BeeX<4270> クラウドアプリケーション開発、クラウド環境移行後の保守・運用サービスも実施
基幹システムの基盤環境をオンプレミスからクラウドへ移行するサービス等を提供
クラウドアプリケーション開発、クラウド環境移行後の保守・運用サービスも実施
業種: 情報・通信業
アナリスト: 髙木 伸行
◆ クラウドソリューション事業を展開
BeeX(以下、同社)は、企業の基幹システムの基盤環境をオンプレミス注1からクラウドへ移行するサービスやクラウド環境移行後の保守・運用サービスを行うクラウドソリューション事業を行っている。特にSAP注2システムのクラウド移行・環境構築、及び移行後の運用については、同社が特化しているサービスである。
同社はデジタルトランスフォーメーション、マルチクラウド注3というふたつの領域を中心にサービスを展開している。顧客企業に最適なパブリッククラウドの選定、基幹システムをパブリッククラウド上で最適な状態で利用するためのコンサルティング、クラウド環境の設計・構築、クラウド環境への移行、及びクラウド環境での運用業務の提供を行っている。SAPシステムのクラウド移行に強みを持つことから、顧客は大手企業が多い。
コスト削減効果が期待できる、データ共有が容易、社内に保守体制を持つ必要がない、安定した運用が可能、災害対策(BCP対策)に有効といったメリットがあることから、クラウドの利用が増加している。
同社の提供するサービスは「クラウドインテグレーション」、「MSP(マネージドサービスプロバイダ)、「クラウドライセンスリセール」に分類される(図表1)。クラウドインテグレーションは21/2期売上高の45.4%を占めているが、大規模な案件があったためで、やや高めの構成比となっている。
収益のタイプとしては、クラウドインテグレーションによる売上はフロー型、MSP及びクラウドライセンスリセールの売上はストック型となる。
上場時点でクラウド・インテグレーターであるテラスカイ(3915東証一部)が同社株式の69.6%を保有しており、同社はテラスカイの連結子会社となっている。
テラスカイ及びテラスカイの連結子会社(同社の兄弟会社)との間では事業上の取引がある。人的にも、テラスカイの取締役執行役員最高財務責任者が同社の取締役を兼任している。また、わずかな比率ではあるが同社が出資しているとともに取引関係にあるテラスカイの子会社であるスカイ365の取締役を同社の職員が兼任している。
テラスカイは当面の間は、同社を連結子会社とする株式保有比率を維持してゆく予定としている。また、同社は、親会社との役員兼務者は1名のみを継続する方針としている。
◆ クラウドインテグレーション
クラウドインテグレーションサービスとして、SAPシステムを中心とした基幹システムの基盤環境をオンプレミス環境からパブリッククラウドなどの最新のIaaS注4やPaaS注5基盤といったクラウド環境へ移行するため一連の業務を行っている。
同社のサービスは準備(調査・分析)、計画(設計)、実行(構築・移行)に区分できる。準備(調査・分析)はクラウドへの移行にあたって必要な項目や検討すべき項目、リスクの洗い出し、コストなども含めて最適な移行戦略の策定などのコンサルティングなどが該当する。計画(設計)は基幹クラウド基盤の設計及び移行前に実環境で検証するサービスなどとなり、実行(構築・移行)は顧客企業に最適な基幹クラウド基盤の構築やクラウド環境への移行を行うサービスである。
クラウドインテグレーションの提供領域別売上高は21/2期はSAPシステム移行69%、クラウド導入支援・基盤構築20%、アプリケーション開発10%であり、大型案件があったことからSAPシステム移行の比率が高かった(20/2期は同順で53%、31%、15%)。また、クラウドインテグレーションのプロジェクト件数は、人員増による受注能力の拡大もあり、増加傾向にある(図表2)。
◆ MSP(マネージドサービスプロバイダ)
MSPは顧客企業がクラウド環境に構築した仮想サーバーやネットワークの監視、運用保守を顧客企業の代わりに行なうサービスである。CPU、メモリ、ディスクなどの使用率やネットワークトラフィック量などの監視を行い、不足あるいは不足の予兆が見られた場合には改善策も提供している。
MSPの顧客数は、19年3月にテラスカイからAWS事業を承継したことから、19/2期末の9社から20/2期末には33社へと大幅に増加したが、それ以降も順調に顧客数を積み上げている(図表3)。
同社は兄弟会社であるスカイ365に24時間、365日対応の問い合わせ窓口機能を業務委託しているほか、インフラからアプリケーション層をカバーする性能監視、障害監視・復旧、バックアップなどの運用サービスの業務も一部委託している。
◆ クラウドライセンスリセール
同社はクラウドコンピューティングサービスを提供するAmazon Web Services、Microsoft、Googleからライセンスを仕入れ顧客企業に販売することで月額課金を代行している。単に再販するだけでなく、問い合わせ対応サービスに加えて、外貨建てで請求されるクラウド利用料に対して同社が円建ての請求を行っており、顧客企業に対して円での精算が可能となるといった利便性も提供している。
AWS、Azure、Google Cloudの各クラウドコンピューティングサービスのアカウント数の合計は、22/2期第3四半期末時点で234アカウントとなり、21/2期後半から増加ペースがやや加速している(図表4)。
クラウドライセンス販売の他には、ソフトウェアライセンス販売も行っている。情報漏洩対策など、顧客がクラウド環境を安全に利用するうえで有用なセキュリティ対策などのソフトウェア・サービスの仕入れ販売を行っている。
◆ 収益・費用構造
クラウドインテグレーションのプロジェクトは自社の営業あるいは大手システムインテグレーターとの協業により受注している。売上高は準備(調査・分析)、計画(設計)、実行(構築・移行)のフェーズごとに認識している。受注金額20百万円以上且つ開発期間が3カ月以上の大型案件は進行基準で、それ以外は検収基準で計上されており、売上の性格としてはフロー型となる。
MSP及びクラウドライセンスリセールはサービスの利用量や利用期間に応じて毎月課金するストック型の事業である。
同社売上高に占めるストック売上(MSPとクラウドライセンスリセールの売上高合計)の比率は20/2期60%、21/2期55%、22/2期第3四半期累計期間は68%で推移している。また、21/2期の販売経路としては同社直販が69%、テラスカイ経由が16%、協業パートナー経由が15%を占めている。
クラウドインテグレーションのプロジェクト件数、MSPの顧客数、クラウドライセンスリセールのアカウント数といった非財務指標を同社は重視している。
費用面では期末に棚卸資産や他勘定に振り替えられる分を控除する前の21/2期の売上原価の51.3%をAWS、Azure、Google Cloudやその他のソフトウェアやサービスのライセンス使用料が中心となる仕入高が占めている。その他では、21.7%が労務費、23.1%が外注費に相当する業務委託費が大きな比率を占めている。
販売費及び一般管理費(以下、販管費)は21/2期売上高の12.3%に相当しているが、販管費の負担は比較的小さい。