シンバイオ製薬株式会社(4582 GROWTH)
トレアキシンの穴を埋める大型候補品BCVの開発進捗

2025/04/11

フォローアップ・レポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

BCV:免疫チェックポイント阻害抗体との併用効果を狙った提携を予定
2022年以降、シンバイオとシンガポール国立がんセンターとの共同研究(非臨床試験)で、次期主力品候補ブリンシドフォビル(BCV)の血液腫瘍(NK/T細胞リンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)など)に対する抗腫瘍効果が確認されてきた。さらに、2024年12月の米国血液学会総会にて、BCVと免疫チェックポイント阻害抗体(抗PD-1阻害剤)の併用効果が発表された。①BCVが腫瘍細胞のDNA複製を阻害し、免疫原性細胞死を惹起すること、②BCVにより、インターフェロンやサイトカインの分泌やPD-L1の発現が惹起され、免疫賦活化が発生すること、③実際の腫瘍成長抑制効果や免疫細胞の浸潤などを確認した。特許切れが迫る免疫チェックポイント阻害剤を有するメガファーマは新たな用途で免疫チェックポイント阻害剤のライフサイクルマネジメントを企図しており、有望な用途を持つ提携先を探している。シンバイオでは、2025年内(第4四半期)のグローバルパートナリング締結を予定している。

大型商品化が期待できるCMV感染症のPOC確立も近い
2025年は、造血幹細胞移植後のアデノウイルス(AdV)感染症、サイトメガロウイルス(CMV)感染症の2つのプログラムが、開発の後期に移行していく予定である。AdV感染症の方は、既にPhaseⅡでの有望なデータが公表されており、2025年第4四半期にはPhaseⅢを開始する予定である。CMV感染症を対象としたPhaseⅡは2025年9月までに終了し、POC確立の予定である。ここで注目したいのは、先行するマリバビルでは再発難治性のCMV感染症のみを対象とし、しかも約44%の患者ではマリバビルに対して不応または抵抗性があるのに対し、BCVは耐性発生の可能性が低く、未治療の患者も対象とした開発が行われている点である。未治療の患者数は1万5千人と推計され、1000億円を超える大型商品となる可能性に留意したい。

アルツハイマー型認知症への挑戦
近年、ウイルス感染が多発性硬化症(MS)やアルツハイマー病(AD)等の神経変性疾患の一因となっていることが明らかになってきている。ADでは、神経細胞に潜伏するヘルペスウイルス(HSV-1)が、水痘ウイルス(VZV)によって再活性化され、アミロイドβの凝集を促進し、凝集したアミロイドβがタウの異常リン酸化に繋がり、神経変性を引き起こすというメカニズムが考えられている。BCVによりHSV-1感染によるアミロイドβの凝集を抑制できれば、アミロイドβを標的にした薬剤の開発に新たなる光明をもたらすこととなろう。既に、シンバイオは米タフツ大学と共同で、3次元脳モデルを使用して、HSV-1によって誘導されるAD関連指標をBCVが抑制するというデータを得ており、特許も出願済みである。グローバルな開発の本格化は2030年以降となる見込みだが、脳神経変性疾患の患者数は移植後感染症や血液腫瘍などの患者数を大きく凌駕するだけに、今後の開発進展が楽しみである。

>>続きはこちら(3MB)

TIW/ANALYST NET
ANALYSTNET企業レポート   TIW/ANALYST NET
証券アナリストに限定せずに、コンサルタントや研究者など幅広い執筆者による企業分析・評価によってアナリストレポートへのアプローチと収入基盤の多様化を目指すプロジェクトです。
本レポートは、株式会社ティー・アイ・ダヴリュが「ANALYST NET」の名称で発行するレポートであり、外部の提携会社及びアナリストを主な執筆者として作成されたものです。
  • 「ANALYST NET」のブランド名で発行されるレポートにおいては、対象となる企業について従来とは違ったアプローチによる紹介や解説を目的としております。株式会社ティー・アイ・ダヴリュは原則、レポートに記載された内容に関してレビューならびに承認を行っておりません。
  • 株式会社ティー・アイ・ダヴリュは、本レポートを発行するための企画提案およびインフラストラクチャーの提供に関して、対象企業より直接的または間接的に対価を得ている場合があります。
  • 執筆者となる外部の提携会社及びアナリストは、本レポートを作成する以外にも、対象会社より直接的または間接的に対価を得ている場合があります。また、執筆者となる外部の提携会社及びアナリストは、対象会社の有価証券に対して何らかの取引を行っている可能性あるいは将来行う可能性があります。
  • 本レポートは、投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたものであり、有価証券取引及びその他の取引の勧誘を目的とするものではありません。有価証券およびその他の取引に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任で行ってください。
  • 本レポートの作成に当たり、執筆者は対象企業への取材等を通じて情報提供を受けておりますが、当レポートに記載された仮説や見解は当該企業によるものではなく、執筆者による分析・評価によるものです。
  • 本レポートは、執筆者が信頼できると判断した情報に基づき記載されたものですが、その正確性、完全性または適時性を保証するものではありません。本レポートに記載された見解や予測は、本レポート発行時における執筆者の判断であり、予告無しに変更されることがあります。
  • 本レポートに記載された情報もしくは分析に、投資家が依拠した結果として被る可能性のある直接的、間接的、付随的もしくは特別な損害に対して、株式会社ティー・アイ・ダヴリュならびに執筆者が何ら責任を負うものではありません。
  • 本レポートの著作権は、原則として株式会社ティー・アイ・ダヴリュに帰属します。本レポートにおいて提供される情報に関して、株式会社ティー・アイ・ダヴリュの承諾を得ずに、当該情報の複製、販売、表示、配布、公表、修正、頒布または営利目的での利用を行うことは法律で禁じられております。
  • 「ANALYST NET」は株式会社ティー・アイ・ダヴリュの登録商標です。

このページのトップへ