浜木綿<7682> 当面は「浜木綿」の出店が続き、新規業態はセントラルキッチンの建設待ち
東海地方を中心に「浜木綿」等のブランドで中国料理専門店チェーンを展開
当面は「浜木綿」の出店が続き、新規業態はセントラルキッチンの建設待ち
業種: 小売業
アナリスト: 藤野 敬太
◆ 中華料理店「浜木綿」等を東海地方中心に展開する企業
浜木綿(以下、同社)は、東海地方を中心に「浜木綿(はまゆう)」を中心に、「四季亭」、「桃李蹊(とうりみち)」の3業態による中国料理専門店チェーンを展開している。
主力業態の「浜木綿」は、手頃な価格でおいしい中国料理を提供するためのオペレーションを確立し、本格中国料理店の多店舗展開に成功している。家族の集いを意識した「浜木綿」業態に対し、全室個室タイプの「四季亭」は特に「晴れの日」を重視した位置づけとなっている。一方、「桃李蹊」は少人数顧客向けの業態である。
同社は、飲食事業の単一セグメントだが、飲食事業とその他の事業に分類され、飲食事業は3つの業態に細分される(図表1)。売上高の大半が飲食事業だが、中でも主力の浜木綿業態が全体の売上高の8割以上を占める。
◆ 3業態の特徴
同社の3業態には想定する顧客層や利用目的等の違いがあるが(図表2)、共通するのは、郊外の住宅街にあるロードサイドの独立店として出店し、多様な使い方を想定した店舗ということである。
主力業態の「浜木綿」は、複数世代が同席する大人数の家族の集いのための利用を想定している。子どもから高齢者まで幅広い年齢層に対応するために、ロングセラーから季節ごとのものまで、常時90~100品、年間を通じて130~150品という豊富なメニューを取り揃えている。客単価は1,700円弱、商圏規模は15万人の業態である。
「四季亭」は、「浜木綿」よりもさらに「晴れの日」や家族イベントでの利用をイメージした業態である。そのため、全室を個室(一部、半個室)としている。メニュー数は「浜木綿」と同程度だが、個室利用ということもあり、客単価は2,200円台と「浜木綿」より高い。商圏規模は「浜木綿」と同じ15万人である。
「桃李蹊」は、夫婦や少人数での利用を意識した小型の業態であり、カフェのような空間のつくりのもと、2名席を充実させている。小型業態ということもあってメニュー数は「浜木綿」よりも少ないが、健康に配慮した内容であるなどの特徴もあり、客単価は1,900円弱と「浜木綿」よりやや高めである。小型業態であるため、商圏規模は5万人である。
中国料理で客単価が2,000円前後というのは、多様な需要が重なり合う価格帯である。「浜木綿」の場合、土曜日曜の昼間の時間帯がメインの利用時間帯となるが、土曜日曜の夜、平日の昼間、平日の夜における異なる顧客層の利用または需要にも対応できるようになっている。
店舗数は、19/7期末時点で、1都1府6県に41店舗となっている。内訳は、「浜木綿」30店舗(うち愛知県は18店舗)、「四季亭」3店舗(すべて愛知県)、「桃李蹊」8店舗(すべて愛知県)となっている。なお、過去にはFC店も存在したが、閉店もしくは直営店化により、現在は全店舗が直営店となっている。
◆ オペレーション
同社は、手頃な価格で専門的な料理を提供するための仕組みを磨き上げてきた。主な特徴としては、(1)セントラルキッチンの存在、(2)調理専任スタッフの分業制、(3)原価の2軸コントロールである。
同社は、植田工場(愛知県名古屋市)をセントラルキッチンとして稼働させている。現在、セントラルキッチンによる調理割合は仕入金額ベースで約32%となっており、各店舗のキッチンにおける業務量削減を進めている。
中国料理という専門料理では、炒めるための「鍋を振る」という作業が必要であるが、この部分は削減しづらい。同社では調理を分業制にすることで、他店に比べて約半分の調理師で料理を提供することを実現している。ただし、他店で中国料理の調理を経験した調理師にとって、調理の一部しか行わない分業制は馴染みにくいことが多いため、同社では、調理師をゼロから育成することを基本としている。
同社は、メニューで管理する部分と、原材料等の仕入で管理する部分とに分解する2軸コントロールの手法で原価管理を行っている。この原価管理を自社開発のシステムでデジタル管理することにより、過去20年間で約8%ポイントの原価率の改善を実現してきた。
中国料理店において、2,000円前後の客単価で独立店を中心に展開する場合、ショッピングセンター等に出店する場合と比べ、テナントの意向に左右されることはないが、多様な顧客の需要に対応することが求められる。そのため、メニューを多くする必要があり、オペレーションが難しいとされている。