株式会社キャンバス(4575 Mothers)
免疫着火剤 CBP501 いよいよ Phase2 開始へ

2021/08/31

フォローアップレポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

間もなく 始まる Phase2は 最速で進展する見込み
 2021年7月26日、キャンバスは、同社の主力開発品であるCBP501(免疫着火剤)について、まもなく米国Phase2が開始される見通しであることを公表した。Phase2は、既に2月に公表された通り、①FDAと認識を擦り合わせたうえで、必要十分な4つの投与群に絞り、②Stage1(各群9例)とStage2(各群14例)に分割する、というものである。Stage1で早期に良好な結果が得られた場合、Stage2を省略し、2022年後半からPhase3を開始し、2025年新薬申請、2026年上市というベストシナリオを描くこともできる。スタート段階の試験サイトとして14施設が開設され(9月)、その後早期に6施設加わり、合計20施設で試験が実施される予定である(Phase1bは3施設のみ)。また、対象患者は3次治療である。新型コロナ感染症の影響で試験が大幅に遅延する可能性は低い。また解析対象がPhase1bの時とは異なり、ITTベース(全登録患者)で行われるため、脱落者の補充で遅延する懸念がない。

CBP501 はすい臓がん 3次治療のトップランナーに
すい臓がんの5年生存率は5%程度であり、アンメット・メディカル・ニーズが強い分野である。特に、2次治療、3次治療では生存期間が短い一方で、有力な治療法が未だ確立されておらず、世界中で新薬開発が行われているが、既存の化学療法等に対し優位性を示すことが出来ず脱落するものが多い。このような環境下、3次治療の分野で有望な開発品と残っていたのは、キャンバスのCBP501と米国Tyme社のSM-88であった。
ところが、2021年6月、Tyme社は、すい臓がん3次治療での開発中断を公表し、1-2次治療や乳がんでの開発へシフトし始めている。これにより、キャンバスが3次治療のトップランナーに躍り出ることとなった。

Phase2の Stage1部分の資金は確保済み
CBP501のPhase2のうちStage1に必要な費用は9.2億円と見込まれている。2019年秋以降、第3回転換社債と第15回新株予約権で9.16億円を調達したが、Phase1bに関して、すい臓がん速報データの感触が良好であったこととMSS直腸大腸がんの組み入れ遅延懸念が発生したことで、試験を想定よりも早期に終了させることができた。このため支出額を大きく節約でき、3.18億円の余剰が生じている。そして、2020年11月以降、第16回新株予約権を通じ7.46億円調達しており、Phase2のStage1に要する費用と当面の運転資金(2022年1~2月頃まで)は、確保済みである。
ただし、その後の展開を考えると、何らかの資金調達の必要性が浮上する。Stage1でPhase1bと同等の有効性が示せずに、Stage2が必要となった場合、Stage2の費用は11~12億円必要となる。また、Stage1でPhase1bと同等の有効性を示すことができた場合には、Phase3に入ることとなり、さらに大きな費用が必要となる。
メガファーマの導入活動が、流行のモダリティや成功が見えている後期開発品に集中しがちな現況を鑑みると、CBP501の正当な価値を踏まえた導出は難しいかもしれない。株式市場の投資家こそが、CBP501の正しい価値を評価し、資金を投資することでリターンを得られることになるのかもしれない。

>>続きはこちら(1MB)

TIW/ANALYST NET
ANALYSTNET企業レポート   TIW/ANALYST NET
証券アナリストに限定せずに、コンサルタントや研究者など幅広い執筆者による企業分析・評価によってアナリストレポートへのアプローチと収入基盤の多様化を目指すプロジェクトです。
本レポートは、株式会社ティー・アイ・ダヴリュが「ANALYST NET」の名称で発行するレポートであり、外部の提携会社及びアナリストを主な執筆者として作成されたものです。
  • 「ANALYST NET」のブランド名で発行されるレポートにおいては、対象となる企業について従来とは違ったアプローチによる紹介や解説を目的としております。株式会社ティー・アイ・ダヴリュは原則、レポートに記載された内容に関してレビューならびに承認を行っておりません。
  • 株式会社ティー・アイ・ダヴリュは、本レポートを発行するための企画提案およびインフラストラクチャーの提供に関して、対象企業より直接的または間接的に対価を得ている場合があります。
  • 執筆者となる外部の提携会社及びアナリストは、本レポートを作成する以外にも、対象会社より直接的または間接的に対価を得ている場合があります。また、執筆者となる外部の提携会社及びアナリストは、対象会社の有価証券に対して何らかの取引を行っている可能性あるいは将来行う可能性があります。
  • 本レポートは、投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたものであり、有価証券取引及びその他の取引の勧誘を目的とするものではありません。有価証券およびその他の取引に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任で行ってください。
  • 本レポートの作成に当たり、執筆者は対象企業への取材等を通じて情報提供を受けておりますが、当レポートに記載された仮説や見解は当該企業によるものではなく、執筆者による分析・評価によるものです。
  • 本レポートは、執筆者が信頼できると判断した情報に基づき記載されたものですが、その正確性、完全性または適時性を保証するものではありません。本レポートに記載された見解や予測は、本レポート発行時における執筆者の判断であり、予告無しに変更されることがあります。
  • 本レポートに記載された情報もしくは分析に、投資家が依拠した結果として被る可能性のある直接的、間接的、付随的もしくは特別な損害に対して、株式会社ティー・アイ・ダヴリュならびに執筆者が何ら責任を負うものではありません。
  • 本レポートの著作権は、原則として株式会社ティー・アイ・ダヴリュに帰属します。本レポートにおいて提供される情報に関して、株式会社ティー・アイ・ダヴリュの承諾を得ずに、当該情報の複製、販売、表示、配布、公表、修正、頒布または営利目的での利用を行うことは法律で禁じられております。
  • 「ANALYST NET」は株式会社ティー・アイ・ダヴリュの登録商標です。

このページのトップへ