THECOO <4255> 創業事業はオンライン広告事業だが、成長ドライバーはプラットフォーム運営事業

2021/12/27

コミュニケーションを重視したファンコミュニティプラットフォームを運営
創業事業はオンライン広告事業だが、成長ドライバーはプラットフォーム運営事業

業種: 情報・通信業
アナリスト: 松尾 十作

◆ ファンコミュニティプラットフォームを運営
THECOO(以下、同社)は、コミュニケーションを重視したファンコミュニケーションプラットフォーム「Fanicon」の運営を行う「Fanicon事業」と「法人セールス事業」の2つのセグメントを開示している(図表1)。

1)Fanicon事業
17年12月に開始したFanicon事業においては、ファンとアイコンとのコミュニケーションを重視するプラットフォーム「Fanicon」を運営している。アイコンとは、ファンがいるアーティスト、インフルエンサー注1、タレントを総称している。Faniconでは、自分をアピールしたいアイコンの想いとアイコンとつながりたいファン側の想いをマッチングさせている。

プラットフォームであるFaniconにおいて、ファンはアイコンとつながるために会員になる必要がある。会員資格は有料で会費はアイコンが金額を設定できるが、月額500円前後が多いようである。9月末時点でのファン数は約14.4万人、アイコン数は2,115である(図表2)。

Faniconの機能は、①Fanicon限定の情報発信、②チャット機能、③スクラッチくじ、④EC機能、⑤チケッティング、⑥音楽配信等のイベントの6点である。

① Fanicon限定の情報発信
Fanicon限定の情報とは、「シーン投稿(タイムライン投稿)」と「ライブ配信」を指している。シーン投稿は、今や日常で利用されているLINEの投稿と同じ機能である。ライブ配信はカメラを使用した映像LIVE配信と音声のみのRADIO配信がある。いずれもアイコンによる発信をファンが見聞きする。

② チャット機能
アイコンとファンが1対1でチャットできる「1on1チャット」、アイコンと複数のファン、又はファン同士がチャットできる「グループチャット」の機能がある。

③ スクラッチくじ
プラットフォームFanicon上で購入できるファニポイントの利用でスクラッチくじを引くことができる。当たるとアイコン限定グッズが得られる。同社はスクラッチくじの企画提案、限定グッズの配送等をサポートしている。

④ EC機能
アイコンの関連グッズを販売している。同社の手数料は販売額の1.5%である。配送等をサポートしている。

⑤ チケッティング
アイコンが出演するライブ、舞台などのチケットが購入できる。同社の手数料は無い。外部パートナー(チケットぴあ、ローソンチケット等)のチケット購入ページにアクセスできるが、プラットフォームFanicon利用者のファンだけが閲覧できるサイトで購入出来る設定となっている。

⑥ 音楽配信等のイベント
アイコンは、同社が設置したスタジオ(機材含む)「BLACKBOX3」を利用したイベントを配信できる。イベント配信閲覧は、チケットを購入したファンに限定サイトを送付している。アイコン側で閲覧者を限定しない無料配信の設定もできる。

「BLACKBOX3」は21年4月に同社が開設した。オンラインライブ配信や収録に特化した地上2階、地下1階の施設で大型のLEDを設置し、かつ最新の音楽機器を常設している「BOXスタジオ」、アンティーク調の「BRICKスタジオ」の2つのスタジオがある。アイコンが機材を含め無料で利用できることから、向こう3カ月程度は予約が満杯である。

月額課金とファニポイント購入は、アプリ決済、クレジット決済の両方に対応している。またいずれの代金もアイコン別となっており、各アイコンとの契約に従い、アイコンに分配金を支払っている。

同社は経営指標として、アイコン数、ファン数の他に1ファン当たりの平均月額売上(ARPU)も重要な経営指標と捉えている(図表3)。

ARPUはサブスクリプション収入とサブスクリプション外収入で構成されている。サブスクリプション収入は、有料会員の月額課金を指している。サブスクリプション外収入の多くは、ファンが事前に購入したファニポイントを利用してスクラッチくじを引くときの収入である。スクラッチくじの賞品は、アイコンの所有物などで三等まで用意してある。

18/12期第1四半期以降のARPUを開示しているが、サブスクリプション収入は、月額課金は500円が多いものの500円を割る設定のアイコンも多かったため、19/12期は500円未満で推移した。人気のあるアイコン発掘のための様々なマーケティングと、同社の認知度上昇によるファン数の多いアイコンが加わるようになってきたことから、20/12期の第3四半期以降は500円以上で推移している。20/12期第2四半期以降は合計額で千円台を継続しているのは、ライブ配信サービスを20年3月から開始した効果で、サブスクリプション外収入が増加し始めたためである。

2)法人セールス事業
所謂広告代理店である。創業者で現社長の平良真人氏は、グーグル株式会社(現グーグル合同会社)で広告営業チームを統括し、同社設立時に当時のチームメンバーが多数参加したこともあり、14年1月に創業した当時の事業はオンライン広告事業であった。

15年1月からは、インフルエンサーを用いたマーケティングを実行支援するインフルエンサーセールス事業を開始した。インフルエンサーを用いたマーケティングの実行支援とは、クライアント企業の商品の強みや認知度を上昇させるために、強みを発揮する分野を考慮したインフルエンサーを活用した手法である。

一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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