JPR 資本収益性/資本コスト分析レポート:平安レイサービス株式会社 (東証スタンダード 証券コード:2344)
価値創造力の回帰分析による株価アップサイドは2.1倍
データ解析レポート
ジェイ・フェニックス・リサーチ(株)
宮下修
冠婚葬祭と介護を軸に地域密着で成⾧を目指す
平安レイサービス株式会社(以下「平安レイ」)は、神奈川県平塚市に本社を置く東証スタンダード市場上場企業(コード番号2344)で、1969年の設立以来、冠婚葬祭を中心とした生活産業を展開している。代表取締役社⾧の山田朗弘氏のもと、「真心込めた行動でお客様のお役に立つ」を理念に、結婚式、葬儀、介護サービスを通じて顧客満足と地域貢献を目指している。事業は冠婚、葬祭、互助会、介護の4セグメントで構成され、特に葬祭事業は神奈川県と東京都に50拠点を展開し、小規模化や多様化するニーズに対応した施設拡充を進めている。冠婚事業では「コルティーレ茅ヶ崎」や「ロイヤルマナーフォートベルジュール」で婚礼を施行し、コロナ後の需要回復で成⾧中。互助会事業は子会社の株式会社へいあんが湘南エリアで運営し、葬儀利用の増加で安定した収益を上げている。介護事業では訪問介護やグループホームを展開するも、人件費や物価高が課題である。成⾧戦略として、2027年3月期までの3カ年計画を策定し、小規模対応の施設改修や新規出店(各期3店舗)、生産性向上のための内製化・自動化を推進。サステナビリティにも注力し、太陽光発電や電気自動車導入で脱炭素化を進め、原木椎茸栽培や食品保存技術でロス削減に貢献している。ガバナンス強化やジェンダー平等、育休制度の充実で人材育成も推進中である。人口動態の変化や葬儀の小規模化といったリスクに対し、新商品開発やエリア拡大で対応。2004年の上場以降、地域密着型で事業を拡大し、ISO9001認証を取得するなど品質管理にも力を入れている。2024年5月には「湘和会館竹松」を開業し、さらなる成⾧を見据える。平安レイサービスは、儀式文化を核に地域に根ざしたサービスで持続的成⾧を追求する企業である。
各種資本利益率は上場企業で平均的な水準
2025年3月期の会社計画ベースで計算すると、期首の有利子負債と株主資本を分母、税引き後営業利益を分子とする「シンプルROIC※」は、5.9%、余剰現預金など事業活動に利用されていない非事業資産を除いた「リーンROIC」は4.9%、ROEは、6.1%。平安レイの計算対象となった上場企業3,671社の中での位置づけは、シンプルROICでは上位44.0%、リーンROICは上位62.6%、ROEは上位61.93%おおむね平均的な水準である。なお、リーンROICでは、一般的には有利子負債以外の⾧期負債は投下資本にふくめる。平安レイは有利子負債以外の⾧期負債が120億円と非常に大きいため、リーンROICがシンプルROICよりも大きくなっている。有利子負債以外の⾧期負債の性質によっては個別事情を配慮し分母から取り除く定義も可能であるため、その場合はリーンROICが大幅な改善の可能性があるが、今回は取材をしていないためそのような分析はおこなっていないことは留意すべきである。
回帰分析から推計した株価水準は現行株価の約2.1倍
資本利益率は、「①企業が資本を利用して儲けたリターン」、資本コストは「②投資家から見て資本に対して儲けてほしいリターン」と定義できる。また、「①資本利益率/②資本コスト」は「価値創造力」と定義できる。「価値創造力」と資本の時価と簿価の比率、例えばPBRとはプラスの相関関係がある。JPRではデータ入手可能な上場企業 3,671社を対象に分析を行った。分析における回帰式の決定係数が0.5以上ならば高い説明力を示唆する。結果は、p.3~p.5に示した通り、0.83~0.92と0.5を上回っている。そのうえで、その回帰分析から株価推計を、平安レイについて行った。その結果、次ページで示すように、2025/3/28時点の株価830円の約2.1倍の1,778円と推計された。ROIC、WACCなどを利用した開示は東証も推奨しており、本レポートの視点をベースにした株価形成が急速に定着する可能性がある。平安レイの安定性や上場企業で平均並みの資本収益性が認知されれば、推計株価が1-2年で達成される可能性は十分ある。

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