が将来事故を起こす確率に基づいて保険料を柔軟に設定・算定できるテレマティクス保険(注3) 用リスクAI モデルを提供し、保険会社は当該モデルを活用したテレマティクス保険の開発と販売を行っている。
国内AO 事業の売上は、短期間のPoC やプロジェクト支援、それに伴うデバイス販売等のイニシャル売上と、長期間のPoC やプロジェクト支援の報酬、常駐コンサルティングの売上高等のリカーリング売上からなる(図表3)。パートナー企業がSmartDrive Fleet の販売代理店となっている場合のSmartDrive Fleet の売上高は国内FO 事業に含まれる。
同社は主要顧客向け売上高を開示している(図表4)。これらの企業は国内AO 事業の顧客となっている。損害保険ジャパン(東京都新宿区)向け売上高は、新型保険の開発に伴うものである。スズキ(7269 東証プライム)と住友三井オートサービス(東京都新宿区)向け売上高は、車両管理システム構築に伴うものである。住友三井オートサービスはSmartDrive Fleet の販売代理店でもあるため、その分の売上高は国内FO 事業として計上されている。出光興産(5019 東証プライム)向け売上高は、超小型EV による新たなモバイルサービス開発に関するものである。
◆ 海外モビリティDX 事業
海外モビリティDX 事業では、マレーシアにおいて、現地企業や日系企業向けにSmartDrive Aware を提供している。これはスマートフォンのGPS や加速度センサーを利用して通勤時の車両の運転挙動を点数化し、ポイントに応じてクーポンとの交換が可能になる、従業員向け福利厚生サービスである。売上は、導入時のサービスセッティング費用に相当するイニシャル売上と月額利用料のリカーリング売上からなる(図表5)。