株式会社キャンバス(4575 Mothers)
免疫着火剤 CBP501 いよいよ Phase2 開始へ
フォローアップレポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯
間もなく 始まる Phase2は 最速で進展する見込み
2021年7月26日、キャンバスは、同社の主力開発品であるCBP501(免疫着火剤)について、まもなく米国Phase2が開始される見通しであることを公表した。Phase2は、既に2月に公表された通り、①FDAと認識を擦り合わせたうえで、必要十分な4つの投与群に絞り、②Stage1(各群9例)とStage2(各群14例)に分割する、というものである。Stage1で早期に良好な結果が得られた場合、Stage2を省略し、2022年後半からPhase3を開始し、2025年新薬申請、2026年上市というベストシナリオを描くこともできる。スタート段階の試験サイトとして14施設が開設され(9月)、その後早期に6施設加わり、合計20施設で試験が実施される予定である(Phase1bは3施設のみ)。また、対象患者は3次治療である。新型コロナ感染症の影響で試験が大幅に遅延する可能性は低い。また解析対象がPhase1bの時とは異なり、ITTベース(全登録患者)で行われるため、脱落者の補充で遅延する懸念がない。
CBP501 はすい臓がん 3次治療のトップランナーに
すい臓がんの5年生存率は5%程度であり、アンメット・メディカル・ニーズが強い分野である。特に、2次治療、3次治療では生存期間が短い一方で、有力な治療法が未だ確立されておらず、世界中で新薬開発が行われているが、既存の化学療法等に対し優位性を示すことが出来ず脱落するものが多い。このような環境下、3次治療の分野で有望な開発品と残っていたのは、キャンバスのCBP501と米国Tyme社のSM-88であった。
ところが、2021年6月、Tyme社は、すい臓がん3次治療での開発中断を公表し、1-2次治療や乳がんでの開発へシフトし始めている。これにより、キャンバスが3次治療のトップランナーに躍り出ることとなった。
Phase2の Stage1部分の資金は確保済み
CBP501のPhase2のうちStage1に必要な費用は9.2億円と見込まれている。2019年秋以降、第3回転換社債と第15回新株予約権で9.16億円を調達したが、Phase1bに関して、すい臓がん速報データの感触が良好であったこととMSS直腸大腸がんの組み入れ遅延懸念が発生したことで、試験を想定よりも早期に終了させることができた。このため支出額を大きく節約でき、3.18億円の余剰が生じている。そして、2020年11月以降、第16回新株予約権を通じ7.46億円調達しており、Phase2のStage1に要する費用と当面の運転資金(2022年1~2月頃まで)は、確保済みである。
ただし、その後の展開を考えると、何らかの資金調達の必要性が浮上する。Stage1でPhase1bと同等の有効性が示せずに、Stage2が必要となった場合、Stage2の費用は11~12億円必要となる。また、Stage1でPhase1bと同等の有効性を示すことができた場合には、Phase3に入ることとなり、さらに大きな費用が必要となる。
メガファーマの導入活動が、流行のモダリティや成功が見えている後期開発品に集中しがちな現況を鑑みると、CBP501の正当な価値を踏まえた導出は難しいかもしれない。株式市場の投資家こそが、CBP501の正しい価値を評価し、資金を投資することでリターンを得られることになるのかもしれない。
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