3月31日妥当レンジ 18,700円~20,200円
米国経済指標の発表から反転上昇に期待するが

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<国内経済指標は概ね強い数値>

■前月末に発表された国内経済指標は、個人消費を除いて概ね強い内容であった(いずれも2月)。鉱工業生産指数は、自動車メーカーの新車生産の再開や設備投資の回復から前月比+2.0%と大きく伸びた。予測調査でも3月は小幅減産となるものの、4月は+8.3%の高い伸びが見込まれている。完全失業率は1月の3.0%から2ポイント低下して1994年6月以来の2.8%となった(有効求人倍率は1.43倍で横ばい)。日銀短観(3日発表)の業況判断DIにおいても景況感の改善が示された。しかしながら、家計調査(2人以上世帯の消費支出)は、前年同月比▲3.8%と12ヵ月連続で前年実績を下回った。全国消費者物価もエネルギー価格の上昇が寄与してコア総合は上昇したものの、コアコア(生鮮食料及びエネルギーを除く)は低下している。企業業績の好調が賃金に反映されて、個人消費に結びつくにはまだ時間がかかりそうである。
■今週は、3月の米国経済指標の発表が予定されている。3日発表のISM製造業景況指数は57.2と2月(57.7)から低下したものの市場予想(57.0)は上回った。ISM非製造業景況指数・ADP雇用統計(5日)、米雇用統計(7日)と発表が続くが、市場予想はいずれも2月の実績より下の水準である。多少は悪くても織込み済みとなる可能性が高い。

 

<コンセンサス予想(来期ベース)は、22週連続前週比プラス>
■3月31日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、今期・再来期ベースは前週比マイナスであったが、来期ベースは引き続きプラスであった。「225コンセンサスDI」(前週比プラスとなった銘柄数の比率)も増減した銘柄のサンプル数が少ないものの、来期・再来期ベースともに50%超の高水準を維持している。
■31日時点では、12ヵ月フォワードベースの予想EPSからの日経平均株価の妥当レンジは、19,63021,260とやや低下したものの、現株価水準を大きく上回る。ただし、3日に発生したロシア(サンクトペテルブルグ)の地下鉄テロから足もとはややリスクオフの展開が予想される。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

18,700円~20,200円 (前回19,000円~20,550円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(3月31日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(3月31日)

今期予想EPS 1057.46 (前週 1058.44円)
来期予想EPS 1164.80 (前週 1164.37円)
再来期予想EPS 1271.64 (前週 1271.80円)
今期予想PER 17.88 (前週 18.20倍)
来期予想PER 16.23 (前週 16.54倍)
再来期予想PER 14.87 (前週 15.15倍)
来期予想PBR 1.19 (前週 1.22倍)
来期予想ROE 7.34% 前週 7.37%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.92% (前週 6.91%)

*3月31 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出



図1
株価は妥当レンジ下限近辺に停滞が続く。妥当レンジはやや下方にシフトしたもの反転後の上昇ポテンシャルは依然として大きいと考える。

 


図2
来期予想ベースのプラス企業比率は、 64.9%→60.2%→59.5%→60.2%→63.8%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、55.5%→59.2%→57.8%→58.4%→54.5%。

サンプル数が少ないものの、引き続きプラストレンド(50%超)を維持!

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 

図312ヵ月フォワードのコンセンサス予想EPSの増加が続く一方で、株価の停滞から予想PER16.4倍まで低下。

 

図4日経平均が停滞する一方で、新興市場の株価上昇が続く、日経平均を日経ジャスダック平均で除した数値は過去5年で最高(最小)水準(注:数値は逆表示)。
1
部市場の本格上昇の前触れか?

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。