米相互関税の「モラトリアム(猶予期間)」で市場は一服

2025/04/11

今週の株式市場も米トランプ政権の関税政策をめぐる動きによって、大きく揺さぶられる展開となっています。

先週公表された米相互関税が想定されていたものよりも厳しいものになったほか、中国からは「売られた喧嘩は買う」格好で、米国に対して報復措置が打ち出されたことなどを受け、週初の7日(月)の日経平均は過去3番目となる下げ幅(2,644円)を見せたかと思えば、翌8日(火)の取引では、直近の株価の下げ過ぎ感もあって、過去4番目の上昇幅(1,876円)となり、続く8日(水)の取引でも、米相互関税の「上乗せ分」が発動されたことで、1,298円を超える下落に転じるなど、連日で4ケタの株価変動が続いています。

そして、米トランプ政権が、発動したばかりの上乗せ分の関税に対して、90日間の一時停止を公表したことで、9日(水)の米国株市場が大きく反発、日経平均も10日(木)の取引で大きく上昇して取引がスタートしています。

このように、米相互関税の「90日間のモラトリアム(猶予期間)」が与えられたことによって、金融市場を覆っていた不安がひとまず後退し、ようやく株式市場も一息つくことができることが期待されますが、では、「株価がこのまま本格的に戻り基調を辿るか?」というと、注意しておくべきポイントがまだいくつか残されていると考えられます。

まず、最初のポイントは「中国の反応」です。今回、中国に対しては90日間の猶予が与えられず、むしろ、104%から125%へと税率が引き上げられています。これにより、「対抗措置による対立よりも、交渉による折衝を選んだ方が報われる」という米国からのメッセージが明確になったと言えます。中国側の姿勢が軟化すれば良いのですが、外交的には「面子をつぶされた」格好になるため、今後の米中関係の動向が注目されます。

次のポイントは、「猶予期間の90日でどこまで交渉が進むか?」です。今後の交渉や合意の進展度合いで相場に与える安心感が異なってくるため、時間との勝負の面があります。

続いてのポイントは、「少なからず追加関税は残っている」という点です。相互関税については、すべての国・地域に賦課される10%分が維持されているほか、分野別の関税についても、先日の自動車だけでなく、医薬品などにも近く発表される可能性があります。今後、景気や物価、企業業績などに関税の影響が出てくることが想定されるため、引き続き、経済指標や企業決算などを確認しながら見極めて行くことになります。

そして、最後のポイントが「短期間で状況が変わる不確実性」です。今回の米相互関税の90日間延期は株式市場にとってプラスに働いた格好ですが、先行きが読めない状況が長期化することで、企業が「動くに動けない」ことになり、企業活動や投資が滞ることで、結果的に経済が縮小してしまうことも考えられます。市場を揺さぶり続けている米トランプ政権の姿勢もそろそろ見直しが必要なタイミングに差し掛かっているのかもしれません。

したがって、目先の株式市場は積極的に上値をトライするのは難しく、日経平均は相場が急落する前の35,000円台後半あたりが、戻りの目安になりそうです。

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