8月3日妥当レンジ 22,900円~24,800円
1Q決算は投資家の期待値をクリアできたのか?
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<中国経済統計に引き続き注意>
■1日にトランプ大統領は2千億ドル分の中国製品を対象とした対中制裁の第3弾を巡り、追加する関税率を当初の10%から25%に引き上げるように米通商代表部(USTR)に指示した。第2弾の160億ドル分については8月中にも発動される見込みで有り、第3弾も9月にも発動される可能性がある。これにより、中国からの輸入の約半分が制裁の対象となる。
■中国政府はこれに対抗して、3日に米国からの輸入品約600億ドル分に関して最大で25%の追加関税をかける報復処置を発表した。最大25%を適用する品目には液化天然ガス(LNG)が含まれる。
■中国人民元は、景気減速、米国との金利差、政府の元安容認などから3~4月の高値から対米ドルで9%の下落となっている。今後の中国経済指標によってはさらに人民元安が進む可能性もあり、警戒意識を高める必要を感じている。今後の指標発表スケジュールは、8日:貿易統計、9日:消費者物価、10日:マネーサプライ、14日:鉱工業生産・小売売上高(いずれも7月分)となっている。
■トランプ政権はイランへの経済制裁を7日より再開する。これに先立つ2日にイランの革命防衛隊はペルシャ湾やホルムズ海峡での大規模な軍事演習を開始した。ペルシャ湾をはじめとした中東地域での緊張状態も高まりそうだ。
<「コンセンサスDI」は全期間で50%を上回ったが>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」は、前週比で今期・来期ベースがマイナスであった。NTTデータ(9613)、コムシスHD(1721)、日東電工(6988)、セイコーエプソン(6724)、京セラ(6971)などがマイナス寄与であった。
■「コンセンサスDI」(前週比プラス企業とマイナス企業の比率)は、全期間で50%を上回ったが、迫力には欠けた。
■1Q決算への事前の期待がどの程度高かったのかを測るのは難しいものの、全体的には期待に届いていない印象だ。円高への揺り戻しが限定的なことと堅調な米国経済並びに米国株に支えられているとの印象が強い。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
22,900円~24,800円 | (前回23,200円~25,100円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(8月3日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(8月3日)
今期予想EPS | 1379.70円 | (前週 1382.38円) |
来期予想EPS | 1583.49円 | (前週 1584.14円) |
再来期予想EPS | 1629.38円 | (前週 1627.97円) |
今期予想PER | 16.33倍 | (前週 16.43倍) |
来期予想PER | 14.23倍 | (前週 14.34倍) |
再来期予想PER | 13.82倍 | (前週 13.95倍) |
来期予想PBR | 1.16倍 | (前週 1.18倍) |
来期予想ROE | 8.16% | (前週 8.22%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
7.71% | (前週 7.75%) |
8月3日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
来期予想ベースのプラス企業比率は、 42.1%→43.0%→47.9%→56.0%→50.0%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、47.3%→50.9%→44.4%→58.8%→52.0%。
50%は確保しているが、市場の期待に対しては?
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |